2023年に聴いてよかった作品

 2023年の個人的年間ベストです。

 

 

 2023年に聴いた作品の中からお気に入りを20作選びました。毎度そうですが2023年以前に発表された作品も含んでいます。

 今回は特に「アルバム一枚通しで楽しめるか」がポイントになった気がします。音楽が身近な生活してるとアルバム単位で心地いい作品に自然と惹かれてしまいます。

 順位付けはないのですが、お気に入りの度合いによってグループ分けがあります。10作1グループで、最初に紹介するグループの方が自分的にはより気に入っています。グループ内ではお気に入りの度合いはそこまで変わりません。

 

 掲載順はアーティスト名のアルファベット順です。それぞれYouTubeの動画を埋め込んであるので、気になった作品はぜひ試聴してみてね。

 

 

 

 

 

 

 

・とてもとてもお気に入りな10作

 

Califone / Villagers

(2023)

 

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 日常に寄り添うブルージーな楽曲とスロウなグルーヴ。そしてなにより豊かなサウンド。デビュー時点からすでに枯れた感性をしていたけれど、20年以上の活動を経てまだ熟する余地があるとは。文字通り「芳醇」な味わいの音楽で、アレンジ・音響面に関してはもはや魔法の域に達している。#3~#5をよく聴きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dialect / under~between & Keep Going... Under

(2021)

 

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 音と曲の境界を揺れ動くエクスペリメンタル~アンビエント作品。これは単なる音なのか、それともフレーズなのか。繋がっているのか離れているのか、その間合いを確認するかのようにして音が鳴らされていく。探求的かつ抽象的な音楽で、ある程度の能動性があった方が楽しめるのは確かだが、そもそも各楽器の音色が美しく、てきとうに流しているだけでも心地いい。よりかっちりとした作曲を楽しみたい人には『Keep Going... Under』や、2022年にRVNGからリイシューされた彼のデビュー作『Advanced Myth』がおすすめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

feeble little horse / Girl With Fish

(2023)

 

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 突飛なアレンジが特徴のポップでフリーキーなインディーロック。気軽に轟音を振り回す振れ幅の大きいサウンドと情緒不安定な楽曲に翻弄されっぱなしの30分。落ち着きはないけれど楽しいし、驚きがある。根底には王道のソングライティングがあるのだけど、それをこんな乱暴に味付けしたりぶち壊したりするんだからたまらない。贅沢だし痛快です。飽きる前に切るから流れがいいしよくまとまっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

James Taylor / Sweet Baby James

(1970)

 

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 シンプルなギターの弾き語りを探してたどり着いた作品。とにかく曲が良い。音響やアレンジに目立つ特徴はないのだけど、そのことが曲の良さをダイレクトに伝えている。マジでただただ曲が良い。

 ……なんというかパイオニア的な要素がなくて、だから歴史的に見てもあまり語られる機会がない(マイブラとかBOCとか、特徴的なサウンドの作品ってよく語られるよね、という程度の話です)。Pitchforkの70年代のリストには載らないけれど、Rolling Stoneのオールタイムベスト500では上位に挙がる。そんな作品。自分的には曲の良さだけで10点満点です。

 

 

 

 

 

 

 

 

Jesse van Ruller & Maarten Hogenhuis / Spirits High

(2021)

 

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 自分が今年一番ハマったアーティストかな。オランダのジャズギタリスト、Jesse van Ruller。彼がサックス奏者のHogenhuisと組んで21年に発表した作品。

 個人的にはギターでもなんでも、テクニックってそこまで求めていなくて、それよりもメロディーやらアレンジやらを評価する傾向にあるんですけど、Jesseはこの作曲能力とメロディーのセンスで他よりも抜けてると思います。その上で今作ではポストプロダクションに凝っていて、曲と演奏、そして不思議な音響が楽しめる逸品となっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

La Máquina De Hacer Pájaros / Películas

(1977)

 

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 Sui Generisのフォーク~シンフォ路線にジャズ~フュージョン瀟洒な感性が注入され摩訶不思議な味わいの作品に。のどかなのにオシャレで、機能的なのに情熱的。別に相反するわけではないけどあまり両立しなさそうな要素がごく自然に同居している。

 クールなアンサンブルと熱い歌心の融合。ジャンルを超えた、「音楽」としか言えないような内容で、まさに不世出な作品だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

M. Sage / Paradise Crick

(2023)

 

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 エレクトロニック/アコースティックという垣根を意識させない自在なサウンドに自然の環境音を散りばめたマジカルなアンビエントイージーリスニング。デジタル森林浴というか、風雨に揺らめく木漏れ日をそのまま音にしたかのような。

 総体としてはサイケデリックだけれど、馴染みのいいリズムやメロディーが全体に配されており親しみやすい。雰囲気の連続性を保ちつつ音楽的なメリハリも備えており、一枚のアルバムとして非常に芸術点が高い。#1~#3の流れを聴けば傑作と分かるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

Phish / Junta

(1989)

 

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 ジャムバンドとして有名なPhishのデビュースタジオアルバムで、はじめはレーベルを介さずにセルフリリースされていたらしい。

 これは完全に規格外のアルバムです。80分を超える物量と、これ以上ないというレベルの質の両立。前にも書いたけど、Sonic Youthの『Murray Street』(の前半)やDeerhunter「Nothing Ever Happened」の、楽器のフレーズをずっと追っていくあの感覚がアルバム全編に流れている。これだけの時間、「歌」の神経を貫き通すのははっきりいって並大抵ではない。

 量と密度が尋常じゃないので自分自身まだ消化できてないところもありますが……でも冒頭の3曲だけでもこの位置(年ベス)に収まったでしょう。これが一作目でしかもセルフプロデュースって、正直もう勘弁してくれという気持ちです。メロディー派は絶対に押さえておくべき作品。

 

 

 

 

 

 

 

 

Steely Dan / Gaucho

(1980)

 

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 安定したリズムやミニマルなアレンジであまりに聴きやすく、初聴時は拍子抜けしてしまったのだけど、一度このゆるく引き締まったグルーヴに馴染むと抜け出せなくなります。

 これ以上足せる音も引ける音もない、文字通り完璧な出来……なんだけどそう思えるまでには多少時間がかかるのかも。これと比べると『Aja』はロックしてたなと思う。でもこの、ゆっくり目のテンポで一分のズレもなく決めるのがカッコいいんだよな~……え、ただの老い? そ、そんなはずは……

 ポップミュージックの楽曲のアレンジのちょうど必要十分のラインがこのアルバムなので、そういう意味で試金石というか参考になるかもしれないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

Youth Lagoon / Heaven Is a Junkyard

(2023)

 

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 初めて1曲目を聴いた瞬間にハマっていた。今年一番即効性のあるアルバムかもしれない。キャッチー。

 尖った部分を極力排したまろやかなサウンドに、シンプルでスウィートかつすこし物憂げな楽曲。現代的なドリームポップの傑作です。Boards of CanadaやSalami Rose Joe  Louisみたいな、音色をほんのり歪ませて生じるサイケデリックな感覚がよく嵌まっている。

 インスト含め佳曲揃いの作曲はもちろんですけど、この羊膜のような柔らかく暖かなプロダクションが白眉ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

・とてもお気に入りな10作

 

Chamber Tones / Chamber Tones

(2010)

 

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 再びJesse van Ruller関連作。ギター、クラリネット、ベースのトリオ編成で穏やかな楽曲をプレイ。21年のお気に入りだったPhonolite Stringsを思い出すような、まさに室内楽的なアンサンブルです。

 繰り返しになるけれど、やっぱり自分はこの人の歌心に共鳴しているんだと思う。すべてがJesseの作曲というわけではないですが。前半4曲が特に好き。

 上に貼った動画は同じグループの次作からの曲ですが、サウンドはほぼ同じなので参考にはなるかと(『Chamber Tones』収録曲の動画がほぼなかったので)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dylan Moon / Only The Blues & Oh No Oh No Oh No

(2019、2020)

 

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 ギター主体の牧歌的なインディーポップ。ノスタルジーを醸すBibio的なひしゃげたサウンドと、陰性のThe Shinsとも言うべきメロディーセンス。メロディーの筋が通っていてフォーキーなアルバムも、アレンジにこなれてきて機能性が目立ち始めるEPもどちらも良いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Flore Laurentienne / Volume I & Volume II

(2019、2022)

 

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 15人編成のストリングスとシンセサイザーによる壮大でロマンチックなポストクラシカル。豊かな音色と情感溢れるメロディーがはちゃめちゃに合う。Volume Iの方が劇的で、Volume IIの方がミニマル。共通するのは自然の雄大さです。

 

 

 

 

 

 

 

 

Julian Lage / View with a Room

(2022)

 

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 人気ギタリストの2022年作でBlue Noteからの二作目。客演含めた豊富な経験によるのか、そもそもの録音・プロダクションが良い。楽曲も適度にバラエティがありつつもアルバムとしてのまとまりもあり非常に高品質。す、隙がない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Labi Siffre / Crying Laughing Loving Lying

(1972)

 

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 『Pink Moon』レベルの巧みなギターとポップで的確なアレンジが楽しめるフォーク・ポップ。内省的な弾き語りから特大射程のアンセムまで多様な楽曲を収録。飾らない朗々としたボーカルも良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

Mukqs / Walkthrough

(2016)

 

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 曖昧で抽象的な表現を媒介にしてゲーム音楽アンビエントを結びつけた珍しい作品。暖かな音色と馴染みやすいメロディーですぐ虜に。全体の流れも考えられており、できればアルバム単位で聴いてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

Oswego / Oswego

(2002)

 

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 ワシントンDCのハードコア人脈による骨太ロック名盤。王道のポップセンスを持ち、奇を衒わずにストレートに歌い上げる。ややゆっくりなテンポで、演奏の重厚感と疾走感が本当に理想的。

 

 

 

 

 

 

 

 

Serú Girán / Peperina

(1981)

 

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 Charly García関連二作目。哀愁のソングライティングが極まった一作。#2後半の上がりきらないコード展開や#5の泣きのギターなど、とにかく全体に味が染みている。これが刺さる程度には年を取ったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Vince Guaraldi Quintet / A Charlie Brown Thanksgiving

(2023)

 

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 73年発表のアニメ作品のサントラで、音楽作品としてリリースされるのは今回が初めてらしい。軽快でムーディーなソフト・ジャズ。これでいいんだよなという感じ。いつ流しても楽し気な空気にしてくれます。引っ越し作業のときによく流していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

作曲:片岡真央、岩田恭明、安田拓朗、田村理遊、阿部壮志

サウンドディレクター:若井淑

予告編用音楽の編曲者:山下康介

 / ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド オリジナルサウンドトラック

(2018)

 

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 神ゲーのサントラ。抽象的なアンビエントのフィールド曲も良いがそれらはぶっちゃけゲーム部分と一緒に味わうもの(インタラクティブ性がある)。かっちり作曲された村や街のBGMもめちゃくちゃ良く、あ~~~ウオトリー村に住みたい…。

 

 

 

 

 

・その他のお気に入り

MSR, 顧忠山 & Damien Banzigou『鯉氏偵探事務所OST
Potions『Light And Dark』
Fire-Toolz『Drip Mental』
Mondo Lava『Ogre Heights』
Nonlocal Forecast『Holographic Universe(s?)!』
Meshell Ndegeocello『Bitter』
MF DOOM『Operation: Doomsday』
June of 44『Tropics And Meridians』
k.d.lang『Ingénue』
Anohni And The Johnsons『My Back Was A Bridge For You To Cross』
suzukiski『Helix』
Ragnarök『Ragnarök』
Euglossine『Coriolis』
Oliver Coates『Shelley's On Zenn-la』
Ian William Craig & Daniel Lentz『Frkwys Vol. 16: In A Word』
アークナイツ 音律聯覚2023・WANTED

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下雑文。2023年の自分について。

 

 ずっとオモコロチャンネル見てた…。去年からハマっていたけど、今年もずっと見てた。普通にアップされてる動画はもう全部見てて、その上で今でも一日一回は何かしらの動画を再生している。既に一度見たことのあるものを。異常独身男性か?

 いやおもろい……のはそうなんだけど、それよりもメンバーたちの絡み合いが見てて楽しくて気持ちよくて。たまに(え、これが理想郷なんじゃない…?)みたいに思ったりもする。人間関係のね。

 

 ゲームもけっこうプレイしてた感。一年の1/4くらいはゼルダ(ブレワイ~ティアキン)をやっていたと思う。他にもSifuにTunicにドレッドAC6と……神ゲーしか触ってない。幸せです。

 

 去年に引き続き自炊をまともにしている。外食に飽きたからというよりはもう、家から出るのがめんどくさいから、家から出ないで済むように自炊をしている感じ。外出のハードルが上がったのは単純に加齢によると思うけど、自炊のハードルが(慣れによって)下がったのは普通に成長のような。カレーとかね、人に振る舞えるレベルにはなってると思う。元から難しい料理じゃないし、カレー用のカット野菜がないと作らないけど…。最近は野菜を摂る用に袋麺を食べている。カット野菜と一緒に茹でるだけだからね。

 

 完全に新しい事柄としては、お絵かきに挑戦したこと(RVNG本作業以降はまったく触ってないけど)と、直近の引っ越しがある。今年一番のチャレンジがお絵かきだった。発端は気の迷いというか狂いみたいなものだったけど、まあ触ってよかったと思う。なんというか、オタクとしての呪いが一つ解けたような感じがある。やり方はともかく、とにかく一度完成させることですね、やっぱり。

 引っ越しは本当に深い理由はなくて……ただ家賃を下げるため、という理由でした。自分は基本、通勤通学の時間って無駄だと思っていて、だから今までの仕事ってみんな会社の近くに住んで、徒歩で通勤してたんですね。ただ、今の会社って千代田区にあって……自分は東京の知識ぜんぜんなかったので、そこら辺が地価?の高い場所だと知らなかったんですね。それで、よくよく考えてみれば通勤にかかるお金って会社から貰えるんだから、会社から離れたもっともろもろが安いところに引っ越せば生活費を抑えられるのでは!?と考えたのです。

 物件選びが雑になったけれど、そのアイデアを思いついてからは最速で行動できたと思うので、まあ良かったかなと思う。これがフッ軽の本領。ただ引っ越し全体で2~30万かかってるので、元を取るには1~2年かかるという…。でも住居や周辺環境のレベルは完全に上がったのでヨシとしています。

 

 

 音楽に関しては、単純に去年よりもお気に入りの作品が増えたので良かったかなと。去年が年ベスの作品……その年に聴いて本当に気に入った作品を5作しか挙げられてなかったので。

 また、薄い本3冊出す!なんて目標を去年のまとめ時に掲げていましたが……まあ~~~折本レベルのものを含めれば3冊作ったのでヨシ!とします。でもその折本レベルのものは自分にとって完全に新しいジャンルのものだった(実際一番苦労した)ので、いいでしょ。

 来年はそんなに本とか出さずに、なんというか深掘り的なことをしていこうと思っています。それでも1冊は出したいなと思いますが。

 

 この後はおもしろかった動画をまとめて、ソシャゲについても簡単にまとめて……年末年始はもろもろのまとめだけで終わってしまいますね。それでは。ちょい早いですが来年もよろしくお願いいたします。おわり。