お気に入り曲まとめ (2020.8~10) その2

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https://limista.jp/detail-project.php?p_no=1115

 めちゃ長くなったんで注意してください。なんでこんな書いてるんだろうな?

 

 

 

 

エイプリルフール / トゥモロウズ・チャイルド、タンジール、暗い日曜日

 from『エイプリルフール』

www.youtube.com

 

参考リンク:

www.tapthepop.net

 

 言わずと知れた?はっぴいえんどの前身バンドの唯一作(1969年発表。基本的な情報は上に貼ったリンク先を参照してください)。はっぴいえんどディスコグラフィーではゆでめん…1枚目が一番洋楽に近いサウンドだけど、エイプリルフールはそれよりもさらに洋楽っぽいサウンドで驚いた。洋楽の模倣から始めて、徐々にオリジナリティを獲得していったという流れが、今作を聴くことでより強く感じられる。

 音楽性はアート・前衛志向の入ったサイケデリック・ロックで、同時代の洋ロックと直接通じる内容。ブルース・ロックを基調にインプロビゼーションや実験的な音響などを取り入れたもので、混沌としているがやりたいことをやっている感じが伝わり好感が持てる。ゆでめんの方がまとまりがあって曲も良いのだけど、おもしろさで言うならば断然こちらに軍配が上がる…そんな感じ。

 エイプリルフールの音楽性には中心メンバーであった柳田博義(柳田ヒロ)の嗜好が強く反映されていたそうで、その柳田はVanilla FudgeThe Doorsから影響を受けていたらしく……といった流れでエイプリルフールでも鍵盤楽器が大きな存在感を放っている。The DoorsやらPink Floydとかがもし好きならば今作も楽しめるんじゃないかなー。

 

 個人的には今作における小坂忠(ボーカル)のパフォーマンスがかなりロック的な、激しいものだったことがおもしろかった。いや、ソロ初期作での超~穏やかな歌唱を先に聴いていたからなんですが。人間って変わるもんだなみたいな感慨がある。あと細野作曲の#5「タンジール」のAメロが『ほうろう』収録の「流星都市」のそれとよく似ているのが気になった。調べてみたら「流星都市」も細野の作だったので、もしかしたらこれらの曲は兄弟みたいな関係にあるのかもしれないですね…とてきとうなことを書いてみる。

 

news.yahoo.co.jp

 

ameblo.jp

 というか調べてみたら「流星都市はタンジールがベースになっている」というそのものズバリな情報が。にゃるほどね~~~どっちもいい曲なんで興味あったら聴き比べてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

王舟 & BIOMAN / Rimini、Ancona、Terni、Sansepolcro、Aeroporto di Bologna
 from『Villa Tereze』

www.youtube.com

 

www.ele-king.net

 このアルバムね、めちゃくちゃいいです。作品の背景情報がリンク先でめちゃ良くまとまっているので、もうまるごと引用します。

 今年に入って起ち上げられた〈felicity〉の「兄弟」に当たる新レーベル〈NEWHERE MUSIC〉は、「エレクトロニック・ライト・ミュージック」すなわち「電子的な軽音楽」を標榜している。その栄えある第1弾リリース作品に選ばれたのが、これまで〈felicity〉から作品を発表してきたシンガーソングライターの王舟(NRQの新作にも参加)と、neco眠るや千紗子と純太での活動でも知られるBIOMANによる共作『Villa Tereze』である。エンジニアを務めるマッティア・コレッティは、2006年にイタリアのファエンツァでライヴ録音されたダモ鈴木ネットワークのアルバム『Tutti i colori del silenzio』にも参加したことのあるギタリストで、山本精一古川日出男オシリペンペンズらとの共演歴もある。その彼がEP「6 SONGS」でコラボした王舟と来日ツアーをおこなった際に、大阪でBIOMANと出会ったことからこのアルバムの制作がはじまったのだそうだ。王舟とBIOMANのふたりは昨年末、コレッティを訪ねてイタリア中部の小さな町まで足を運び、そこで本作が録音されることとなった。

 アコースティックな音とエレクトリックな音が程よく入り混じったイージーリスニングアンビエント。実験的なところは少なく、メロディーもはっきりしていて聴きやすい。優し気な音色が疲れた身体に沁み渡ります…。

 特徴的なのが豊富に取り込まれた環境音・具体音の存在で、もう1曲目の「Pergola」からめちゃくちゃに入り込んでいるんですが、これがまた作品への没入感・臨場感をすごく高めているんですね。だって目を閉じると浮かんできますもん、憧れのネオ・ヴェネツィアが…(?)

 おもしろいのが#5「Terni」。非常にキャッチーなメロディーを持つ曲で、一度聴くとずっと頭の中でメロディーが流れ続けてしまうほどなんですけど、これがスーパーのBGM(モールソフト)に似ている……というかもっと言えばエロゲのBGMっぽいんですよね()。いや自分こういう曲大好物なんですよ。他の収録曲とはすこし毛色が違うんですけど、いい感じにアルバムの流れを切り替えてくれていると思う。この曲が中盤にあるおかげで、以降の曲も新鮮な気持ちで、ダレずに聴くことができている……というところがあると思います。

 

 いや、めちゃいいです。アンビエントニューエイジイージーリスニングのファンには堂々とおすすめできます。ワールドスタンダードとか、久石譲とか好きな人にもすすめられるかも。これ流しながら散歩でもしたら気持ちいいだろうな。部屋で聴くときにはぜひ環境音を意識しながら聴いてみてください。どこか穏やかな場所にトリップできます。

 今作のリリース元である〈NEWHERE MUSIC〉からの次作はJim O'Rourke『sleep like it’s winter』です。ふぁぼってはあるけど聴けてはいないので聴こうかな。『Villa Tereze』が良かったので…。

 最後に一応、「pergola italy」で画像検索した結果のリンクを貼っておきます。旅行してみたいですね、こんなところに。ストリートビューでエア旅行するか…

www.google.com

 

 

 

 

 

 

 

Mac Miller / Circles、Blue World、Good News、Hand Me Downs、That's on Me、Hands

 from『Circles』

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 もうこの1曲目から良さが伝わるはず。ぜひベースが聴こえる環境で。

 

 TLのみんなが言及してたから聴いたらよかったやつ。とりあえず初めて聴いたときの感想ツイをぺたぺた。

 

 作品がリリースされるまでの経緯については以下の連ツイが詳しいです。

 

 天野龍太郎による必要十分なレビューもペタリ。

mikiki.tokyo.jp

 上記記事から音楽性について述べられている部分を引用。

ブライオンが作り上げる音は、インディー・ロックやアメリカーナ、オルタナティヴ・カントリーの温かく生々しい質感を基調にしながら、そこにエレクトロニックなサウンドを馴染ませたもの、と言っていいだろう。その手腕は、本作でも確実に発揮されている。

ブライオン曰く〈マックと過ごした時間や交わした会話〉を基にした『Circles』は、一聴して穏やかで、とてもパーソナルなムードだ。ブライオンらしい、ドラムやギターの生音とアナログな電子音が溶け合った滑らかな質感が心地よく、呟くようなマックの歌やラップのスタイルと見事に合致し、彼の歌に寄り添いながらもそれを引き立たせている(ピアノの音が印象的な“Everybody”なんて、まるで後期ビートルズの曲のようだ)。

 うおー、もうこれ以上書くことがない。アーティストの美意識が隅々まで行き渡った、洗練された美しい作品です。高級感があるというか、素材の良さが引き出されているというか…… 非常に親密なムードの穏やかな音楽なので、夜中の落ち着いた時間などに流すと良さげ。

 自分はマック・ミラーについてはぜんぜん意識していなかった…ジャケットを見た覚えがあるなーとかそのくらいで、一昨年に亡くなったことすら知らなかったという有様でした。今作に触れた後だとあああ惜しいな…とか思うんですけど、まあとりあえずこの作品を聴けて良かったなと。

 

 上でもチラッと触れましたけど、このシンプルですらすらと流れていく音楽を怠惰でつまらないと取るか・洗練の極致と取るかで評価が変わる気がします。ピッチの7.4点という評価はちゃんと客観的に見てるなーという感じがします。

 

 そして『Circles』の製作に多大な貢献をしたJon Brionについて。

 こちらも個人的には今までノーマークで、『Circles』に関わったと聞いて少し調べてみたらあれ、おれ知らないところでこの人の仕事にけっこう触れてるな…となったので、今後はその名前を意識していきたいと思います。Frank Ocean「Pink+White」のストリングスアレンジについては過去にこの記事でも触れたくらい好きだったので、上のツイートを見たときはマジ!?ってなりました(Wikiの曲ページのPersonnelの欄でもちゃんと名前が挙がっていた)。

 偶然にもAimee Mannの『Bachelor No. 2~』(少し前にピッチのSunday Reviewsで取り上げられた)とJon Brionの唯一のソロ作(なんかツイで絶賛されてた)をJon Brionについてまったく知らない状態でつい最近入手していたので、とりあえずここらへんから触れていこうかなと……あとFiona Appleの過去作も。調べてみるとAimee Mannの1stがJon Brion初のプロデュースワークらしいです。

 あと映画音楽もいろいろ手掛けているそうなので…映画観てサントラ買ったりしようと思う。まずはレディ・バードかな、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の監督の作品らしいので…

 

参考リンク:知らなかったけどずっと前からめちゃ売れてたアーティストだったらしい。マック・ミラー

mikiki.tokyo.jp

 

 

 

 

 

 

 

シバ / 夜汽車にのって、交差点

中川五郎 / ミスター・ボージャングル

友部正人 / 追伸、街は裸ですわり込んでいる

ごまのはえ / とめ子ちゃん

 from『春一番ライヴ 72』

www.youtube.com

 車での移動中に何気なく流したやつ。良かったパフォーマンスだけメモ。

 シバ「夜汽車にのって」「交差点」名前だけは聞いたことある人。その前の田中研二「インスタント・コーヒー・ラグ」があまりに素朴で(そのへんのおっちゃんが歌ってるみたい)、それと比べたらシバの歌・プレイはすごく上手く聴こえた…というのはあるかもしれない。ギター一本の弾き語り。普通にフォーク系ビッグネームに並ぶクオリティ。機会があればアルバム聴きたい。

 

 中川五郎「ミスター・ボージャングル」ずっと脇でポロンポロン弾いてるエレキギターが良い。曲も良いしバンドアンサンブルも良いし優し気なボーカルも良い。全部良い。

 

 友部正人「追伸」「街は裸ですわり込んでいる」この人もアルバムの音源持ってるけどいまだに聴けていない。こんばんは~こんばんは、とこちらに呼び掛けるフレーズが印象的。ひょうきんな感じのMCで場を和ませたりしてる。ぶっちゃけこのコンピに参加してる人みんなフォークやってて音楽的にはあまり書くことがないです。

 

www.youtube.com

 たぶんスタジオ版。ライブ版はこれの2.3倍くらい良いです。ギターの騒ぎっぷりがぜんぜん違うじゃん泣

 ごまのはえ「とめ子ちゃん」……なのだけど、唯一このグループだけギターをブイブイいわせるサイケデリック・ロックやっててびっくり。しかも曲も演奏もめちゃくちゃ良いという…。なんだこのバンド!?と思って調べてみると伊藤銀次のバンドだということがわかる。ほえーこんな、かっこいいロックをやっていたのか…。この人も名前だけ知ってて作品聴けてないので聴いていこうと思う。

 

 どうでもいいけどいろいろ間違った表記が多いコンピレーションです。小坂忠とホージョハーフはフォージョーハーフだし、「とめ子ちゃん」は「留子ちゃんたら」が正式な名称らしい。けっこう有名なコンピだと思うので、たぶんあえてそのまま残してるんだと思うけど…。

 アルバム単位では特に言うことないです。一般的なコンピと同様に、ここからそれぞれのアーティストへと手を伸ばしていけばいいと思う。ごまのはえの曲だけはマジで名演なので、これだけのために入手するのはあり。大瀧詠一に「彼らがデビューしていたらナイアガラ・レーベル第一号アーティストであった」と言わしめる才能がまざまざと刻印されている。……いやこれは今調べた情報なんですけどね。

 

参考リンク:

jocr.jp

 

 

 

 

 

 

 

Sufjan Stevens / Holland、Romulus、Sleeping Bear, Sault Saint Marie、Oh God, Where Are You Now? (In Pickeral Lake? Pigeon? Marquette? Mackinaw?)、Vito's Ordination Song

 from『Greetings From Michigan: The Great Lakes State』

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 相変わらず曲名が長い。しかしきれいな曲だ…。

 「今まで何回か聴いていたんだけど長いから最後まで聴けていなかったアルバム」シリーズそのn番目。やっぱ最後まで聴かないとそのアルバムの真価はわからん…ということで中盤以降からのチョイス。このアルバムは終盤にすごく綺麗で敬虔な瞬間が詰まっていて、そこを聴かなければこのアルバムを聴いたとは……。

 

 具体的には#13「Oh God, Where Are You Now? (In Pickeral Lake? Pigeon? Marquette? Mackinaw?)」~#15「Vito's Ordination Song」の流れがとても美しいので皆さんぜひ聴いてください。この3曲だけで20分くらいありますが…。というかもはや歌の形態を取った「祈り」だと思う。歌詞は調べてないけど曲名がもうそういう感じじゃないですか。「Ordination」とはキリスト教における叙階(式)、聖職者としての叙任(式)という意味だそうです。

 いや本当、スフィアンの作品についてはアメリカやキリスト教の文化に馴染んでないと味わいつくせない感じがすごい。当事者が彼のアルバム・曲を聴いたら今の自分とはまったく違う感動が得られるんだろう。

 

 音楽的には『イリノイ』のホーリーで優しいバージョンで、アルバムのまとまりもスケールの大きさもほぼ同じです。つまり傑作ということ…。ドラマチックな大曲もいいけど儚げな雰囲気の小曲がそれ以上に良いというか好きです。とはいえ実際巨大なアルバムではあるので、流し聞きでいいので一度最後まで聴いてみるといいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

Blake Mills / Never Forever、May Later、Summer All Over、My Dear One、Mirror Box

 from『Mutable Set』

www.youtube.com

 今、文章書く前にちょっと調べてるんですけど、この人もJon Brionと同じくらいの重要人物っぽくて、調べてると今までのもろもろが繋がってうお……となります。とりあえずは英語版の記事をそのまま訳したであろう日本版Wikiを参照して彼のプロデューサーとしての仕事に瞠目。Sky FerreiraやらFiona Appleやらの大物の名前が並ぶ。アルバム単位だと近年ではAlabama Shakes『Sound & Color』やPerfume Genius『No Shape』、『Set My Heart On Fire Immediately』などが有名だろうか。というかミュージシャンとしてならさらに多くのアーティストと関わっている。

 

 とりあえず『Mutable Set』について……なんだけど、岡田拓郎がTURNに寄せた文章が詳しいのでそちらを参照してほしい(手抜き)。

 

turntokyo.com

 少し引用。

これまでに制作されたソロ作での立体的な音響アプローチはブレイク・ミルズの大発明であるものの、楽曲構造はあくまでクラシック・ロックの語法を基盤にしていた印象が強かったが、音楽からメロディやビートを取り除き響きを抽出したアンビエントというフォーマットでの『Look』を経て、自身の音楽スタイルを完全に一新したブレイク・ミルズが、改めてポップスに向き合ったのが、この最新作『Mutable Set』と言えるのではないだろうか。

『Mutable Set』では既存のギター・イディオムを回避した非ギター的な音色使いが多くの楽曲中に散りばめられている。

 自分的に一言で言うなら音響アンビエント/フォークといった感じ。1曲目「Never Forever」のゆっくりと立ち昇るイントロからすでに音響に対する並々ならぬこだわりが聴いて取れる(オルークの『Eureka』を思い出すなど)。楽曲はほんのりとしたポップさのある慎ましやかなものなのだけど、サウンドが常に興味深い"鳴り"をしているので耳が引き寄せられる(そして曲が激しく動かないからこそ音の細かな動きに集中できる、という面もある)。

 例えばサティのピアノ曲のような、少し浮世離れした雰囲気がありますが、基本的には穏やかで優しい音楽で、静かな早朝なんかのシーンによく映えそうです。作品の完成度の面からだけでなく、音響面……録音技術の面から見ても今作は傑作だと思います。

 

 唐突ですが参考リンクぺたり。

ameblo.jp

 

”Break Mirrors” by Blake Mills | Music and others

 

ブレイク・ミルズ "Heigh Ho" その壱 | Music and others

 

 3つとも同じブログからの記事で、ブレイク・ミルズについて詳しく書いてあるので読んでみてください。

 

www.youtube.com

 2010年には自主制作で『Break Mirrors』というソロアルバムを制作している。生産枚数が限られていたため入手はムズいっぽいのだけどこれがサブスクで普通に聴けてしまう。で実際に聴いてみると、1曲目から『Mutable Set』のあの音響が聴こえてきて愕然とする。ええーこの時点から……というか『Break Mirrors』も界隈では高く評価されているらしい。すごいですね。。

 

www.youtube.com

 2014年のライブ映像(フィオナ・アップルと共演)。ギターがめちゃ上手い。

 2014年のソロ二枚目『Heigh Ho』ではFiona Appleと、彼女繋がりでだと思うけどJon Brionが製作に参加していたり。つ、繋がってしまった。。 そしてあの特徴的な音響について、3つ目に貼った記事から引用。

彼のインターヴュー(この記事です!!)によれば、レコーディング時のその独特のギターの音空間の録り方が明かされています。様々なマイク・セッティングについては、レコーディング・エンジニアであるグレッグ・コラー(Greg Koller)の一任しているようですが、独特なセッティングですね。

ルーム全体の音を専用のペアのマイク(Neumann KM-53)で拾い、さらには分厚いギター・サウンドを得るために、隣の部屋にセッティングされたハンドメイドのエクステンション・キャビネット(スピーカー)からのサウンドも別のマイク(Neumann U-47 & U-67)で拾うという徹底振りです。 ルーム全体の音を拾うと云うこの考え方は、キース・リチャーズ(Keith Richards)などにも通じる方法ですね。

 職人肌……まさしく音の芸術家という感じです。……と、とても長くなったのでここらで切りたいと思います(つかれた)。非常に優良なアーティストなので、ゆっくりと過去作・関連作を聴いていこうかなと。Alabama Shakesも実は普通にスルーしてきてるんでね…。

 

 

 

 

 

 

 

The Decemberists / We Both Go Down Together、The Sporting Life、From My Own True Love (Lost at Sea)、Sixteen Military Wives

 from『Picaresque』

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 00年代聴き直しの一環。アメリカはオレゴン州ポートランド出身のバンドによる3作目のアルバムより。どの作品も平均して評価が高いのでどれから聴いたらいいのかわからない。

 トラディショナルな楽器をふんだんに用いたインディーロック。ヴァイオリン(というよりはフィドル?)やアコーディオンなどの時代がかった音色のせいかなんとなくモノトーンな世界観を感じる。楽曲はベルセバ風のシンプルなポップ路線と、大仰なドラマチック路線とを行き来する感じ。

 曲も演奏も良くて……名盤と呼べる出来だと思う。どこに出しても8点以上獲れるような…。ただ、これは個人的な趣味なのだけど、そのやや古風なサウンドと素朴なボーカルのせいかちょっと「重い」印象がある。なんというかな、日常的に聴くには曲がドラマチックすぎるし、かといってテンションを上げたいときに聴くには音の瞬発力が足りない、みたいな……伝わるかわからんのだけど。楽器と曲が合ってないというか、この曲ならガレージロック風のアレンジの方が映えるのでは…とか思ったり。ただこれも強く思ってるわけではないです。ちょっとだけ! 本当にささいな個人の趣味の話。

 良いアルバムです。音楽性については言ってしまえばBelle and SebastianとNeutral Milk Hotelを足して割った感じです。他のアルバムも聴いてみよう。あとどうでもいい?ですがバンド名の由来は12月ではなく、「デカブリストの乱」という1825年のロシアで起こった歴史的事件だそうです。

 

 

 

 

 

 

 

ザ・ゴールデン・カップス『スーパー・ライヴ・セッション』(アルバム)

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 日本のアーティストのライブ音源でお気に入りのものを集めてミックスを作ろうかなと思っていて(この記事上げたら取り掛かる予定)、その音源を探しているときに聴いた作品。なんせ名前が『スーパー・ライヴ・セッション』だからね…。

 

 日本の昔のロックを調べてるとたびたび名前を見かけることになるバンド、ザ・ゴールデン・カップス。変な名前……とだけ思ってスルーしていた(当時専属バンドをしていたレストランバーの名前から取られたらしい)けど、実際聴いてみたらとても良かったです。

 1969年4月21日に横浜市のZEN(ライブハウス?)で行われたライブをまとめたもので、全9曲中8曲がブルースやR&Bのカバー。「スーパー」と付くだけあって(?)演奏のレベルもテンションも非常に高く、ライブパフォーマンスとしては当時最高峰のクオリティだったのではと思わせる。

 

www.ele-king.net

 タイムリーなことに……といってもそのきっかけが訃報なのだから素直に喜ぶことはできないが、活動初期からこの『スーパー・ライヴ・セッション』あたりまでベーシストとしてグループを牽引したルイズルイス加部の活動履歴をまとめた追悼記事がエレキングでアップされている。記事の半分くらいはゴールデン・カップスにまつわるもので、GS(グループ・サウンズ)の説明から話を始めているところも、そのあたりに馴染みのない自分にはありがたかった。

 カップスの初期メンバーの中で、その後一番ロック的(?)に活躍したのが加部正義らしく、フード・ブレイン、スピード・グルー&シンキ、ジョニー・ルイス&チャー(のちのピンククラウド)などといったバンドやソロで作品を残している。彼の活動を追う形で作品に触れていくのもいいかもしれない。

 

参考リンク:

kakereco.com加部正義(b)にパワーハウスから陳信輝(g)、細野松本小坂らもいたエイプリル・フールから柳田ヒロ(key)、ジャックスから角田ヒロ(dr)が集まったグループ。知ってる名前いっぱいでてきて混乱する…(ヒロが二人…)

 

 

 

 

 

 

 

Shuggie Otis / Island Letter、Sparkle City、Happy House、Rainy Day、Pling!

 from『Inspiration Information』

www.youtube.com

 

 聴いたきっかけのツイ。

 同じ名前の曲を昔コンピレーションで聴いたことがあり…。それはShuggie Otisというアーティストが74年にリリースしたアルバムの名前であり、またその表題曲だったのでした。

 

www.youtube.com

 これも名演なんでみんな聴いてね。

 

 で以下初聴感想。

 これね……すごい名盤です。ラウンジ風味のリラックスしたムードとスライの暴動に通じる低温のファンクネスが自然に融合している。とりあえず上に貼った曲を一度聴いてみてほしいんですけど、ギターとエレピのプレイが、なんかすごく浮遊感があるんですよね。地に足が着いていない、空中で完結しているファンクとでも言うか…(そんなことってある?)。バンドだけじゃなくてストリングスもアレンジで入ってくるんですけど、その穏やかな風のようなストリングスが加わるともうね、体が浮く気がする……。あんまこういう表現したくないんですけど、スピリチュアルな、霊的な感じのサウンドです。

 素直に「こんなサウンドがあったんだ…」という感動があります。この路線のフォロワーっているのだろうか。個人的には似たような雰囲気の作品として坂本慎太郎『幻とのつきあい方』なんかが浮かぶのですが、でもこっちの方が幻というか幽霊っぽいよなあ…。

 

 うーん、謎。すごくユニークなサウンドだと思うけど、今までに名盤ランキングみたいなので見かけた記憶がない(70年代に名盤がありすぎるからか?)。作品の雰囲気やその評価のされ具合からはなんとなくNick Drakeの諸作に通じるものがあるような気も…。

 74年にオリジナルがリリースされた後、2001年にデヴィッド・バーンが主催するLuaka BopレコーズからCDでリイシューされ、また2013年にも未発表曲を含んだバージョンでリイシューされています。…なので再評価も00年代以降になされたという感じなのだろうか。それはそれとしてこの作品に目を付けたデヴィッド・バーンはやるなあという感じ…。

 

 参考情報。ちなみに上のゴールデン・カップスの『スーパー・ライヴ・セッション』はこのアル・クーパーがマイク・ブルームフィールド、スティーブン・スティルスと一緒にやった『スーパー・セッション』(1968年)が元ネタだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

六文銭 / 思い出してはいけない、追放の歌、それから、ネコの歌、へのへのもへじの赤ちゃん、雨が空から降れば

 前回も取り上げた六文銭。気に入りすぎてBOXセット(といってもディスク3枚だけど)を買いました。そのうちのディスク2…『六文銭メモリアル1』から。

 1972年7月に新宿厚生年金会館で行われたライブの録音らしい。だいたいオリジナルだけどカバーも少々。お気に入りのみ取り上げます。

 

www.youtube.com

 公式ではないので再生速度が上げられてますが、参考に。

 #1「思い出してはいけない」歌というよりは半分語りのようなボーカルが特徴的なアルバムのオープニング。日常で聞きなれない言葉に気を引かれ歌を追うと歌詞がやたらかっこいいことに気が付く。作詞…というか詞はバンドのメンバーではなく詩人・小説家の清岡卓行によるもので、どうやらそこに後から曲をつけたものらしい。

 

www005.upp.so-net.ne.jp

 調べてみると六文銭小室等(この曲を歌っている人)はそういうスタイルで活動をしていたらしい。以下引用。

 この人の良さは、その品質の高さというか精神的な気高さ、に有るのではないでしょうか。谷川俊太郎をはじめとして、名だたる現代詩人や劇作家の詩を使っていることもあって、(作品の内容は結構過激だったりするのですが)、どこかNHK的良識と教養と言うか、文化庁推薦的な匂いがして、一般のフォークファンからは必ずしも正しく理解されていないのでは、との危惧を禁じ得ません。
 一般的には、鬚の上條恒彦の後ろでギターを弾いていた人、フォーライフレコード設立時の社長として、拓郎や陽水、泉谷などを束ねた取り纏め役的存在、ないしTVの「フォーク特番」でニコニコと解説し「雨が空から降れば」ばっかり歌っている白ひげの老人、というイメージが強いかと思います。

 とにかく詩がかっこよく、それに合わせた曲もかっこいいという名曲。歌詞を載せているページがあったので、興味があれば読んでみて・聴いてみてください。

 

参考リンク:

清岡卓行論のためのメモ(3) - 詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

 

 

 

www.youtube.com

 #3「追放の歌」メロの部分でビートルズ「Baby's In Black」のような美しいハモりを堪能できる穏やかな曲……なのだけど、歌詞がやけにシリアスでかっこよく、曲調とのギャップに驚かされる曲。どうやら元は休みの国というバンドの曲らしく……いや、こんな詩を書ける高橋照幸すごいな…。

 

追放の歌/休みの国 - 歌詞検索サービス 歌詞GET

 検索かければ歌詞出てくるので、一度読んでみて…。

 

rollingstonejapan.com

 以下引用。

URCは旅の歌が多いんですよ。当時の若者が、どこかに行きたいということを思いながら暮らしていたということの現れでもあるんでしょう。この「追放の歌」は旅の歌ではありますが、ちょっと旅のニュアンスというか質が違う感じがしたんです。歌詞をご覧いただくとわかると思うんですが、追われる人の歌なんですね。仲間外れにされて追われるように出ていく。でも、その自分も昨日までは追放する側にいた。ちょっと曲が明るいので、なかなかそこの歌詞のニュアンスまで受け止められないという人が多いでしょうが、今の時代の歌かなと思ったんですね。つまり、いじめられて出ていく人、そしていじめられて出て行った人が昨日まではいじめる側にいたという歌だと思うと、この歌はすごい歌だなと思い、「人生と暮らしの歌」のほうに入れました。

 いや、この詩が、これだけ穏やかな曲に乗せて歌われているのがすごく衝撃で…。

 俺の背中にこだまする 人々のあの歌が
 喜びの歌じゃない 追放のあの歌
 きのうは俺もいっしょに歌ってた

 やっぱり、このコーラス部分がすごいですね…。名曲です。

 

 疲れたんで、このくらいで…。なんか自分はこのグループの歌の節回し……というか声の出し方?がどうしようもなく好きなようです。ロック的でもフォーク的でもない、どちらかというと合唱に近いのかな? 五つの赤い風船をソフトなロックに寄せたようなスタイルかな…ほぼほぼ同時期に活動してるので影響を受けてるかはわからんですけど。あと最終曲「ひとりぼっちのお祭」の歌詞は追放の歌とちょっとリンクしてるような気がしなくもない。

 

参考リンク:

ameblo.jp

 

 

 

 

 

 

 

月ノ美兎 / それゆけ!学級委員長、ありふれた毎日の歌

www.youtube.com

www.ichikara.co.jp

 最後はこれで締めよう。とうとう出ました、約束された神曲が…。

 もう疲れてなにか書く気力がないんですけど、しみじみと良いですね…。そんな思いっきり盛り上がる感じではなく、どちらかといえば少しノスタルジーに浸る感じの……それまでを振り返る、それこそアニメのエンディング的な楽曲ですね。

 EDMとかトラップみたいな流行のサウンドを過剰に意識することもなく、自分のスタイルで……自分の”好き”を貫いてきちんと名曲が作れてるのが感動的。どちらかといえばベタベタな≒少し古臭い感じのサウンド・アレンジ(もちろん意図されたもの)なんですけど、やっぱいいものはいいですね。イントロのなにかの番組のジングル感…(続く女声の「ウ~ウ~ウ~ウ~」というコーラスも…まあこれはお家芸のようなところがありますが)「古い」というよりは「懐かしい」で、またそれが曲にきっちりハマっているのが…

 

 ツボなところを一つ書いておくと、サビの最初のフレーズ、「放課後は わたくしの元へ集合よ」のところで、メロディーは高く昇っていくのに対してコード・ベースは下降していくという…この逆方向への動きがやっぱ自分の感動ポイントなんだな…と再確認した感じです。ツイッターでたびたび触れてるけどFGOというか坂本真綾の「逆光」と同じ……同じアレなんですよ。

 

www.youtube.com

 この曲聴く機会があるたびに感動してなにかしら呟いている。FGOの新章が公開されるたびになにか喚いてるんですよ、同時に公開されるCMにこの曲が使われてるから…

 この動画で言うならば、ちょうど1分頃の「(絶望のほとり)懐かしい人の名を 叫ぶ」の部分。ここを聴くたびに涙している自分がいる。。 いや、これアレンジのプロと歌がめちゃくちゃ上手い人が揃わないとできない芸当ですよたぶん。普通こんなメロディー浮かばない…ボーカルの人に対する厚い信頼がなければ実装しないと思う。ボーカリストもそうですけど、ベースとか他のパートがなければ成立しないような歌メロだと思います。ボーカルと他のパートが組み合わさって初めて機能する曲というか…たぶんメロディーだけ抜き出して聴いても???ってなると思う。

 で、、長くなったけど委員長の曲のサビも似たような形でね、聴くたびに涙ぐんでいるわけであります。。歌詞も明るいだけじゃなく少し暗い?ところもあるのがセラニっぽい。一つツッコんでおくと沼から救うのではなく突き落としているのが委員長。

 

tokyo.whatsin.jp

 調べてたら見つけたインタビュー記事。『MERRY GO ROUND JAILHOUSE』再発してくれ!! 本当にいいアルバムなので…

 

 そろそろ終わるぞ、その前に「ありふれた毎日の歌」リアレンジカバーについても少し。元の箱庭的・チェンバー的な感じも残しつつ、バーチャルということなのか8bit的なサウンドを取り入れている。

 1番のサビまでは8bit的ピコピコサウンドで、サビで原曲風のクラシカルなアレンジに華麗に転換するのだけど、ここでバーチャル→現実(あるいはその逆?)の切り替わりを演出しているのかもしれない。この曲も元からめちゃくちゃ好きな曲なので聴くたびに(ry 改めて歌詞を読んでみたら自分が作りたいものと世間に求められているものが食い違っているクリエイターの歌みたいに感じるなど。最後、歌詞の好きな部分を引用して終わりましょう。

 

ひょっとしてお城の中で一生暮らすつもりなの?

歌を歌い 空を眺め Everyday

お祈りして 明かり消して Everyday

やるべきことなんかない でも作り出す毎日

それが私の毎日 ありふれた毎日

 

 

 

 

 

 なんかめちゃ長くなりましたが、実はけっこう抜けてるものがあって(3ヶ月分ですからね)、それらは次回取り上げます、力尽きたんで…。長々と読んでいただきありがとうございました。