邦楽アルバムマイベスト30

 唐突な遊び企画。邦楽アルバムマイベスト30です。

 

 

※前回のレイドバック~の記事もそうですが、今回の記事も今年の6~7月に大部分が書かれました。いやこっちは8月終わりかな…?

 

 唐突というか、一応流れがあって、発端はこちらのツイ。

 

 

 一応結果も。

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  しばらく前に流れてきて、当時はスルーしてたのだけど、ここ数日(注:今年の8月終わりくらいです)めちゃくちゃ他人の邦楽ベストがTLに流れてくるようになっており、それらを眺めているうちに結局やりたくなってしまった。のでやりました。締切過ぎてっけどな!

 その時の気分が影響しない程度には悩んで決めたラインナップで、自分で決めたから自分的には納得しかない。評価基準はいつものように自分の好み・完成度・ユニークさの3つ……なんだけど、いつもよりもユニークさ、というかオリジナリティを優先してるかも。これは日本からしか生まれないな、ではなく”彼ら”にしか作れないな、という作品。

 とりあえずは現時点でのベスト30ということで、さっそくどうぞ。ひとことコメント付きですよ! 試聴用に貼ってある曲は個人的なお気に入りです。

(順位なしのあいうえお順です。)

 

 

 

 

 

INU『メシ喰うな!』

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 ギター鋭すぎ問題。みんな一度は北田昌宏(ギターの人)でネットを検索したことがあると思っている。ライトサイダー~インロウタキン~305のシャキシャキのアンサンブルで聴かせる流れが良すぎる。

 

 

 

 



岡村靖幸『家庭教師』

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 ジャケットやら歌詞やらの謎のセンスも含めて全盛期のプリンスに匹敵。無敵状態でやりたい放題やっている。

 

 

 

 



小袋成彬『分離派の夏』

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 普通なら盛り上げるであろうところであえて落ち着かせる……みたいな、そういうのにエモを感じる人は聴いた方がいいです。

 

 

 

 



カルメンマキ&OZ『カルメンマキ&OZ』

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 公式の動画じゃないのでアレですが。だまされたと思って一度聴いてみてください。

 ハードロック/プログレッシブ。全曲がゲームのラスボス戦のような雰囲気がある。ボーカルが本当の本当に強くて、初めて聴いたとき思わず大魔王じゃん…とつぶやいた。

 

 

 

 

 


空気公団『くうきこうだん』

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 シティポップ版『スリーアウトチェンジ』みたいな?感じ。山崎ゆかりのボーカルありきではあるんだと思うけどソングライティングが神。音楽ってこれで充分なんですよ。

 

 

 

 



くるり『ワルツを踊れ』

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 オーケストラを迎えバンドサウンドから少し距離を置いた結果メロディーのセンスが爆発してしまったアルバム。まとまりはそれほどでもないが歌(メロ)の良さがオーバーフローしていて並みの名盤では歯が立たなくなっている。くるりって名盤がいっぱいあるんだけど、「くるりにしか作れない盤」という意味ではインディー時代~図鑑、アンテナ、ワルツ~言葉にならない、の盤が強いと思っている。自分の「歌」を持ってるバンドは強い。

 

 

 

 



国府達矢『ロック転生』

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 完全に完成しちゃってるので、何も知らずに聴いたらびっくりすると思う。これ1枚で1ジャンル作ってる感じなのでちょっと規格外。リアルタイムで評価されなかった『Loveless』みたいなもんです。

 

 

 

 



小坂忠『もっともっと』

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 『ほうろう』が有名で、そっちももちろん超名盤なのだけど、オリジナリティで言えばこちらに軍配が上がる。上述の『くうきこうだん』のような必要十分のポップスなのだけど、あちらが街の空気を持つ(公団だからね)のに対し、こちらはやわらかな「農村」の空気をまとっている。「庭はぽかぽか」「大きなけやき」とか、曲名の時点で相当のどかなんだけど、実際のサウンドも思わず居眠りしてしまいそうになるほどのどかである。空想の、理想の農村を音にしたらこんな感じなのだろう。

 

 

 

 



5lack×Olive Oil『50』

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 ヒップホップ…というかポップミュージックの歴史の中でもめちゃくちゃにすごい作品だと思っているんですが、どうなんでしょうか。ヒップホップのファンが今作をどう思っているのか気になる。個人的にはMBDTFやTPABなんかとも余裕でタイマン張れると思っている(作品のスケールがかなり違うので比較しにくいけど)。

 

 

 

 



サザンオールスターズ『バラッド '77〜'82』

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 オリジナリティのある歌心。これに尽きる。日本語詩の音への乗せ方や節回しなど、ユニークな特徴が多い。

 

 

 

 



サディスティック・ミカ・バンド『黒船』

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 一曲一曲の出来もすごいしアルバム全体での完成度もすごい、マジもんのモンスターアルバム。作品の中核を成す中盤のインスト3曲(「黒船~」)は、合計しても6分ほどの長さなのだが、聴き終わるとそれこそ大御所プログレバンドの大曲を聴いたときと同様の満足感を得ることができる。ポップスのキャッチーさ・軽妙さとプログレの重厚さ・エモさを両立させてる時点でプログレというジャンルに納まって(しまって)いるあらゆる作品よりも上です。カルメンマキ&OZと合わせて邦ロックの二大巨塔みたいな印象。

 

 

 

 



佐野元春『VISITORS』

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 ニューヨークに渡って本場の・最先端の音楽を吸収して作り上げられた、という点で山下達郎の『CIRCUS TOWN』と似たような背景を持つ作品。時代の違いもあり、ポップスのエッセンスを吸収してきた山下と異なり、佐野が吸収したのはヒップホップの初期衝動だった。

 都会でもストリートでも映えるバキバキのトラックに乗せてマシンガンのように放たれていく言葉たち。おそらく無数の挑戦の末に生まれた作品であり、作ろうと思って作れるものではないように感じる。あえて言葉にするならシティポップとヒップホップとマシーンファンクの奇妙な融合体。とてもユニークな作品で、孤高という言葉がよく似合う。

 

 

 

 



椎名林檎『加爾基 精液 栗ノ花』

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 外国人に聴かせたい邦ロック暫定ベスト1。林檎のディスコグラフィー上、最も変でユニークな作品。最初と最後の「宗教」「葬列」だけでも聴いてみてほしい。完全に”世界”ができているので…

 

 

 

 



スピッツインディゴ地平線

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 気負って作ったのかどうかはわからないが、結果的にここからなにかを足すことも引くこともできないような完璧な作品ができてしまった。ソングライティング、アレンジ、サウンド、そのどれもが”ちょうど良い”。ユニークな特徴がないため言及されにくいが、とにかく良い作品。

 

 

 

 



曽我部恵一BAND『LIVE』

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 サニーデイも曽我部もそんなに聴いていないのに今作にはスッと入れてしまった。どの曲にもロックのスタンダードのような風格があるのがすごいし謎。たぶんロックが好きな人なら初聴でもこの作品を楽しめるし気に入ると思う。そのくらい「ロックのど真ん中」という感じがあるのだ。観客との愛のある掛け合いも良い。

 

 

 

 



sora『Re.sort』

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 比較的最近知った作品なのだけど、これは邦楽という枠に収まらない、強烈なムードを持ったすごい作品です。これ知ってれば00年代のリストに今作を挙げてない海外のライター全員にマウント取れるよ(性格が悪い)。ツイッターやってて良かった案件の一つ(ツイ経由で知ったので)。

 

 

 

 



冨田ラボ『Shiplaunching』

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 由緒正しいはっぴいえんど~ティン・パン系譜のシティポップと渋谷系とJ-popを完璧な形で融合させた作品。邦楽という名のめちゃデカい樹になっためちゃデカい果実のような作品。今年初めて聴いたのだけど、今まで聴いてなかったことに申し訳なさすら感じた。シティポップと渋谷系とJ-popのうちどれか一つでも好きなら聴くべき。

 

 

 

 



中村一義『金字塔』

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 ビートルズ譲りのポップネスを独自の節回しによってグリグリこねくり回したこんがらがったポップで、ひっかかりの多いメロディーには異様な中毒性がある。曲のポップさと歌詞の哲学志向のギャップが生み出すエモさも特筆すべき。いっしょに歌って、いっしょにこんがらがろう。

 

 

 




七尾旅人『雨に撃たえば...! disc2』

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 上の作品と同じく、圧倒的にユニークで完成された1stアルバム。ジャズとオルタナティブロックを足したようなサウンドとありのまま突っ込んでくるフリーキーなボーカルが耳を惹くが、もっとも注目すべきは他よりも一段ドラマティックなソングライティングであり、それは特にアルバム後半(具体的には「コナツ最後の日々。」以降)で発揮される。 どの曲も映画一本分に匹敵するような濃密さがあり、そしてどの曲も終わり方がとてもすばらしいのだ。「フェードアウトで終わる曲」の完成形がここにある。

 

 

 

 

 

七尾旅人『ヘヴンリィ・パンク: アダージョ

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  よりエレクトリックなサウンドに寄った2作目。ベスト盤的に良曲が詰め込まれたディスク1も良いが、まるでオリジナルのミックスCDのような、一枚を通して大きな流れを作り上げたディスク2がすさまじい。突き抜けたところはないが、どこまでも丁寧にオリジナルの音世界を作り上げている(これほど「完璧」という言葉が似合う作品も珍しい)。特に終盤、「完璧な朝」~「「生涯の秘密」」の流れの良さは筆舌に尽くしがたい。

 

 

 

 

 

 

七尾旅人『ひきがたり・ものがたり Vol.1 蜂雀 (ハミングバード)』

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 これで七尾旅人は3枚目ですけどぼくは正気です。極限までそぎ落とされた、ミニマルな弾き語り。Joanna Newsom(『Have One On Me』)の語り部的な歌・曲とGrouperのミニマルなスタイルを足したような音楽性。ハマってくると#2「月の輪」後半(4:40~)や#5「まほろば」後半(6:50~)の超~~~シンプルなギターの伴奏だけでエモくなれる。ここまでの3作全て違うスタイルでの傑作で、本当に天才以外の形容ができない。Spotifyないっぽいので頑張って音源入手してください。

 

 

 




ナムコ神前暁)『ことばのパズル もじぴったん おりじなるさうんどとらっく』

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 クリック・グリッチ通過後のキメの細かい00年代的エレクトロニカ渋谷系を組み合わせた、はちゃめちゃにポップなサウンドトラック。神前暁の、メロディーメイカーとしての資質が遺憾なく発揮されているが、今作ではそれと同じくらい、楽曲に合う音色を選び取るセンスが冴えわたっている。よく練られた音色は一音で≒一瞬で空気を塗り替えるものだ。親しみやすいエレクトロニカとして最高峰の逸品。

 

 

 

 



はちみつぱい『センチメンタル通り』

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 ザ・バンドのアーシーでレイドバックしたサウンドを咀嚼し、日本風?に昇華させた一枚。編成にはヴァイオリンとスティール・ギター(小坂忠とFour Joe Halfより駒沢裕城が参加している)が加えられ、サウンドをよりふくよかにしている。同時期の『HAPPY END』と共に、当時もっとも豊かなサウンド・プレイが詰まっている。

 

 

 

 



はっぴいえんど『HAPPY END』

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 バンドの解散が決まった後に、アメリカはハリウッドに渡り録音された作品。サックスやピアノなどが大胆に導入され、より緻密に複雑になったアレンジはどちらかというと「ロック」というよりは「ポップ」を志向したものと言える。その後の荒井由実シュガー・ベイブへと続く、「シティ・ポップ」の礎を築いた作品。3枚あるバンドのオリジナル・アルバムの中で最もオリジナリティがあり、音楽的にも豊かな作品で、個人的には不動の最高傑作。どうしようもなくポップなアレンジと(録音環境も影響したのか)どこか醒めたような空気感のコントラストに惹かれる。

 

 

 

 



Pizzicato Five『女性上位時代』

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 抗うことの難しい、暴力的なまでに機能的なトラックに蠱惑的な女性ボーカルを被せ、おしゃれと悪ふざけ半々の遊び心を加えて混ぜ合わせた作品。悔しい(?)のは遊び心と同等以上の美意識が作品にスムースな流れを作っていること。序盤の「私のすべて」~「お早よう」~「サンキュー」の流れを聴いてノックアウトされない人がいるだろうか。

 

 

 

 



フィッシュマンズ『空中キャンプ』

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 収録されたキラーチューンの数やらアルバムとしてのまとまりといった指標では他の作品に比ぶべくもないが、そんな基準なんて屁でもないというほどに独特なムードを持った作品。似た空気の作品が本当にないのだ。この一点だけでも取り上げるに足る価値がある。

 

 

 

 



Flipper's Guitar『ヘッド博士の世界塔』

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 今ではまともな方法では流通できないような、サンプリングを大胆に使ったこんがらがったポップ。派手なサウンドに目が行くが、本作の注目どころは充実したソングライティングで、全曲キラーといった具合。全ての曲がその時代のテーマソングとなり得る強度を持っている。

 

 

 

 



山下達郎『SPACY』

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 1st『CIRCUS TOWN』での経験を活かした完璧な側面と、ハンドメイドで内省的な側面が同居した不思議な味わいの作品。B面、「アンブレラ」以降のうっとりするような美しい流れをぜひ体験してみてほしい。

 

 

 

 



憂歌団『生聞59分』

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 粘っこいボーカルと粘っこいスライドギターの極上の絡みが堪能できる一作。レイドバックしたリズムに乗せてギターやボーカルが自在に伸縮する「シカゴ・バウンド」、せーのでみんな駆けだす「パチンコ~ランラン・ブルース」と、両極とも言えるスタイルを行き来するバンドの演奏力がすさまじい。木村充揮の全身から絞り出しているようなボーカル・パフォーマンスは邦楽史で見てもトップクラスにすばらしいものだ。

 

 

 

 



rei harakami『Red Curb』

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 ここまで奔放で躍動的な電子音は聴いたことがない。音も曲も自由にあたりを跳ね回っていて、その様子を聴いているとこちらも元気になってくる。リズムとメロディーが一緒になってじゃれあっているような音楽。

 

 

 

 

 はい、自分のベストはこんな感じです。以下ではTLで見かけておもろいなと思った個人のリストを貼っておきます。いやーまだまだ聴いてない作品いっぱいあるなあ…

 

 ベン図。ベスト100、みたいに限定すると論理積 (AND)の部分だけが残ることになる。一人の投票を一つの集合として、垂直方向に積み重ねていくイメージ?

 

 

 

 わりと近い世代だと思うけど一枚も被ってなくておもしろい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わり。今年は2020年でキリもいいので……また5年後10年後とかにやって比較するのもおもしろいと思います。投票制のランキングはファンの自主性に任せて、雑誌やらのメディアは投票制ではない意志のあるランキングを作ってくれよな!(投票制やってもいいけどオマケ扱いにしてくれ)