お気に入り曲まとめ (2020.6) その1

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 調子に乗って書いてたら長くなりました。 

 

 

 長くなったので洋・邦で分けました。その1は邦楽編です。取り上げる作品数はそんな多くないんですけどね… 

 

 

 

冨田ラボ / Shiplaunching、プラシーボ・セシボン、Like A Queen、アタタカイ雨、Launching On A Fine Day、ずっと読みかけの夏、恋は傘の中で愛に

 from『Shiplaunching』

 

参考リンク:

www.sonymusic.co.jp

 

 日本の大物アーティストのプロデューサーとして高名な冨田恵一のソロプロジェクト「冨田ラボ」の2ndアルバム。なんかさも知っているかのように書いてますが今調べました。え、というか初期のキリンジって冨田恵一プロデュースだったんですね。2003年頃まではプロデュースしていたらしい(5thの『For Beautiful Human Life』まで)。自分はキリンジLamp経由で比較的最近触れた人なので知らなかったです(まだ『ペイパードライヴァーズミュージック』しかまともに聴けていない)。こんなリンクがあったんですね。。

 冨田ラボについてもそんなに触れておらず、ちょうど2003年発表の前作もとい1stの『Shipbuilding』だけ聴いていました。その時点で(こんな完璧に作り込む人いるんだ~もう日本版Steely Danじゃん…)と思っていたのですが、今作を聴いたらさらにその思いが強くなりました。

 完璧です…。隙がない。小さなところから大きなところまで、過剰と感じられる直前まで詰め込まれたアレンジはもはや音のフルコースのよう。華やかで煌びやかで、しかも爽やか。全部盛りといった趣なのに胃にもたれる感じがなくて、するするといけてしまう。いや、すごいですね……プロのプロデューサーというかアーティストの中でも頭ひとつ抜けた存在のように思います。

 アレンジに負けず劣らずソングライティングも良くて、それこそキリンジを彷彿とさせるような、細かく滑らかにコードが移っていくスタイルなのですが、聴きどころがはっきりしていてよりキャッチーになっていると思います。Lampとかキリンジみたいな滑らか~に展開していくスタイルって、滑らかすぎてサビなどの盛り上がる部分がちょっと掴みにくかったりする(それも良さではある)のですが、冨田ラボはそこのところがものすごくバランスが良いというか、滑らかだけど盛り上がりがしっかり掴める感じになっているんですね。ここは本当に、プロデューサーとしてのバランス感覚が発揮されている部分だと思います。

 なんかもうべた褒めって感じですけど…いやもう個人的には普通に満点という感じなんで。。「完璧」という言葉が似合う音楽ですね。いや前作も完璧だと思ったんだけどなぁ~…。シティポップというタームにはもうこの作品で終止符打たれてるんじゃないか、と思ってしまう。高橋幸宏やら大貫妙子吉田美奈子も召喚してるし…。あとケミストリーのボーカルめっちゃいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

加賀美ハヤト、夢追翔、緑仙 / Playtime Magic

笹木咲 / 煽動海獣ダイパンダ

月ノ美兎 / アンチグラビティ・ガール

 from『SMASH The PAINT!!』

www.youtube.com

 

参考リンク:

www.ichikara.co.jp

 

 バーチャルライバーグループ・にじさんじのオリジナルフルアルバム第二弾『SMASH The PAINT!!』が3月にリリースされまして(ストリーミング解禁は5月)。ツイで委員長やMONACAの公式アカウントからこのアルバムの情報が流れてきて、おっ、おれの好きな石濱 翔Avec AvecARM (IOSYS)が参加しとるやんけ…ということで期待していたのですが、実際アルバムは期待していたよりも良かったです。やるじゃんにじさんじ

 一般人よりも表現力はあるけれどもプロには及ばないみたいなボーカルで、ちょっと聴き苦しいところもあるかもしれませんが、これはこれで聴いていて楽しいので問題なし! ファンならVの普段は見れない(聞けない)一面が見れてむしろもっと楽しめるのでは。

 楽曲は個人的にはちょっと惜しいな~ってのが少しあって、中でも多いパターンがAメロBメロはすごくいいけどサビで上がり切れない、というパターン。うーん、惜しいな~という感想しかないのだけど……うん…

 

 個人的なヒットは加賀美ハヤト、夢追翔、緑仙という男性3人組による「Playtime Magic」と笹木咲「煽動海獣ダイパンダ」。

 

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 上にも貼ったけど間奏のラップ~大サビの流れをちゃんと聴いてほしいのでフル版も貼っておきます。一回通しで聴いてほしい…

 

 Avec Avecプロデュースの「Playtime Magic」は程よく音のすき間の取られたちょっと大人の真夜中ファンク、といったような曲で、エレピがめちゃくちゃいい味を出しています。サビのフレーズの後ろのほう、だんだん下がっていくところがヤバい…! 3人のボーカルもイケボですごく良くて、特に2番が終わった後の間奏部分のラップの掛け合い~大サビへの流れが激アツ。ぶっちゃけ3人ともVとしては追っていないのでどのパートが誰なのかわからんのだけどめっちゃいい。無茶ぶりされた先輩のラップパートのリリックがすごくポジティブでさ、この流れで大サビいくともう上がりすぎて泣いちゃうんだよね。どちらかと言えば元気いっぱいな曲が多いアルバム内では(多少)大人の余裕を感じさせるこの曲はかなり存在感があります。

 

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 通しで聴いて、2:39まで到達してください。

 

 やしきんプロデュース「煽動海獣ダイパンダ」これは単純に曲が好み。でも他の曲よりAメロBメロサビ~の流れが滑らかな気も。8bit的な、ゲームを連想させる音や水の音が入っていて耳を引く。個人的にめちゃ刺さったのが楽曲中盤、クイーンみたいな掛け合いとその後の間奏を終えて、一度だけ挟み込まれる「煽れば尊し楽し 笑えば尚良し嬉し」というフレーズ。ここがね~すごく良くて……もはやここを印象的に聴かせるためにこれまでの全ては存在していたのでは、なんて思ってしまうほど。こちらもVとしては追ってないので、ぶっちゃけ歌詞がなにを表しているのかわからないんすけどね…

 

 アルバム終盤はにじさんじでも最も有名?な樋口楓静凛月ノ美兎が1曲づつ歌っているんですが、この3曲は他の曲と比べると遊びがなくて”ガチ”な感じがします。Vとしてというよりは一人の歌手として勝負している感じ。たぶん一般受けがいいのはこのラストの曲群かなと。

 

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 ただ、委員長こと月ノ美兎の「アンチグラビティ・ガール」だけは”ガチ”でありつつ、一般向けという括りも突き抜けてすごいところ(たぶん宇宙)まで飛んで行っている感じがします。超~~~エモい。エモすぎて聴くたびにエンディングになってしまうので気軽に聴けない。てか委員長歌うまっ。びっくりした。声・歌唱と曲がめっちゃ合っている…。この曲に関してはもうお手上げというか……現時点でのV界のベストソングであり今年のベストソングでもあるように感じます。強い。いやこのレベルできちゃったら次の曲が続かなそう~~~(がんばって~~~)。

 異様に長くなったのでここらで切ります。『SMASH The PAINT!!』、いいアルバムでした。

 

 

 

 

 

 

 

Sugar's Campaign / City Pop

 にじさんじ繋がりでavec avecの話。「Playtime Magic」聴いてAvec Avecの音久しぶりに聴いたな~と思ってなんとなくSpotifyで検索かけたら「Avec Avec Works」なる公式のプレイリストを発見。

 自分はなんだかんだでアルバムとかEPとかのまとまりで作品に触れることが多いので、あるアーティストに一曲提供しました!みたいな単発の仕事はあまりフォローできてないのですが、そういうときにこうしたリストがあるととても助かります。やっぱ追えてないだけで活発にプロデュース業してたんだな…。

 

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 いっぱい曲がまとめられていますが今回は一曲だけ。Sugar's Campaignとして去年発表したシングル「City Pop」。全体的にややノスタルジックな質感のコンパクトなポップス。ベース、ドラム、シンセ、ボーカルというシンプルな編成で曲もシンプルなのですが、めちゃくちゃいい…。うたものとして完璧。やっぱこういうちょっと懐かしい感じのポップスを書かせたら右に出るものはいないですね。

 ボーカルはあきおで、bo enと組んでマルチネから出した作品が個人的には印象に残っているんだけど、調べてみたら前からSugar's Campaignのボーカルをたびたび担当していたらしい。というかアルバム出してた!(しかも2018年…) 気づくの遅っ

 そしてあの冨田ラボとAvec Avec・あきおが既に繋がっていたことを今知る。2016年作の『SUPERFINE』収録曲「笑ってリグレット」にてあきおがボーカル、Avec Avecが作詞を担当していたらしい。うわーん。さすがの情報感度という感じ。まあSugar's もあきおも冨田ラボもゆっくり聴いていこう…。

 

 

 

 

 

 

 

井手健介と母船 / 妖精たち、ロシアの兵隊さん、ポルターガイスト、ささやき女将、ぼくの灯台

 from『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists』

 どのくらいの人が待ち望んでいたのかわからないけれど、とにかく出ました、待望の井手健介と母船の新作。これがすごく良くて、もう一月くらいずっと頭の中で今作の曲が鳴り続けています…

 

参考リンク:

www.ele-king.net

 

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 キーワードは「グラム・ロック」で、艶のあるサウンド、ケレンみのあるプレイ・パフォーマンスが味わえる。#3「ロシアの兵隊さん」冒頭のギターの鳴りがもう、これだよこれ~!ってなる。グラム・ロックってこういうサウンドだよね!(あとこの曲はボーカルもグラムグラムしていて良い)1stにも収録されていた曲ですが、ここまで見事に生まれ変わるとは…

 前作とは打って変わってボーカルはいろんなスタイルが試みられていて(多重人格みたいになってます)、正直変!って感じることもある(1曲目の「イエデン」から度肝を抜かれます)のだけど、それが楽曲に見事にハマっているものだから手に負えない。聴けばなるほど「井手健介」じゃなくて「エクスネ・ケディ」が歌っているんだなということがわかる。

 このアルバムにはとにかく「歌心」があって、それが個人的には一番の魅力になっています。今年触れた作品の中でダントツに「歌」が良い。それこそグラム・ロック期のデヴィッド・ボウイを思わせるような強い引力が備わっていて、どうしようもなく惹きつけられてしまう。

 個人的にツボったのが#4「ポルターガイスト」で、山賊みたいなボーカルとロマンチックなストーリーを感じさせる歌詞のギャップで萌え死んでしまう。すごーくシンプルな曲なんだけどそのシンプルさがまたドラマを引き立てていて… 大サビで入ってくるアコギのジャカジャカ…が聴こえてくるともう涙腺が崩壊してしまいます。常に幽霊みたいにひゅう~と鳴らされているスティール・ギターもすごく雰囲気が出ていて、これが曲の終盤になるとまるで幽霊が泣いているかのように聴こえてくるんですよ。まあ半分くらいは聴き手というかぼくの妄想なんですけど…

 とにもかくにも痛快な作品です。自然体で作ったら穏やかな曲ができてしまうタイプの人なのではと勝手に思っていましたが、こんなロックな作品になるとは。。こういう(良い意味で)軽薄で退廃的な音楽って昨今珍しいかも? すごくフレッシュに感じました。

 

 

 

 

 

 

 

Banjo Kanna(Kusegumi) / Endroll、Satellite、露烟の森、ぼうのいぬのシャチ、はじまりの朝

 from『kusegumiku』、『Fieldscapes』

 

 

 バーチャルマーケットのBGMで知った人が過去作品をサウンドクラウドにアップしました。聴いてみたらすごい良かった。AメロBメロサビAメロ~みたいなよくある形式ではなくAメロBメロCメロDメロ~みたいな感じであまり繰り返しがなく、言うなればロードムービーで景色がどんどん移り変わっていくかのように曲が展開していく。またそれと同時に、曲全体をかけてゆっくりと盛り上がっていくことが多い。

 

 その特徴がよく出ているのが「露烟の森」という曲で、ちょっとした組曲、あるいはDJミックスのようにどんどん曲が展開していく。聴いていると不思議な森に迷い込んだような気分になります。

 そのような曲が集まってできているため、『Fieldscapes』というアルバム自体にもロードムービーのような感じが備わっています。ポップアルバムでもあるのですが、架空の旅行のサウンドトラックのようでもあります。というか『Fieldscapes』というアルバムタイトルはこのどんどん移り変わっていく音楽(景色)と象徴しているように思えますね。

 サウンドエレクトロニカニューエイジを合わせたような優しいもので、夢見心地な感じです。個人的には伊藤真澄やらコトリンゴ……それこそtoi toy toiあたりを連想する音です。『kusegumiku』はわりと多様な曲が入っていてベスト盤的な趣があり、一方の『Fieldscapes』は統一感があって、いわゆるコンセプトアルバムと捉えることができそうです。めちゃくちゃ流れがいい。

 あとさりげなくリズムが凝っているのが良いです。ビートの入りが少しズレることでリズムが今までと違って聴こえてきたり…というようなリズムの仕掛がそこかしこにあります。というかフレーズの組み合わせ方がセンスありすぎ。

 本人は今はVR関係で精力的に活動している(それこそ知ったきっかけがVケットだし…)ようですが、たまにはまた音楽を作ってほしいな~なんて…。すごく好みの音楽性なので…。

 

 

 

 

 

 その2(洋楽編)はこちら。

お気に入り曲まとめ (2020.6) その2 - ヨーグルトーン