お気に入り曲まとめ (2020.4)

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 なーんか今月もあまり聴けていなくて正直そんなにネタがない。でもタスク溜めるのは悪なのでやります。。

 

 

Rufus Wainwright / Greek Song、Poses、Grey Gardens

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 アメリカのSSWの2ndアルバム『Poses』より。実は先月に聴いていた盤なのですが取り上げるのを忘れていました。この人の作品はこの次の『Want One』しか聴いたことなくて、なので遡って聴いた形になるのですが、こちらの方がジャジーというか室内楽的でおしゃれな感じがします(というか次作のスケールがでかすぎる)。ヒロイックすぎないところも含めて、日常的に聴くならこちらかなーと。名盤だと思います。「Grey Gardens」は自分のツボすぎた。

 一応00年代聴き直しの一環のつもりなのですが、あらためて自分が普段参考にしているメディア(ピッチ、Fact、RA、TMT)のリストを眺めると本作(というかアーティスト自体)がガン無視されていることに気づく。メジャーレーベルだから…? 他のアルバムも聴かないといけないけど、自分のリストでは本作か次作をピックアップすることになりそう。貴族!って感じの華麗で煌びやかな音楽で、普通にユニークだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

Ernest Hood / August Haze、The Secret Place、Gloaming

 アメリカのミュージシャンによる自主制作版で、去年リイシューされた作品『Neighborhoods』より。ピッチフォークが2016年に「The 50 Best Ambient Albums of All Time」というリストを発表していて、その中で取り上げられていました。そのことがリイシューのきっかけとなったのかは分からないけど、実際に聴けないと再評価もなにもないので、簡単に聴けるようになって良かったね。。

 

 内容について、わかりやすい紹介文があったので引用します。

1975年の自主制作レア盤がCD化。音楽作品を「アルバム」と呼ぶのは写真のアルバムのように様々な情景や感情を閉じ込めているからだけど、本作はまさにその「アルバム」たる思い出の記録と言える。

住宅地で聞こえる子どもたちの声や車の往来、花火の音といった様々な雑音、生き物の鳴き声や遠雷などの自然音。そこにシンセやツィターの演奏を重ね、幼少期に体験した夏の日のサウンドスケープを1日の時系列に沿って表現したアルバム。

Ernest Hood / Neighborhoods - 雨と休日オンラインショップ

 

 めちゃくちゃ強いムードを持っていて、流し始めると頭の中に(いまだ見たことのない)昔懐かしの情景が浮かんできます。フィールドレコーディングの音素材の配置が巧みで臨場感があり、目を閉じて聴いていると自分がまるで古い海外の映画の世界の中に入り込んでしまったかのような気持ちになります。いや、本当。

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 楽器の演奏は素朴な味わいのある穏やかなものなのですが、時折とても切なく歌い上げることがあり(これがまた電子音の音色に合っているのです)、胸がきゅっと締め付けられます。そしてこの傾向は「The Secret Place」「Gloaming」などの比較的かっちりと作曲された曲で強いように感じます。というか自分が「Gloaming」聴いてもう一発で虜になってしまったんですよね。メロディーが綺麗すぎる。。

 いやーすごい作品です。昨年のベストリイシューの一つでしょう。体験型の作品なので、できるだけリラックスできる環境で聴いた方がいいと思います。日が昇る頃・沈む頃にこれ流したらヤバいよ絶対… The BooksとかNuno Canavarroとかフェネスのエンドレス・サマーとか好きな人はマストですね。

 

参考リンク:

post-ambient.blogspot.com

 

 

 

 

 

 

 

Blanc Bunny Bandit / 共鳴性白染自由主義、もなかのクッキングソング、OUR JOURNEY

 バンめし♪よりBlanc Bunny Banditの2ndアルバム『共鳴性白染自由主義』がリリースされました。何回か連続でお気に入り音楽まとめに登場しているのでもうお馴染みになった感。前回書いたようにやぎぬまかな全面プロデュースで、インストを除けば全8曲とやや小ぶりではあるものの良曲が多く揃っています。

 #1「共鳴性白染自由主義」めちゃくちゃリスナーに問いかけてくる曲。「自分のおにぎりは自分で握るのです!」そうだよね…。メッセージ的にはアイカツの「Move on now!」と同じ(だってわたしがわたしのヒロイン!)で、まあ刺さる刺さる。サビでみんなでリレー→ユニゾンの部分の破壊力がすごい。エモ死。#4「もなかのクッキングソング」「おにぎりディスコ」に続いて神曲。もなかちゃん愛されてるな…。どちらもやぎぬまかな作編曲らしく、ひりついた疾走チューン以外にもササキトモコみも少し感じるキュートなポップソングも作れるなんて…と絶句している。曲中そこかしこで聞こえてくる調理音は本人が自宅キッチンで録音したらしいですよ。#6「OUR JOURNEY」めちゃエモ青春ソング。これアニメのEDとかライブシーンで流れるやつですよね?(妄想)やっぱピアノ入ると清涼感出るな、爽やかで、キラキラしてる曲。

 過去の流れからするとサブスクにはシングルしかこないのかな?と思っていたら普通にアルバムできたのでみんなで聴きましょうね。

 

 バンドのツイッターでこんなアンケートが流れてきました。やっぱみんなシンクロフィッシュ好きなんだなあ(自分も入れました)。鮮烈だったよね、ヒロイックな焦燥感があって…

 

参考リンク:

note.com

 

 

 

 

 

 

 

Matt Marque / Makeout、Nothing Personal、(Cheers And Applause)

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 つべで”Matt Marque”と検索したらこの動画だけヒットした。楽曲は1分過ぎから始まります。

 定期的に聴きたくなるシカゴ音響派。そのシーンの中心…ではないだろうけれども、同じ括りの中にMatt MarqueというSSWがいまして。2000年代前半に2枚アルバムを出してその後は謎…という感じなのですが、その人の1枚目のアルバムがめっちゃ好きでして。それに比べると2枚目のアルバムは少し地味という印象だったんですけど、初聴からかなり時間を置いた今聴いたらすごく沁みて…

 ということでその2枚目のアルバム『Nothing Personal』より。本人のボーカルはSam PrekopElliott Smithを足して割ったような、繊細で高音が美しいものなのだけどなんかちょっとおじいちゃんっぽいというか、枯れた味わいがあるのがおもしろい。バックにはいつもの如くシーンの繋がりでWilcoやらHiMやらCalifoneのメンバーが参加しており、カラッとした質感で小気味いい演奏を聴かせてくれます。

 1枚目もそうでしたが全体的に渋く、曲単位で見てもめちゃくちゃハマるという感じではないのですが、しみじみと良いです。冷たくはないけれど良い具合に乾燥した音の質感でもって聴き手をチルアウトさせてくれる。サブスクないっぽいのでCDを探してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 ここから先はまだ曲単位で消化できてないけど良さげだったやつ。とりあえずアルバム単位で取り上げます。

  

Plone『Puzzlewood』

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 なにがきっかけで出会ったのかマジで忘れた。去年の終わり頃にIDMの波がチラッときて、skamレーベルとかDiscogsで調べたりしていたのだけどたぶんその流れで… いや、Fact Magazineのなんかの特集記事だったような気がするな、まあとにかく去年の11月くらいに99年発表の唯一のアルバムを入手して積んでいたのだけど、なんと今年の4月に20年以上ぶりに新作がリリースされまして、99年のアルバムはさておき新作の方をけっこうな頻度で聴いています。

 とりあえず当時のツイを貼った。音楽性はややイージーリスニング調の、メロディアスでかわいらしいエレクトロニカ。完成度がバカ高くて、電子音楽のファンでこれを気に入らない人はいないのではという。牧歌的だけど、どこか子供部屋を連想するようなワクワクする感じもある。ワンチャン年間ベスト入るかもなと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

duster『Contemporary Movement』

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 スロウコアというジャンルでは有名らしいアメリカのロックバンドによるセカンド(2000年発表)。去年Numero Groupからそれまでのディスコグラフィーをまとめたボックスセットがリリースされ、その勢いのままに、年の終わりに3枚目となるアルバムを約20年ぶりにリリースしたという。ボックスセットが出たときにピッチでBNM認定されて、それで自分のアンテナにかかった感じです。で、今年に入ってSpotify契約してめちゃ利用し始めたらこのアルバムがおすすめとしてサジェストされてきて聴いたという経緯。

 基調となっているのはスロウコアだと思うけど、なんかいろんなジャンルの音楽性が絶妙なバランスで混じっているように感じる。サウンドはポストロック~ハードコアに通じる硬派なものだけど、楽曲はドリーム・ポップに通じる穏やかさ・甘さがあったりして。。 荒涼とした雰囲気はたしかにあるんだけどところどころでヨ・ラ・テンゴみたいなちょっと甘くておちゃめな感じが出てくる。たぶんUSインディー好きには刺さる内容だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

toe『2000』

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 (上で紹介した)Matt Marqueを聴いた流れで自分の中でシカゴのインディーブームがちょっときていて、ちょっとTruckstopレーベル掘ってみるか……となり聴いた作品。Spotifyで検索したらけっこう聴ける作品あってびっくりした。

 TortoiseのDoug MacCombsとJeff Parker、ドラマーのDavid Pavkovicと日本人女性のYoko Noge(野毛洋子)によるグループ? の1枚目の作品。ジャケットもアルバム名もてきとう……というか謎でよくわからないので身構えるけど、中身はしっかりとしたポストロックをやっている。

 ジャズとロックの中間のようなスタイルに、フィードバック・ノイズやシンセの持続音で浮遊感を加えたもので、これもまたとても小気味いい。で、そんな演奏にブルース・フィーリングのある生々しい(半分くらい日本語の)女性ボーカルが乗る。正直かなり謎で不思議な音楽。似ている作品を挙げるならCANの『Future Days』かなあ…。しかし、さすがトータスというか、リズム隊だけで充分に気持ち良くてなんなんだこいつらはと思ってしまう。

 

 

forbesjapan.com

 野毛洋子については検索するとこんな記事がヒットしたりしする。まったく知らなかったけどけっこうすごい人物らしい。

 

 

reutopia-music.blogspot.com

 上で紹介し忘れていたけど、Matt Marqueに出会った(といってももう5年以上前だけど)きっかけはこのブログ。ヨーグルトーンでも何度か登場してるブログなのですが、音響派に限らずtouch & goやらDrag Cityやらシカゴ系全般に強いのでみなさん参考にするといいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

Internet Club『REDEFINING THE WORKPLACE

 今さらですが『新蒸気波要点ガイド』をパラパラ読み始めました。そこで紹介されていた作品の中で良さげだった作品。ジャケットだけは何度も見ているので勝手に聴いた気になっているInternet Clubの、2012年リリースの数ある作品の一つなのだけど、これがポップと前衛(というか意味不明)のバランスの取れた意外な傑作でした。いや意外と書くと失礼なんですけど…『DREAMS 3D』と『VANISHING VISION』だけ聴いてなんかアーティストのこと分かった気になってました。これは他の作品もちゃんと聴かないとか。。

 

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 #6「THE NEXT LEVEL OF INTEGRATION AND OPTIMIZATION」

 

 音楽性について、『Far Side Virtual』『札幌コンテンポラリー』のような快適で人工感のあるBGMを基調に、深いリヴァーブとサイケデリックな演出を施したもの。長尺の曲では穏やかに始まったはずなのにだんだんバグったシューゲイザーみたいなサウンドに変化していったりする。この意味不明なトリップはSacred Tapestryの作品を彷彿とさせる(あそこまでドロドロとはしていないが)。個人的なハイライトは中盤の「THE NEXT LEVEL OF INTEGRATION AND OPTIMIZATION」で、展開が練られており、クラブ仕様のハウスミュージックのようなスケールの大きな盛り上がりを見せる(言ってしまえばVaporwaveにかぶれたThe Fieldのような感じ)。

 たぶん自分はクリアーなサウンドに蜃気楼のようなリヴァーブをかけたものがツボで、そういう音楽はだいたい気に入ってしまうような気がします。まあそれを抜きにしてもこのアルバムはよくできていると思う。やっぱ捨てアカさんのレコメンドには外れなしですね(捨てアカさんとの相性によるもので人によります)。ところで新~ガイド、書き手によって文章のスタイルがぜんぜん違うのがおもしろいですね。たまに具体的な音楽性にまったく触れない100%雰囲気で書かれたようなものもあって、うーん玉石混淆~!となったりもしますが…

 

 

 

 

 

 

 

Arthur russell『World Of Echo』

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 実は聴いたことのなかったArthur russell。『World Of Echo』を聴いてみました。感想:なんだこれ…。みんなこれを良い良いって言ってたのか……みんなのことなんもわからなくなってきた。

 自分が今まで培ってきた「音楽の楽しみ方」のようなものがことごとく通用しない(まったくというわけではないけども)、謎でヘンテコな音楽。「既存の文脈に乗っていない」とも言えるのかな。なんというか、この作品のためだけに新しく一つ回路を作る必要があるような。そういう意味では『Selected Ambient Works Volume II』なんかが浮かんでくる。

 サウンド自体はミニマル・アンビエント・ダブという感じだけどスタイルとしてはアシッド・フォークですよねこれ? まだ回数聴いてなくて良さがあまり分かってないからかもしれないけれども、「カルト・クラシック」という扱いの範疇を出ないもののような気がする。音響処理などで細かな演出がされていて、とても微妙な味わいがある。何度も聴いたらズブズブとハマっていきそう……ではあるんだけど、ぶっちゃけそれはあらゆるヘンテコな作品にあてはまることなんだよね。アシッド・フォークの作品全部そう。

 一応書いておきますが、この作品が嫌いというわけではないです。これからも聴いていくと思う。まあでも、月・年単位で付き合っていく感じになるのかな~とも思っています。しかしこの作品がめっちゃ評価される世界ってのも謎だな。おれの評価もそのうちコロッと変わったらおもしろいですね。

 

 

 

 おわり。みなさん健康に気をつけてお過ごしください…。