お気に入り曲まとめ(2021.6~10)その1

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 その1です。

 

 

 特に前置きなし!

 

 

 

KMD / Mr. Hood At Piocalles Jewelry/Crackpot、Who Me? (With An Answer From Dr. Bert)、Humrush、Peachfuzz

 from『Mr. Hood

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 ピッチフォークの90年代のリストで何度も見かけていたけど聴いたことなかった作品。MF Doomの訃報が流れた時期に彼がMF Doomを名乗る前に活動していたのがこのKMDだという情報を(今さら)入手、聴いてええな…となったのでした。(なので聴いた時期は1月になるんですが、まあ1月~5月は00年代注力期間ということで…)

 この作品でもすでに軽妙洒脱なポップセンスが発揮されている。De La SoulATCQに直接通じるユーモア・コード感がある。そりゃ好きだわ…。アルバム序盤は文句なし、中盤はちょいダレる?でも終盤に鬼名曲「Peachfuzz」があるから結局終わりまで聴いてしまうんだよな。聴くとDoomの仕事を体系的に聴いていくべきか!?って思います。

 

 

 

 

 

 

The Feelies / 『In Between』(アルバム)

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 定期的に聴きたくなるバンド。ストーンズが「ロックンロール」の権化ならフィーリーズは「ギターロック」のそれ。今まで1st2ndにしか触れてなかった(その時点で「定期的に聴きたくなる」枠に入っていた)のだけど、Spotifyに2017年作があったのでふと聴いてみたら1st2ndから全然変わってなくて驚いた。まさか今までずっとこんな感じで続けてきたのか…

 お家芸と言われればそれまでかもしれないですが、それはそれとして彼らのスタイルって最適解の一つなので永遠に残ると思います。ボーカルなんて顕著ですが、もう演奏もなにもかもおじいちゃんなんですよ、でもちゃんとバンドアンサンブルの快感がある。すごい。かっこいい年のとり方だ…。

 ゆっくりでいいんでずっと活動を続けてもらいたいですね。あとこれ以外のアルバムも順次入手したい(スポにないので)。どうせ定期的に聴きたくなるからな…

 

 

 

 

 

 

Dry Cleaning / Strong Feelings、Leafy、More Big Birds

 from『New Long Leg』

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 サウス・ロンドンのバンドらしい。shameとかblack midiなど若手が熱いシーン。ボーカルが象徴的だけど全体的にぶっきらぼう、というか武骨なバンドサウンド。どのパートの音もしっかり主張していて、リズム隊だけでも充分に気持ちいい。楽曲はポスト・パンクっぽいクールなスタイルで、安易に盛り上げない抑制がある。抑制があるとたまの逸脱が映えるんだよな。

 これは当然の話だけれど、パート数が減れば減るほど…編成がミニマルになればなるほど相対的に1パートの存在感というか果たす役割は増大していく。なにが言いたいかというとこれだけ引き締まった編成だとボーカルの存在感も自然と大きくなるよねという。歌詞の意味をリアルタイムで追えるか追えないかで評価ぜんぜん変わる可能性ある(それこそトリプルファイヤーと同様だ)。

 まあ歌詞を抜きにしても、このボーカル好きですね。クールな声だと思う。

 

参考リンク:

www.ele-king.net

 

 

 

 

 

 

Buffalo Springfield / 『Buffalo Springfield(アルバム)

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 はっぴいえんどの影響元として挙げられたりするバンド……の1st。よく60年代の名盤として次作の『アゲイン』が挙げられるので、自分もそっちは聴いていたのだけど、今回1st聴いてみたら好みド直球だった。こっちの方が好きかも…

 作曲はStephen StillsとNeil Youngで半々。困ったことに全曲良い。マジ。The Byrdsの1stやロデオの恋人と同じくらいのお気に入りになるかも。4分超えない12曲でトータル30分と少し。もう完璧でしょこれは…。

 これと比べると『アゲイン』は少しハードでケレン味が増した感じ。ポップな1st、渋くてかっこいい2ndみたいな印象。『アゲイン』のハードでブルージーなところは直接『はっぴいえんど』(ゆでめん)に繋がる要素。

 すごい良いアルバムですね。素直にポップな分『アゲイン』よりとっつきやすい。というか改めて聴くと『アゲイン』ってけっこう実験的ですからね、すごいけど個人的な「好き」にはなりにくいというか…。一方の1stは逆な感じ。好きだ…。

 

 

 

 

 

 

Claire Rousay / 『a softer focus』(アルバム)

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 アメリカのアーティストのアンビエント~フィールドレコーディング作品。こういう抽象的なアンビエントの良さってかなり言語化しにくい。この作品については作曲部分……というふうにはっきりと分離できないのが難しいんだよな。演奏部分でしょうか、電子音のドローンやコードの響きが純粋に良くて、この部分だけを抜き取ってもぜんぜん聴けるような気がするんだけど、そこにさらに良い感じに雰囲気のあるフィーレコやら物音がコラージュされてて、しみじみいいね~…という感じ。

 ここで浮かんでくるのが楽音以外の部分…フィーレコとか物音とかって必要あんの?という問。たぶんあった方が日常でのリスニングに馴染むと思う。なぜなら現実の世界はそういう雑音だらけなので…。ここらへん、「フィーレコとか物音が及ぼす効果」についてはそれだけでめっちゃ書ける一大トピックだと思うのでここではそんな深追いしませんが、とにかく、気軽なリスニングには適していると思います。精神的なハードルの低下とか。

 

 上の部分まで書いた後でツイに流したやつ。深入りすると沼るのでとりあえずお気に入りまとめに戻ります……

 

 33分という短めのランニングタイムと絶妙に意識を逸らすサウンドデザインによってマジでいつのまにか作品は終わっています(しかもあまり記憶に残ってない)。そしてまたリピートするという。地味にすごい作品だと思います。表面的なサウンドはすごい!って感じじゃないけど、よくよく見るとすごい回数再生している、みたいな。インパクトは少ないかもしれませんが傑作だと思います。

 

参考リンク:

note.com

 

www.ele-king.net

 

 

 

 

 

 

Cluster / 『Zuckerzeit』、『Sowiesoso』(アルバム)

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 実は真面目に通っていないクラスター。曲単位で消化できていないけど書いちゃいます。クラウトロックの「反復」部分を偏愛している人にとってはドンピシャな内容で、どこかとぼけた電子音の音色や牧歌的な雰囲気も好みに合う。『Zuckerzeit』なんかは『Emperor Tomato Ketchup』までのステレオラブに直接通じる内容で、曲の構造なんかも似通っている。

 これは自分だけなのかもしれないけど、好みの要素ばかりのせいか(Claire Rousayからの流れで言うなら音楽的すぎるんでしょうか)、なんというかすぐに満腹になってしまう。満足して他のジャンルを聴きたくなってしまう。もう少しアブストラクトな要素があればもっと長く付き合えるのかもな…とか。そうするとWooとかになっちゃいそうだけど(Wooは良い)。

 

 

 

 

 

 

Black Country, New Road / 『For The First Time』(アルバム)

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 デビュー前にして「世界最高のバンド」とか煽られたら素直な自分はめっちゃ反発しちゃうんですが、それで実際に作品を聴いてちゃ世話ないなという…(掌の上だ…)。ということでお気に入りではないけど実際聴いたし言及したので取り上げます。

 #2「Athens, France」前半に出てくるユニゾン~ブレイクの流れがSlint「Breadcrumb Trail」のそれっぽい。中盤の管楽器を交えてゆっくりじんわり展開するところ、そして至る最終盤のユーフォリックなパートはGY!BEっぽい……というところで上記のツイートのような感想が出力されました。

 アルバム全体、安易に気持ちいい展開にはしないし、その上やたら緊張感を煽ってくるというところで、わりとリスナーに“強いる”ところがある。そして機能的なところがない。楽しくさせる気もする気もないよね。でも異様なエネルギーはあるという。。ファストに消化できない重量がある。

 そのような点からやはりSlint 『Spiderland』が浮かぶ……んだけど、今もう一つ浮かんだのがあって、それがクリムゾンの『太陽と戦慄』。いや、もうすでに何度も指摘されてるかもしれないですが。。

 すでにそのような作品に触れてる身からするとそんなに驚きもないのだけど、『そのような作品』自体がけっこうレアだと思うので、本作が刺さる人もけっこうな割合でいるのでは?とも思う。どっちの作品も自分から音楽聴いていく人しか触れる機会ないでしょ。

 ただ1曲目は申し訳ないけどダサいと思う。いやたぶんこれライブ向けの曲なんじゃないかな……とは思うんだけど、それにしてもバンドの良さがぜんぜん出てなくない? サウンドが機能的な作曲に向いてないのかな…(この曲がライブパフォーマンスのイントロ用の曲だと仮定した場合の話)。安っぽいキーボード?の音がダメなんかな…。

 実力あるしサポートも厚そうなので今後には期待できると思う。なにするか分からないしなんでもできる気がするし。そして現時点でこのバンドを評価するにはライブの体験が不可欠な気がします(これについてはサウス・ロンドン勢みんなそう)。このアルバムは個人的には傑作じゃないけどめちゃ近い。力作だし良作。そしてアルバムの音楽性自体はかなりレアだと思っています。

 

 

 

 

 

 

東京ハイジ / へんしん!おでかけマン、てあらいぴっかぴか

 from『こどもベストヒット』

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 ササキトモコの姉妹クリエイターユニットのアルバムが! リリースされました。チャイルディッシュな音楽は定期的に聴きたくなるのでゆっくり聴いていこうと思う。とりあえず現時点でのお気にをピックアップしておく。

 あとアルバムではセラニの名曲「さよならいちごちゃん」がセルフカバーされています。このアルバムはサブスクにありますがセラニはサブスク解禁されてないので……出先でセラニ成分が急に枯渇したときにこのアルバムのカバーでちょびっとだけ補充できるようになりました。まあ一曲聴いたらどんどん聴きたくなってしまうんですが…。

 

 

 

 

 

 

諭吉佳作/men / ショック、この星にされる、くる、はなしかたのなか、撫で肩の…………

 from『からだポータブル』

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 年齢調べるのこわい……ので調べませんが、若い、すごい人です。すごいって書いてるのは実際曲がすごいから。この作品に関してはちょっと単発で記事書こうかな~となってるので詳しくはそっちで。とりあえずお気にの曲だけ挙げます。

 

 

 

 

 

 

Faye Webster / Better Distractions、Sometimes、I Know I'm Funny Haha、In A Good Way、Overslept

 from『I Know I'm Funny Haha』

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 アメリカのアーティストの4thより。Mac Demarcoを連想させるシンプルで洗練されたソングライティングが持ち味っぽい。アレンジは少しレトロ風味? エレピやスライドギターのふよ~っとしたプレイが特徴的で、アルバム全体にレイドバックした空気が漂っている。ということで自分としてはMac Demarco『Salad Days』とWeyes Blood『Titanic Rising』の中間のような作品かなといった印象。

 アルバム前半は比較的充実しているけど、後半は少し小ぢんまりとしているかもしれない。個人的にはもう一展開……!と思ってしまうような曲が続く。表題曲の#3「I Know I'm Funny Haha」も小ぢんまりしているけどそれが楽曲の寂し気な雰囲気に合致してるからむしろアリ。でも他の曲はちょっとシンプルすぎないか?と思いますがまあ個人の好みです。

 シンプルゆえに即効性があります。合う人はワンループで察知できるでしょう。それにしてもアレンジが堂に入っているなと思う。

 

 

 

 

 

 

Gilgamesh / 「One End More / Phil's Little Dance - For Phil Miller's Trousers / Worlds Of Zin」、Lady And Friend、Arriving Twice、「We Are All / Someone Else's Food / Jamo And Other Boating Disasters (From The Holiday Of The Same Name)」

 from『Gilgamesh

 1曲目と7曲目は組曲形式で名前もめちゃ長いので「」で括っています。

www.youtube.com サブスクで聴いてたから気づかなかったけどジャケットかわいいね…

 後にNational Healthに加入することになるAlan Gowenが在籍したジャズロックグループで、いわゆるカンタベリー・ロックというジャンルの代表的なサウンド。調べてみたらベースの人(Jeff Clyne)が元Nucleusで、初期のNucleusとは音楽性も通じている。

 各楽器の音色やアルバム全体の雰囲気はそこまで明るいわけではない……英国らしい(?)「憂い」のようなものが常に顔を覗かせているのだけど、一方でユーモアのセンスにも溢れており、それは「変わり身の速さ」という形で楽曲に現れている。明るい/暗いという境界を超えてころころと音楽の表情が変わるのだ。

 

 1曲目「One End More / Phil's Little Dance - For Phil Miller's Trousers / Worlds Of Zin」は4分半ばからWorlds Of Zinというおそらく最後のパートが始まるのだけど、これがブルージーな哀愁漂う熱演で、アルバム内では目立っている。5分以上あってめちゃ浸れるぞ。ソフツの「Slightly All The Time」の後半みたいな感じ。あの曲も大好きなんですよ…。

 記事書いてる途中であまりに良くてつぶやいたやつ。ガウエンの名前を初めて意識した瞬間かも。

  7曲目「We Are All / Someone Else's Food / Jamo And Other Boating Disasters (From The Holiday Of The Same Name)」の終盤、妖精のようなスキャットが入ると途端にハットフィールズになるのがおもしろい。転調を繰り返し意味がわからないままに高みに上り詰める様子はかなり神々しい。これがカンタベリーや…。

 

 細かな転調やリズムチェンジによって変幻自在にムードが変わっていく、カンタベリーらしいおもしろい音楽。リリカルな小曲もいいし、長大な組曲も聴きごたえがある(特に最後のパートがとてもおいしい)。ハットフィールズ好き好き~~~と前から言ってる人なので、そういう意味では今さら聴いてるの!?という感じではある。実はNational Healthも真面目に聴いてない。だってRichard Sinclairがいないんだもん。でも今回Gilgameshが良かったのでそのうち聴くと思います。

 

 

 

 

 

 

Arooj Aftab / 『Vulture Prince』(アルバム)

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 パキスタン出身で、現在はニューヨークを拠点としているらしいアーティストの……Discogsによれば3枚目?のアルバム。基本的な情報は下記のリンク先を読んでほしい。パキスタン(インドの左上!)の伝統音楽の要素が作品の骨子にあり、その説明のために見慣れない言葉が出てきます。

 サウンドはフォークとジャズの中間のような感じで、かなりハープの存在感が強いのでそういう意味ではJoanna Newsomがジャズをやったような感じも。一番の特徴はヒンドゥスターニー音楽(Hindustani classical)と呼ばれる伝統音楽に根差した歌・曲で、編成にパーカッションがほとんどないことも相まって、非常に楽曲が掴みにくい。楽譜の縦線なんてないんじゃないかと思わせるほど自由でふくらみのあるパフォーマンスで、浮遊感がある。そのため聴き心地はかなりアンビエント的です。

 アルバム全体に神秘的な空気があって、流していると異国の古い宮殿で一夜を過ごしているかのような気分になります。良作。

 

参考リンク:

musica-terra.com

 

mochizukisana.com

 

 

 

 

 

 

L’Rain / Two Face、Take Two

 from『Fatigue』

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 ニューヨークのブルックリンを拠点として活動しているアーティストの2nd。エクスペリメンタルなポップ/R&Bサウンド疲労や倦怠感といった意味のタイトル通り少し暗め。個人的にはKing Kruleのようなよれたギターの音色が印象的。ランニングタイムがギリ30分切るくらいの短さなこと、メインとなる楽曲がけっこうポップでメロディアスなことからあまりとっつきにくさは無い。総じてポップと前衛のバランスの取れた良作といった感じ。

 アルバム単位では強いけど、曲単位では際どい……というかあまり繰り返し聴きたくなる曲がない(個人的な話です)。なんかね、演出じゃなくてちゃんと曲を聴かせてくれ、みたいに思うことがあります。アルバム単位で聴かれることを強く意識した作品だと思うので、初回を、最初の視聴体験を大事にした方がいいと思います。

 

 

 

 

 その2を今月中に上げてスッキリしたい。