お気に入り曲まとめ (2020.8~10) その1

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https://www.barks.jp/news/?id=1000169576

 いつものやつです。久しぶりです。

 

 

 取り上げる順番は自分のメモした順(=だいたいの聴いた順)です。

 

 

 

ザ・ディランII(でぃらんせかんど) / 君の窓から、子供達の朝、その時、君をおもいうかべ

 from『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』

www.youtube.com

 

参考リンク:

kyoto-antenna.com

 

 ザ・ディランII(ザ・ディラン・セカンド)という名前の日本のバンドのファーストアルバムより。前回のまとめで西岡恭蔵のファーストを取り上げましたが、その西岡恭蔵がソロ転向前に参加していた…というか活動初期の中心人物の一人だったのがこのザ・ディランIIというグループ。メインのメンバーは大塚まさじと永井洋の二人で、71年に西岡が脱退してからは二人で活動を継続していく。

 

 西岡の『ディランにて』と同じ72年に発表された作品で、収録曲も数曲被っているが音楽性は異なっており、『ディランにて』がどちらかと言えばタイトで骨太なのに対して、『きのうの~』は柔らかく、少し粘りけがある。ある意味、西岡と大塚のボーカルスタイルが音楽性を象徴していて、朴訥ながらもハキハキとした西岡に対して、大塚はコブシを効かせて粘っこく歌い上げる。

 鍵盤楽器…ピアノやオルガンが編成にあるかどうかも音楽性に大きく影響していて(『ディランにて』にはほとんど鍵盤が出てこない)、たとえば#2「子供達の朝」という曲では中盤から薄く鳴らされるオルガンの音色が楽曲の印象を柔らかいものにしている。というかこの曲の、2分過ぎからの間奏部分めちゃいいよね…。

 

 名盤ですね…。パフォーマンスもいいですけど単純に曲がいいです。。サウンド参照元としてはディランはもちろんだけど、音の柔らかさ・粘っこさという意味ではThe Bandの『Music From Big Pink』が大きいような気がします。

 

 

 

 

 

 

 

Smog『Red Apple Falls』(アルバム)

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 Bill CallahanことSmogの6枚目のアルバム(1997年発表)。ツイッターかどっかで「ジム・オルークプロデュースだよ☆」との情報を目にして聴いた作品。

 

 わかりやすいポップさがあるわけでもなく、基本的に地味~な作品だけれども、当時のオルークの柔らかで繊細な音響にじっくりと浸ることができる。1曲目「The Morning Paper」のイントロアウトロや表題曲「Red Apple Falls」で顕著だけど、遠くからほわ~と鳴らされるブラスやスティールギターがとてもいい味を出している。地味めな楽曲はこの柔らかなサウンドと相性が抜群で、聴いているとひたすらに穏やかな心持ちに…

 アルバムとしては#5「To Be Of Use」以降の穏やかな流れがハイライトか。特に約7分もの間ふわふわと漂い続ける「Red Apple Falls」がすばらしい。続くアップテンポな「Ex-Con」も、それまでの落ち着いた流れをリセットするようにうまく機能しているように思う(ここでのエレクトロニクスはオルークの手によるものだろうか)。

 

www.ele-king.net

 そしてつい最近もタイムリーな記事が上がりまして……というのも彼の新作がリリースされたからなんですけど。この記事では新作についてはもちろんだけど、それ以前のめぼしいリリースについても書かれていて、Bill Callahanの入門にも役だつ内容になっています(つまり自分向けということだ…)。それによれば99年の『Knock Knock』(よく見かける猫ジャケのやつ)が再びオルークのプロデュースで、続く『Dongs Of Sevotion』がトータスのジョン・マッケンタイアのプロデュースらしい。後者はピッチでやたら評価されてたので昔に買った覚えがあります。次はとりあえずここら辺を聴いていこうかな~。

 

 

 

 

 

 

 

Erlend Øye / Every Party Has A Winner And A Loser

 from『Unrest』

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(スポには無いっぽい)

 

 前回のまとめで取り上げたSchneider TMからの流れでErlend Øyeのソロ作品を(2003年発表)。Kings Of Convenienceとしての活動が有名っぽいですが、そちらの作品は聴いたことないです。厄介オタク的にはそれよりもDJ-Kicksの高評価の方が印象に残っているのでは? こっちも買ってはあるけどまだ聴けてないです(死)

 

 耳あたりの良いサウンドの、なめらかでおしゃれなエレポップ。突き抜けたところはないけれど全てが高いレベルでまとまった良作。そのエレクトリックで機能的なサウンドはオフィスやリビングルームでよく映えそうだ。

 特徴的なのは元気すぎないこと…というか、アルバム全編にどこかアンニュイな空気が漂っていること。なぜなのかはわからないんですけど…本人の気質によるものだろうか。特に顕著なのがお気に入りとしても挙げた#5「Every Party Has A Winner And A Loser」で、これはもう曲名からしてちょいダウナーな感じなんですけど、曲もいい感じにダウナーで浸れるんですよね(この曲のプロデュースはPrefuse 73で有名なScott Herren)。曲中に「Feel like a Japanese」というフレーズが出てくるんだけど、日本人はどういうイメージを持たれているんだろうか…。遠くの方から実際のパーティーの喧騒のようなものが聴こえてくるのもおもしろい(というかキツイ…コミュ障なので)。てか改めて考えると主人公がパーティー会場に入る場面からこの曲は始まっているっぽい。うおおお…

 

 いやいくら刺さったからといってこの一曲についてばかり語っても…。一応、アルバムの説明として、1曲ごとに異なる都市で、異なるプロデューサーを起用して製作されたそうです(詳しくはDiscogsのページ参照)。そのわりにはアルバムにめちゃ統一感がある。まあ今なら安く入手できると思うので機会があればぜひ聴いてみてください。わかりやすい衝撃はありませんがじんわりと沁みてくる良盤だと思います。

 

 

 

 

 

 

カルメン・マキ&OZ / 六月の詩、朝の風景、Image Song

 from『カルメン・マキ&OZ』 

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(これもスポには無いっぽい)

 今さら聴いた日本のロック名盤『カルメン・マキ&OZ』(75年発表)。上に貼ったツイが初聴時の感想で、いやマジですごいなと思った(思っている)。ボーカルの歌唱力がホンマにすごくて、いや本当に「大魔王」っていう形容が似合うんですよ。世紀末とかにこの声が鳴らされていてほしい。

 

 音楽性はハードロック~プログレ+歌謡曲という感じで、個人的に近いと思ったのは上でも挙げられているけどイギリスのバンドRENAISSANCE。ドラマチックでヒロイックな楽曲と、中心にどっしりと構えるボーカルにそれを脇から支えるバンドという構成と……似ているというか、つよつよなボーカルを引き立てる方向にいくと自然にこういうスタイルになるのかな、という感じ。

 

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 ただ、曲の雰囲気はまったく異なっていて、RENAISSANCEが光なら、カルメン・マキ&OZは完全に闇側です。それこそファンタジーものの定番に当てはめて、勇者側と魔王側としてもいいかもしれない。具体的にはRENAISSANCEが爽やかで牧歌的な面があるのに対し、カルメン・マキ&OZはあくまでハードに徹している感じです。

 

 全6曲で、ドラマチックさを突き詰めた結果として?一曲の尺が長めな傾向があります。その中でも比較的コンパクトにまとまっている#2「朝の風景」が聴きやすくて何度もリピートしてしまう。コンパクトでも内容はハードなままで、特にエンディングの「私はなんにもいらない」の繰り返しは聴いてて死にそうになります。いや朝の穏やかなひとときを描写した曲のはずなのになぜこんなにもハードなんだ…(歌詞参照

 

 自分は今まで触れた日本の音楽作品の中ではサディスティック・ミカ・バンドの『黒船』が最強って言葉に一番近いかなーと今まで思っていたんですが(そんな邦楽聴いてるわけでもないんですが)、この『カルメン・マキ&OZ』も相当ですね…。一応、黒船が74年11月リリースなので、こちらの方が後に発表されているのですが、よくよく調べると『カルメン・マキ&OZ』は75年の1月リリースっぽいので、まあほぼ同時期と考えていいと思います。

 

 全曲強いですが個人的にはA面の3曲が特にお気に入り。軽く調べてみた感じだとサブスクにはないっぽいので、まあなんとかして聴いてみてください。自分はツタヤかジャニスで借りたっぽいです。

 

 

 

 

 

 

 

朝日美穂『島が見えたよ』(アルバム)

 『島が見えたよ』という新作アルバムが出たということで聴きました。サブスクって気になった作品すぐ聴けるから便利。。

 

reutopia-music.blogspot.com

 朝日美穂を聴くのは99年の『Thrill March』以来。『Thrill March』は上に貼った記事を読んでジム・オルークがフェイバリットに挙げていた!?という情報からかなり昔に買って聴いた記憶がある。というか自分の過去記事漁るとちゃんと出てくる(記録って大事…)。

 

blog.livedoor.jp

 というかというか実際にネットで検索をかけるとこんな記事がヒットする。どうやら高橋健太郎朝日美穂のパートナーで諸作の製作に関わっている)のブログらしく、この記事によればSAKANA朝日美穂ジム・オルークの関わりはこの人をきっかけにして始まったものらしい。へえ…というかSAKANAの作品にもかかわってたんですね高橋健太郎さん。で、ジム・オルークミュージック・マガジン誌において、その年のベストテンに『Thrill March』を選んでいたようです。そして『Thrill March』製作当時、高橋健太郎ガスター・デル・ソルを聴いていたと…。

 

www.youtube.com

 周辺情報はさておき、作品について。やや奔放なボーカルを中心としたちょっと不思議で軽やかなポップス。エレクトリックな質感の曲の合間にアコースティックな小曲が挟まる構成。

 上で「ちょっと不思議」としたのはなんというか… なんか不思議な聴き心地なんですよねこの作品。エレクトリックな音とアコースティックな音の配分のせいかな?となんとなく思っているんですが。ちょうど半分くらいなのかな。エレクトロ・ポップとチェンバー・ポップの絶妙な配合みたいな感じ? 個人的にはあまり似たような印象の作品が浮かばないです。

 

www.youtube.com

 どちらかと言えばミニマルで渋い…すき間の多く取られたアレンジ・プロダクションですらすらと流れていくのでついリピートしてしまう。いろんなシチュエーションにフィットしそうな良い作品だと思います。個人的にはさわやかな空気の小曲群が好き。オケのアレンジがきれいで楽しい「四つ葉のクローバー」、終盤の展開が美しい「ベーグル・ソング」。3分あたり、Cメロを経由して回帰するAメロはまた印象が変わって聴こえる…。

 

ototoy.jp

 調べてみたら「四つ葉のクローバー」のアレンジにはBabiも参加しているとのこと。いやこの曲はtoi toy toiっぽいなと思ってたんだよね~まさか関わっていたとは…

 

 話は変わるんですけどSpotify版「四つ葉のクローバー」の1:21にぶつっとノイズが入っている気がします(自分だけ?)。意図したものなのかどうかはこちらではわからないですが一応。あと泡沫の個人ブログなので書いちゃいますけどSAKANAの『光線』の再発って高橋健太郎さんの力でなんとかならないのでしょうか(たぶんアーティスト本人に聴いた方が早い)。

 

 追記:

ototoy.jp

 ここまで書いた後に見つけた、柴崎祐二によるインタビュー記事。自分の文章よりこっちを読んだ方がよっぽど作品について掴めると思います。

 

 

 

 

 

 この期間、そんなに作品の数は聴いてないんですけど、微妙に文が長くなったので記事を分割します。この調子でいくならその2は次の休みにアップできるかな?わからんけど…(終わり)