Zebra3 [Warm Blanket]、[Warm Blanket 2]

 

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https://www.discogs.com/Zebra3-Warm-Blanket/release/9994303

 Zebra3によるイージーリスニング風のミックステープ。2017~2018年発表。

 

 

 今年の3月中旬頃、Tiny Mix TapesでAlan Sond『Clown Around Town』のレビューがアップされた。

www.tinymixtapes.com

 TMTのレビューでは点数はもちろんなのだけど、STYLES、OTHERSといった項目にまず目が行く。STYLESは作品の音楽性を表していて、例えばその作品が括られるであろうジャンルの名前などが挙げられる。OTHERSは少し抽象的だが、その作品に関連する、あるいは音楽性が似ている作品やアーティストの名前が挙げられるらしい。この項目によって、読者はレビューされた作品がどのようなものなのか予測したり、レビューされた作品と似たような作品にあたりを付けられるようになる。

 

 そこで先述のAlan Sond『Clown Around Town』のレビューに戻るのだけど、そのレビューのSTYLESには"an SNES game you rented as a child but forgot the title of"というふうに書かれている。SNESとは「Super Nintendo Entertainment System」の略で、つまり海外版スーパーファミコンのことであり、それを踏まえるとこの文章は「子どもの頃に借りたが名前を忘れてしまったスーパーファミコンのゲーム」という意味になる。

 

 スーパーファミコンは自分が物心ついてから最初に触れたゲーム機であり、個人的にゲームの音と言ったらこれ!と思っているハードです。実際に自身の音楽の好みに決定的な影響を与えているように思います。スーパーマリオワールドヨッシーアイランドドラクエIIIカービィ3とスーパーデラックス、マザー2に神々のトライフォース… また何を思ったのか去年の個人的年間ベストにカービィ3の音楽選んだりしてますしね…

(これは蛇足ですが、オリジナルがスーパーファミコンで出ているゲームはスーパーファミコンでプレイした方がいいです。音が全然違うので)

 

 

 ということで、音楽性の説明で"スーパーファミコンSNES)"なんて単語が出てきたら自分としては要チェックや!となります。レビュー対象の『Clown Around Town』は、聴いてみたところ実際に好みの内容でした(カセットで入手しました)。それならばそのレビューのOTHERSに挙げられている名前もチェックしなければなるまい…という流れで見つけたのがZebra3『Warm Blanket』です(長いイントロ)。

 

 

 

 

 

 アタックの柔らかい、耳あたりのいい音で奏でられるイージーリスニング調の楽曲がフェードイン・アウトで繋げられたミックス作品です。ハーモニカ?やマリンバなどかわいらしい音が多く、(なんらかのアニメのスクリーンショットと思われる)ジャケット画像のような温かくてどこかコミカルな雰囲気があります。特に1曲目ではキッチンの水場の環境音のようなものが背後で流れており、身近で親密な空気が作られています。

 

 個人的には、ジャケットのアニメ絵繋がりもあって、日常系アニメのBGMを思い出します。もうここ数年リアルタイムでアニメを追えていないので、最近の作品を例えに挙げることができないのですが、自分の記憶だと『のんのんびより』のBGMなんかはかなり雰囲気が近いように思います。

 

www.lantis.jp

 試聴ができます。#4「のんびりてくてく」、#5「いいのかな?」などがおすすめ。3期製作決定おめでとう…

 

 今作の一番の特徴はその「聴きやすさ」だと思います。耳あたりのいい音色に、常に中心に存在するシンプルなメロディー。ゆっくり目のテンポや、広く取られた音の隙間も聴きやすさに繋がっているように思います。テンションが高い音楽や情報量が多い音楽、またはあまり先の読めない不定形な音楽など、個人的に疲れているときに聴いても楽しめない音楽ってけっこうあるのですが、今作はその「聴きやすさ」ゆえに、状況を選ばずに楽しむことができます。

 

 聴きやすさは時に退屈さに繋がるのではないかと自分も思うのですが、今作では絶妙に練られたアレンジによってそれが回避されています。曲の大筋でこちらの予想を裏切ることはないのですが、細かな部分で予想を外してきます(特に日常っぽい曲で顕著な気がします)。音の抜き差しの加減が本当に絶妙で…… この聴きやすさと曲のおもしろさを両立している(この少ない音数で!)ところが今作のすごいところかもしれません。

 

 

 

 

 実は今作には「その2」があります。実はもなにも、記事タイトルに書いてありますが…

 Discogsによると(アーティスト本人が登録したのでしょうか)「1」がリリースされたのが2017年の2月で、そのちょうど1年後にこの「2」がリリースされたことになります。流れ的に2019年の2月には「3」が出るのでは?という感じでしたが出なかったようですね。

 

 基本的には音楽性は変わっていないのですが、製作に慣れたのか、こちらの方が音が少し生っぽくなっていたりアレンジが凝っているように感じます。特に中盤のフュージョンっぽい雰囲気のジャム・トラックは「1」にはないタイプの楽曲となっています。それでも個人的には冒頭2曲や最終曲のような日常っぽい曲の方が好みなのですが。極端に左右に振った音の定位などの遊び心?もすごくよく機能していると思います。

 

 

 

 

 軒並みな表現ですが、音楽に癒しを求める人におすすめの作品です。個人的には日常生活のBGMとして音楽を流すことが多いので、こういう作品はとてもありがたいのですが、それにしてもここまでドンピシャな、うまくフィットする作品は珍しいです。そもそも『Warm Blanket』というタイトルが最高ですね。

 

 アーティストや作品についての情報は、検索してもまだなーんにもヒットしないのですが、また定期的にチェックしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 最後にレーベルについて少し。「Lynn」という名前のレーベルからこれらの作品は出ています。

 

soundcloud.com

 

lynn1.bandcamp.com

 

 Bandcampでのレーベルの紹介欄には「New forms of intimacy」(直訳:親密さの新しい形)とだけ書いてあり、ただならぬ……めっちゃ自分が好きそうなオーラが出ています。ロゴもハート形の地球ですし。。

 

 リリースをパラパラと見ていくと時おり日本風の名前が出てくる。「Kenji」 (@exilevevo) という名前をあてに調べていくとこのアカウントにたどり着き、Wasabi Tapessimforartの人だということが分かる。

 そしてそのまま調べていくと以下の記事が見つかった。

simforart.blogspot.com

 

simforart.blogspot.com

 

 

 記事によれば、LynnはMichael Squeoが立ち上げ、その後Natalia Panzerが参加して一緒に運営しているらしい(たぶん…)。

 Nataliaは同時にTMTのライターでもあり(COOKCOOK名義)、そのきっかけの一つは『Clown Around Town』のレビューを書いたC Monsterからの誘いだった、とか。

 

 いろいろ繋がっているんだなあと思った。このレーベルの作品もゆっくり聴いていきたい。

 『Warm Blanket 3』、期待して待ってます…。

 

 

 

8.3