お気に入り曲まとめ(2022.8~9)

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 ちょい早いしあんま新しい音楽聴いてないけどお気に入り記録です。

 

 

 

Arti & Mestieri / Valzer Per Domani、Saper Sentire、Mescal 、Nove lune dopo、Consapevolezza Parte 1a、Sagra、Rinuncia

 from『Giro di valzer per domani』

 

 

 前回1stアルバムを取り上げたイタリアのバンドの2nd。1作目が終盤の「Articolazioni」という曲にたどり着いて初めて好き!と思えたのに比べて、2作目のこちらは1曲目から好き!!!となった。なにが違うのかな~と少し考えたのだけど、今作においては彼らは「もったいぶってない」んですよね。具体的に言うと、1作目が「後で120点を出すために今あえて60点を出す」みたいなことをしているのに対して、今作では「いや最初から100点出せばよくね?」となっている。

 後から振り返ると1stはプログレという枠・スタイルに囚われ過ぎていた。ぶっちゃけ頭でっかちだった。ああいう衒学的な……気難しい構成・楽曲って、Artiみたいな規格外のバンドはやる必要ないんですよ。そういうの全部ぶっ飛ばせるレベルの技巧や溢れる歌心を持っているので…。

 

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 ということで全体的に風通しの良い、メロディアスでわかりやすい作風になりました。上でも書いたけど1曲目から朗々とメロディーを歌い上げている。そうそうおれが求めていたのはこれだったんだよ…。これに比べたら前作のオープニング「Gravita 9,81」もぜんぜん頭でっかちに思える。いやまあ必要以上に前作を下げる必要ないんですが。

 

 それにしてもこの潔さはなんなんだ。ここまで吹っ切れるもんなのかな?と思えるほどに気持ちいい場面のみが切り取られている。1曲目「Valzer per domani」で冗長なイントロを廃してすぐにメロディーに突入するところが象徴的だけれど、全体的にイントロやアウトロなどお決まりの・形式的なパートが取り除かれている。なんかどの曲もスッと始まってパッと終わるんだよね。それほどまでにプログレぶるのが嫌だったのだろうか(これは妄想)。

 そんなふうに聴き手(奏者自身もかな)に一切の忍耐を求めず、シンプルに快楽を追求するスタイルからは「アート」というよりはより大衆的な娯楽への志向を感じる。……言葉にするとこんな感じになってしまいますが、簡単に言えばただただ自分たちの好きなことをやったアルバムなんだと思う。

 ということで個人的には前作よりもずっと好感が持てるアルバムとなっています。どのメロディーも気持ちを乗せて歌い上げていることがわかる。というかどの曲もどのメロディーも弾いてる側はめちゃくちゃ気持ちいいと思います。絶対に聴いてるだけより弾いた方が気持ちいいよこれ。ここまで純粋な歌心が詰まったアルバムってそうそうないですよ。

 

 

 

 

 

 

 

Smart Went Crazy / Immutable Beauty™D.C. Will Do That To You、A Good Day

 from『Con Art』

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https://rateyourmusic.com/list/antoine_doinel/pitchforkmedia_top_100_albums_of_the_1990s__original_list_/

 なんか今ピッチフォークのサイトで見れる90年代のリストって改訂版らしくて、その前のバージョンがあったらしい。ということでその初版のリストを調べて見てみたらぜんぜん内容違ってて驚いた(知らない作品ばっかだ)。そしてこのアルバムはそのリストの超序盤(#99)に挙げられていたものです。

 

 Dischordらしい運動神経のよさを覗かせつつ、決してスピード・パワー一辺倒でないところが良い。基本的にはミドルテンポで、じっくりと聴かせる楽曲がメイン。ということで、自分が最近聴いた中ではFugazi『The Argument』の中盤以降の楽曲を思い出すような内容です。その名の通りポスト・ハードコアというか、ハードコアをベースに実験的な要素を加えた音楽性。

 実験とポップのバランスが非常に取れている。このジャンルでは珍しく?編成に入っているチェロやノイズが聴き手の注意を引く。アルバムの構成も巧みで、曲間のシームレスな繋ぎやそこここに配置されたインタールード的楽曲がアルバム単位での視聴を促している。

 

 マジでアルバムとしてよくできた作品です。曲単位で見ると『The Argument』に負けるけどアルバム単位で見ると匹敵している、というマジックが起こっている。名盤だと思います。一息入れるとしたら#9「Let X=X」と#10「Funny As In Funny Ha-Ha」の間。というのもここがLPのA面B面の分け目なので(内容的にもちょうど切れるようになっている)。

 

 このアルバムから参加しているDevin Ocampoって人が界隈ではけっこうな重要人物らしいです。他のメンバーもちゃんと音楽活動続けてるっぽい。

 

 

 

 

 

 

 

Charles Stepney『Step on Step』(アルバム)

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Charles Stepney – Step on Step – out out

 

 ピッチフォークのレビューで8点だったので聴いたら良かった。のでツイに放流したんだけどよくよく調べてみたらぜんぜん現代の作品じゃなかったやつ。いやあすごく現代的なサウンドに聴こえたもので…。

 ツイでも書いたけど『Toeachizown』をチルウェイブよろしくローファイ化してよりまろやかなサウンドに落とし込んだような音楽。Steven Julien(Apron)とかJay Danielみたいな、インドアでエレクトリックなブラックミュージックで……まさしくその周辺から出てきた新人なのかな?と思ったのでした(違ったけど)。

 

 『Step on Step』があまりにも前述の界隈のサウンドと似ているので、(みんな同じことやってるんだな!)とか思ってしまう。一皮剥けるにはこれをベースとしてきちんとレコーディングのプロセスを経ないとなんだな、とか。いやまあ自分はこの状態のままでも全然良いと思うんですが。というかこの状態のサウンドを「デモ音源」ではなく「完成形」と捉えられるようになったのが現代ということか、みたいな感もある(?)。

 

 それはそれとして……トラック数が限られていたという事情もあると思いますが、非常に洗練された、必要十分な音楽です。言ってしまえば「アレンジの教科書」ですね。4トラックとは思えない充実感があります。音色的にも夜にのんびりまったり聴きたい作品。

 

 リリース元のレーベルが公開しているプレイリストで、Charles Stepneyのアレンジャーとしての仕事はまとめられてるっぽい。「これがレコーディングされるとこうなるのか」みたいな発見があるかも。余裕があったら聴こう。

 

 

 

 

 

 

 

eagle shadowのバンドキャンプ

 

 以前から微妙に推してるeagle shadow。たまにバンドキャンプを見に行くと作品が増えていたりする。

 まとめ買いで安くなるのでまとめて買いました。上がっているものの大半は単曲ですが、たまにアルバムみたいにたくさん曲が入っていたりする。のでコスパを気にする人はそういう作品を狙って買うのがいいと思う(上に貼った『Perspective intergenre』など)。まあコスパ最強はまとめ買いなのですが…。

 

 基本的にはラフなジャム音源です。かっちりと作り込まれている印象はなく、だからあまり集中して聴いても得られるものは少ないかもしれませんが、BGMとしては最適です。個人的にはこれくらいの音数で普通に満足しちゃう。ジャンルとしてはエレクトロニカフュージョンゲーム音楽+ブルースという感じ。

 ベース+ドラムのリズムトラックを予め作っておいて、それを流しながらギターやキーボードのソロを弾く、みたいなスタイルなのだろうか。リズムトラックのループが終わった?みたいな場面がたまにあって、それが少し気になるけど…。

 

 

 

 

 

 

 

Kassel Jaeger, Stephan Mathieu and Akira Rabelais『Zauberberg』(アルバム)

 

 去年バンドキャンプでまとめ買いしたStephan MathieuのSchwebung。また『Heroin』みたいな作品ないかなーと軽く流し聞きしたところこれが少しぽかったです。ソロではなくコラボ作品で、その相手も前回(Ekkehard Ehlers)とは違うのにどうして似たようなテイストになるのか……。

 退廃的で虚無いアンビエントにおぼろげなメロディーが乗るという基本的なスタイルは変わりませんが、こちらの方がよりドローンの要素が強い印象。

 

 『Heroin』もこの『Zauberberg』も、自分がどこにそんなに魅力を感じているのか、いまいち言語化できません。雰囲気の(非常に高いレベルでの)統一はもちろんだし、そもそもの雰囲気のチョイスというか雰囲気自体が唯一無二というのもあるけど…。一度ちゃんと分析したらけっこうおもしろい気がする。

 

 知らなかったけど2018年に音楽製作をストップし、以降はマスタリング業に専念しているらしいです。今回のバンドキャンプのセール(もう終わりました)が過去カタログのダウンロード販売の最後かもね、ということでTLで少し話題になってましたね。という記録を残しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 8月終わりからやってた過去音源聴き返し企画は終わらなかったのでまた来年かな~。そろそろ別件の期限が迫ってきたのでそちらの作業に移らないといけない。ということでまたしばらく放置します。今年の年ベスを作る余裕があるかな、というのが少し心配です。