Curd Duca [Easy Listening], [Elevator]

 カード・デュカ(でいいんでしょうか)。オーストリア電子音楽家・プロデューサーによる作品集。1991年〜2000年にかけて発表。

Reutopia-Music: Curd Duca : Elevator 2
はやしのブログ グリッチ10選
ELZA SOARESとCURD DUCA - ビューティフルCDライフ
curd duca / digitalanalog music 本人によるHP。結局ここが一番詳しいです。試聴有り。

 元々BGM的な音楽が好きで、例えば学生時代にステレオラブにはまったのもその感性によるところが大きかったりします。かといってアニメの劇伴やゲームのサントラ(ヱヴァンゲリヲン新劇場版のとかすごく人気だった記憶があります)となると今度はあまりに感情を揺さぶられてしまって落ち着いて音楽を楽しむ余裕がなくなってしまいます。いや、それはそれで素晴らしい音楽体験なんですけど、普段の日常でそんなに感情を揺さぶられたくないんですよね。もう年だから!
 そんな感じでちょうどいい塩梅の音楽を日々求めているんですけど、去年あたりにドンピシャな音源を見つけたので紹介します。

 Curd DucaのEasy Listening、Elevatorシリーズです。前者は5作、後者は3作今までにリリースされています。はじめはreutopiaさんのブログで見かけて、その直球なタイトルと、リリース元のmille plateauxへの信頼もありすぐに何枚か注文しました(安かったってのも大きい)。その後、最近になって結局シリーズがすべて集まってしまったので今記事にまとめています。

 Easy Listeningって言葉(ジャンル)はなんとなくわかるけどElevatorってなんなのん?って人にはここら辺が参考になるかもしれません↓

アメリカンジョーク?意味が分かりません、教えてください。 - 「... - Yahoo!知恵袋
バックグラウンドミュージック - Wikipedia
[Vaporwave] - INTERNET CLUB - VANISHING VISION  | ヴェイパーウェイヴ | ele-king

 実際自分も(ヴェイパーウェイブが流行ったときに文字列は見たなあ)というくらいで、正直あんまわかってない感じなのですが… 昔はエレベーターで音楽がかかっていたのか。。 まあどちらも当たり障りのない音楽と捉えておけば問題はないと思います。

 内容についてなんですが、1分か2分そこらの短い曲がいっぱい詰まっている、という構成になっています。Elevator 3なんか48曲もあります(それでも全体で40分くらい)。一曲一曲はスケッチのような簡素なつくりで、中には(これアイデア一発勝負だろ!)というような曲も多くあります(その散漫さ、というか自由な感じは過去にAphex Twinがuser48736353001という名義で垂れ流した大量の楽曲群を彷彿とさせます)。

 アイデア一発勝負というか… 曲というよりは「音」と言った方がいいようなものもあります。普段アンビエントイージーリスニングと聞いて想起される音楽よりも曲部分がより少なく、環境音的な要素がより多いんじゃないかと思います。
 なので、積極的に癒されようとしている向きにはちょっと注意がいるかもしれません。ツタヤなんかに置いてある癒し系のコンピレーションなんかとは確実に方向性が違いますので。例えるならば、「見たい番組があるわけでもないんだけどなんとなく点けているテレビ」みたいな感じです。格ゲーで言うと置き技というか(???)

 ただ「音」そのものについては、いい感じにアナログ感のある柔らかい音が主にメロディーで使われていたりして、さすがミルプラというか、聴き心地はいいです。展開もまとまりはないですけど、聴いててびっくりするようなこともないので、安心して垂れ流しておくことができます。あ、あと基本インストです。Elevator 2から人の声が素材として出てきたりはしますけど。歌は基本無いと思ってください。同じくElevator 3からにわかにクリック/グリッチ音が存在感を増してきます。同じ年(2000年)にClicks & Cutsの一枚目が出ているのでそれの影響でしょうか。



 全部で8作品あるわけですが、どれか一枚ということならば、自分はEasy Listening 4をおすすめします。多分これが一番作曲の比重が高いんじゃないかと思います。#15「out of nowhere」なんかは(他の商業的な仕事のアウトテイクなのでは?)と思ってしまうほどにしっかり作り込まれています。というかこの曲だけ露骨に曲名の雰囲気が違うんですよね。他の曲は単語だったりもっと記号的だったりするのに。。 あとエンディングが他の作品より考えられているように感じる、というのも大きいです。具体的に言えば#19「poker」〜#20「harp」の部分ですね。
 たまにストリングスが効いている曲なんかに出会うとthe Caretakerっぽいなーと思います。単に手法が似通っているんでしょうけど。もしかしたら元ネタというか、影響元の一つなのかもしれません。

 こういう作品では自分でオリジナルなプレイリストを作ってみるのもおもしろいかと思います…というのは建前で、単純にメモとして、自分のお気に入りの曲たちを挙げておきます。一応、これらを順に聴いていけばぼくの好みがだいたいつかめるかと思います。まあ音源は別途入手する必要がありますけど。



 自分が今まで紹介してきた音楽ではeagle shadowが一番立ち位置的に近いでしょうか。正直こういう音楽の需要がどれほどあるのかわかりませんが、「日常生活を(邪魔にならない程度に)音楽で埋めたい」というような人がいれば、これらが多少なりとも役に立ってくれるのでは、と思います。



(まとめて)7.3