シティ・ポップとかレアグルーヴの観点からの再評価が著しい大貫妙子のソロ2nd。今更聴いています。
フュージョン・クロスオーバー全盛の1977年に発表された作品で、実際それらのサウンドを意識して製作されたらしい(Wiki情報。というかこの段で出てくる情報は全部Wikiから得ました)。76~77年にどういう作品が出ていたかというと、Weather Report『Black Market』『Heavy Weather』、Jaco Pastorius『Jaco Pastorius』、Al Di Meola『Elegant Gypsy』、Return to Forever『Romantic Warrior』……もう錚々たる作品が同時代に生まれていたんですね。そして本作もそれらに並ぶような音楽性を備えているわけです。
ということで本作の基本的な音楽性はポップスとクロスオーバーを組み合わせた独特なもの(=シティ・ポップ)です。ボーカル・歌とバックの演奏が曲中でほぼ対等に扱われているのが特徴で、このことが海外のリスナーにも本作がアプローチする要因になっているように思います。
#3「何もいらない」は後半に長いインストパートがありますがここはもう完全にフュージョンだし、#6「Law Of Nature」にいたってはジャズ・ロックですね。プログレやってたバンドがフュージョンに手を出したときのあの感じがある…(個人的にはCamelなんかを思い出す)。#4「都会」はStevie Wonderの影響があるそうだけど個人的にはMarvin Gayeを連想します。というかイントロが「What's Going On」に似てるんだよな…。いやたしかにビヨビヨしたシンセはStevieなんだけど。
もうエレピとかベースとか各楽器の鳴りがフュージョンのそれなんだよな。
ただ、クロスオーバーやフュージョンの熱心なファンではない自分からすれば、もうちょい歌で突き抜けてほしいな~なんて思ってしまうのも事実。たぶんシュガー・ベイブのようなキラキラしたポップスを期待して聴くとちょっと肩透かしみたいになると思います。ちょっと物足りないな…と感じたら、歌に向けるそれと同じレベルでバックの演奏にも耳を傾けてみましょう。
とにもかくにも本作はシティ・ポップというジャンルにおけるめちゃデカいマイルストーンの一つであって、聴いておくとここからキリンジ・冨田ラボやLampまで一本の線が伸びていることがはっきりと実感できるようになります。シティ・ポップを体系的に捉える際に必須となる作品って感じですね。
どうでもいいんですけど、自分がフュージョンにハマり切れないのは、そのサウンドにどうしようもなく室内感を感じてしまうからかもしれないです(メロディー・曲調は爽やかなのもあるんですけど)。アコースティック楽器のみで演奏しなおしたらかなり印象変わる気がする…