お気に入り曲まとめ (2020.6) その2

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 6月のお気に入り曲まとめ、の洋楽編です。 

 

 

DJ Python『Mas Amable』(アルバム)

 ニューヨークで活動するプロデューサーの新作。正直、レゲトンディープレゲトンという音楽ジャンルを掴めていないのでそれらの言葉を音楽性の説明に使えない。とりあえず自分の語彙で表現するなら、IDM風味のミックス音源みたいな感じ? 全編がシームレスに繋がっており、一つのDJミックスのように聴ける。ビートはかなり強めで、踊れるようになってはいるんだけど、けっこうサイケデリックな演出が多くて、真面目に聴いているとちょっとクラクラしてきます。

 ハイライトはおぼろげにコードの浮かび上がる中盤の「oooophi」と終盤の「Juntos」~「mmmm」の流れか。ぶっちゃけかなり地味な作品だけど、流れが非常にスムースなためずるずると最後まで聴いてしまう。個人的には新しさも感じないしそんな推しの作品というわけではないんだけど、結局通しで何回か聴いちゃってるので、なんというか負けた感じがする(?) やっぱ滑らかさは滑らかさで一つの武器だな…

 

 

 

 

 

 

 

Scientist / Guided Beam、Lazer Pulsar、Mars(曲名の表記揺れあり)

 from『Scientist Meets the Space Invaders』

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 6月の前半かな? 本格的に梅雨に入る前、急にめっちゃ暑くなったことがあったと思うんですけど、そのときに聴いた作品。東京に来てジャニスを利用し始めてからちょっくらダブ・レゲエを聴いてみるか…となったことがあり、そのときに調べたアーティストの一人がScientist。まあ調べたといってもどの盤が良さそうかを調べただけで、体系的な知識はゼロなんですけど…

 ダブ・レゲエって作品を自分の足で探さないとダメなジャンルなのかな~と思っているんですけど、Spotifyで検索するとけっこうヒットするので嬉しくなっています。この盤については……本当にジャンルの初心者なのでなんも言えねえ……。そも作品を数聴いてないので比較も比喩もできないすね。。でもまさにダブというか、音の処理が意味不明で、本当に音で遊んでいる感じがするのが良いと思います。

 自分的にはそもそもダブやらレゲエを楽しめるようになったのがここ数年という感じです。だからそれ以前に触れていたフィッシュマンズとか、それこそMassive Attackとかは、おそらくぜんぜん楽しみ切れてないんでしょうね(この曲よくわからんな~ってのがいっぱい思い当たる…)。てかMassive Attackの作品日本でもめっちゃ名盤として紹介されてるけどさ、「この作品はダブ・レゲエを通過してないとよくわかりませんよ」って注意書きしておいてほしいよね、してほしくないですか? ぜんぜん意味わからんまんま聴いてたんだもんな~まあそれでも(ダブ・レゲエを知らなくても)良いと思える部分はあったんですけど…。とりあえず、また暑くなってきたらこのジャンルはゆっくり開拓していきたいですね。。

 ダブ・レゲエってジャンル、みんなどのくらいのタイミングで触れてるのかなあ…

 

 

 

 

 

 

 

Young Marble Giants / Posed By Models、The Clock、Clicktalk、Sporting Life、Cakewalking、Ode To Booker T

 from『Colossal Youth & Collected Works』

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 『Colossal Youth』は言わずと知れた名盤で、自分も学生の頃に飽きるほど聴いたのですが、久しぶりにSpotifyでこのアルバムを流したら見知った曲の後に知らない曲が続々と続いて……。確認してみたら、2007年にDominoから『Colossal Youth & Collected Works』という、『Colossal Youth』の増補版のようなものがリリースされており、Spotifyに登録されているのはこの『Colossal Youth & Collected Works』のようです(登録名に「 & Collected Works」と付いていないので紛らわしくなっている)。Disc2に当時アルバムに収録されなかったいろんな曲が収録されているようで、今回は図らずもそれらの曲に触れることになったわけですね。

 

参考リンク:

ameblo.jp

 

 Disc2の後半…11~16曲目は『Salad Days』と呼ばれる、『Colossal Youth』のデモ版のような位置付けの作品の曲で、こちらは『Colossal Youth』とある程度曲が被っているので、個人的にはそれ以前の1~10曲目が聴きどころとなります。

 1~10曲目は『Final Day』『Testcard E.P.』という二作品からの曲で、インストが中心、曲もアルバム曲よりはやや短めで少しスケッチ的な部分もあるのですが、普通~に良いです。スケッチ的な軽さがいい方向に作用してるのかな? というかもう彼らの場合はスタイルが確立されてて、それがめちゃくちゃ良いので、ちゃんとそのスタイルで作られていればもう全部良いみたいな感じ…

 

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 一応、彼らのスタイルを改めて自分なりに表現するなら、ミニマルなスタイルのポスト・パンクとドリーム・ポップの融合、という感じになります(言ってしまえばWireがヴェルヴェッツの「Sunday Morning」を演ってる感じ)。これらのジャンルが好きな人、あるいは自分みたいにYoung Marble Giantsは好きだけど『Colossal Youth』しか聴いたことないって人は今作はおもしろく聴けると思います。

 

 

 

 

 

 

 

Mylo / Valley Of The Dolls、Sunworshipper、Muscle Cars、Guilty Of Love、Emotion 98.6

 from『Destroy Rock & Roll』

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 もうめちゃくちゃキャッチー……

 スコットランドのプロデューサーによる唯一のアルバム。エレクトロニック系のメディアで評価が高いので聴いてみたら、その挑発的?なタイトルとは裏腹に柔らかであたたかなサウンドに驚いた。

 ジャンルとしてはハウス、ディスコ~ダウンテンポかな? ファットなリズム隊にロマンチックで煌びやかなウワモノが乗る。全編通してメロディアスでほとんどの曲が3~4分台と、とにかくキャッチーで人懐っこい作品。Daft Punkの『Discovery』とは音楽的にもムード的にも通じるところがある。

 

bldblg.seesaa.net

 ネットで見つけたこの記事が作品についてとても詳しく書いているので、まずはこちらを読んでみることを勧めます。この作品の背後にある文脈をわかりやすく解説してくれています。こちらの記事によれば『Destroy Rock & Roll』という煽情的なタイトルは80年代のポップスに対する愛情の(ひねくれた形での)表出なのではないか、とのこと。

 実際、アルバムのタイトル曲である「Destroy Rock & Roll」ではその想いの深さを示すかのように80年代のポップスターの名前が大量に、機械的に読み上げられたりする。その様子はさながらLCD Soundsytemの「Losing My Edge」のようだったり……。

 とても質の高いアルバムだと思います。たぶんブックオフとかで投げ売りされてると思うので見かけたら手に取ってみては。

 

 

 

 

 

 

 

Perfume Genius『Set My Heart On Fire Immediately』(アルバム)

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 アメリカのSSWの5枚目?のアルバム。自分は最初の2枚は聴いてたけどその後の2枚(『Too Bright』と『No Shape』)は聴いてません。毎度どのメディアでも高い評価を受けている印象なのだけど、今回とうとうピッチで9.0点を獲得していたので聴いてみた。

 結論:悪くない……よくまとまっているし、どの曲にもそれぞれの良さがあって……でも正直、個人的には毒が足りないかな、と思いました。よくも悪くも優等生的な。

 かなり久しぶりに聴いたアーティストなんだけど、当時(初期2枚)からそんなに音楽性が変わっていなくて逆にびっくりした。多少今作の方が肉が付いているように思うけど、基本は繊細なベッドルーム・ポップ。……なので、もしかしたら今作は原点回帰的な作品なんだろうか。そう考えると上半身裸で特にポーズも取らずに写っているジャケットは、「素の自分を見せますよ」という意味だったりして…

 

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 #5「Leave」#8「Moonbend」など、室内楽的なアレンジの光る控えめで幻想的な曲が、ポップな曲に挟まれるようにして配置されている(アルバムのインタールードの役割も持たせているのかもしれない)のだけど、個人的にはこれらの曲の方が印象的に聴こえた。聴いていると深い森の奥へ誘われているような気持ちになります。こういう曲だけでEPとか作ってくれないかな。

 

 

 

 

 

 

 

Lorenzo Senni / Happic、Superimpositions

 from『Superimpositions』

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参考リンク:

note.com

 

 イタリアを拠点に活動するプロデューサーの2014年作。自分も(おそらく)多くの人と同様にFact誌の年間ベストで知った口で、当時はYouTubeで数曲つまみ聴きして終わっていたのですが、今回改めてアルバム通してまともに聴きました。

 点描的トランス(Pointillistic Trance)と呼ばれる、小さな点のような音の集まりで楽曲を表現するスタイルで、まあせわしない音楽です。自分がこういう「点描○○」と呼ばれるスタイルに弱いのはちゃかぽこ感(自分用語)があるからですね。ポコポコポコポコ……っていう感じの音楽に弱い。

 「点描○○」というスタイルで括られるアーティスト・作品の中では特に高揚感のある作品だと思います。ストイックに引き締まった内容で、30分弱の時間をテンポ速くテンション高く駆け抜けていく。ハイパーというか、エクストリームな領域に片足つっ込んでる感じです。今作を聴いた後では前作『Quantum Jelly』はどうしても冗長に聴こえてしまう(それだけ進化洗練させたということですが)。

 しかし彼がこれほど評価されるのなら、似たような音楽性のStellar OM Sourceももっと評価されても良かったのでは…と思ったり。まあ彼女の場合は2013年の『Joy One Mile』以降アルバムが出ていないというのが大きいのかもしれない。ちなみにFact誌の年間ベストでは2013年の#6が『Joy One Mile』で2014年の#5がこの『Superimpositions』なのでわりと一貫性がある感じです。

 今作のジャケットですが、近くで見ると細か~い縞模様があって、音楽性を絶妙に表現してる感じでいいと思います。

 

 

 

 

Carl Craig『More Songs About Food and Revolutionary Art』(アルバム)

 デトロイト・テクノの強い人、Carl Craigの本人名義による2nd。1997年リリースなんだけど、勝手にもっと古い作品だと思っていた。リスニング寄りのデトロイト・テクノで、アンビエント要素もありかなり聴きやすい。デトロイト・テクノという言葉が使われたときにはこの盤のサウンドを想像しておけばいいように思う。#6「Dreamland」以降がこのアルバムの本領だと思う。印象的なアルバムタイトルはTalking Headsの2nd(『More Songs About Buildings and Food』)を元にしていると思われる。

 

 

 

 

 

 

 

Enon / Count Sheep、Window Display、Leave It To Rust、Sold!、High Society、Diamond Raft

 from『High Society』

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 これはあまりジャンク感のない、ただの名曲です。

 

 イーノンって読むのかな? 存在は知っていたけどジャケットからなんとなくイロモノみたいなイメージを感じていて聴かずにいた……んだけど実際に聴いてみたら良かったです。なんというか、ちゃんとソングライティングしている。男性のボーカルも好みだし……え、まともなバンドじゃん!(失礼)

 

 調べていたらなんかいろいろ情報が繋がっていったので、ちょっと備忘録としてメモ残しときます。

・バンドの創設メンバーであるJohn Schmersalは元Brainiacのギタリスト。Brainiacがボーカリストの死によって解散した後にEnonを結成。Caribouのライブバンドのメンバーだったりしたらしい。

 Enonのサウンド・アートワークのジャンク感にはBrainiacという由来があったんですねという、納得。

・1stの『Believo!』リリース後に日本人のToko Yasudaがメンバーとして加入。Toko Yasudaはそれ以前にはThe Van PeltやBlonde Redheadといったバンドに在籍していたらしい。Enon解散後はSt. VincentのバンドメンバーやSleater-Kinneyのツアーメンバーとして活躍したという。PLVS VLTRAやKotokotoといった名義でソロ作も出しているとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

Various『Shangaan Electro - New Wave Dance Music From South Africa』(アルバム)

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参考リンク:

www.ele-king.net

 音楽性についてはリンク先参照。めんどい人のために引用しておこう。

ギターやベースを一切使わないというのが一種のポリシーらしく、基本の楽器といえるマリンバやそれを模したらしきドラム・マシンの音がまずはとにかく軽い。コーラスはズールーと同じくイメージ通りアフリカのそれで、リード・ヴォーカルが入る曲もテンポが速すぎてコーラスがエコーしているようにしか聴こえない。ほかにはヴォイス・サンプルやオルガンが多用され、ありとあらゆる軋轢を避けるようにしてサラサラとすべては滑っていく。そう、音楽が「滑っていく」という表現がピッタリかも。

プロデューサーのNozinja(読めない)がライナーで記すにはヒップホップではなくディスコであり、いわゆるアフロ・ポップとも関係はなく、とにかく大事なのはテンポが速いこと。

 こういうちょこまかした音楽好き…。てかめっちゃユニークじゃん、10年代の200枚に入れておけば良かった…。聴いてて連想したのが前に紹介したドラゴンハーフのサントラのドタバタギャグ音楽。その音楽について、当時は「小学校の運動会を4倍速くらいで見てる感じ」なんて書いたんですけど、その感じがShangaanにも当てはまる。まあドラゴンハーフにははっきりとしたポップス的曲展開があるのに対して、Shangaanは基本的にループで構成されているので違いはあるんですけど、でもなにかを倍速で見ているかのようなシュールな空気は共通しています。変だよね。なんか笑っちゃう。

 軽やか……というか軽すぎてあらゆる運動が空回りしているような音楽。これを流しながら作業すれば爆速で進むかもしれないけど、たぶんミスもめっちゃ増えると思う。まあでもおもしろくて笑える音楽って貴重ですよね。。

 

 

 

 

 

 

 

DJ Sprinkles『Skylax House Explosion』(アルバム・DJミックス)

 SKYLAX RECORDSのバンドキャンプページが開設されましたよ~これでまたTerre Thaemlitzさんの作品が気軽に聴けますね~と友人がツイートしていたので、SKYLAXから出ている自分の好きなミックス作品(『Skylax House Explosion』)のページを見に行ったら、なんとミックスされていない、原曲の状態でそれぞれの曲が収録されていました(つまりコンピレーションみたいな感じになっています)。

 これはこれで、ミックスされた音源と聴き比べることでTerre さんがミックスにおいてどういうことをやっているのかが分かるので、価値があるリリースだと思います。自分の好きな7曲目の「Bad You」、元はこんなにテンポ速かったんですね…。そうか、テクノ・ハウス系の楽曲なら元よりもテンポ遅らせてミックスしてもいいんだな~…。

 流れでまたミックスを通しで聴いたので、メモ。ミックスの全体のハイライトは#3「John Blue」、#7「Bad You」、最後の#12「Gwen's Song」~#13「Soleil Mauve」の流れだと思います。これらを意識しておくとミックスをより楽しめるようになるかも? すごく良い作品なのでぜひ音源を入手して聴いてみてください(CDは定価で簡単に入手できると思います)。

 

 

 

 

 

 6月は仕事でめちゃくちゃ車を運転していて(1日3~4時間くらい運転していた)、しかもほぼ自分一人だったので、もうずっと大音量で音楽を流していました。その結果6月は比較的いろんな音楽に触れることができたのですが、今月からはまた通常営業に戻るので……かなり音楽聴く量が減ると思います。まあそんな感じです。

 今回は取り上げませんでしたが、6月に触れた中ではBlake Millsがいいなーと思っていて。ただ、かなりさりげない音楽でまだ消化できていないので、7・8月にまとめられたらいいなと思ってます。

 早くコロナの流行が終わるといいですね。