お気に入り曲まとめ(2024.2)

https://www.discogs.com/ja/release/1377125-X-102-Rediscovers-The-Rings-Of-Saturn

 2月のお気に入りです。ゲームして絵描いてたら終わってました。

 

 

 

 

X-102『X-102 re-discovers the Rings Of Saturn』(アルバム)

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www.ele-king.net

 

 なにがきっかけで聴いたか完全に忘れた。ピッチのSunday Reviewsだったかな。Jeff Mills、Mike BanksによるUnderground Resistance関連ユニットの作品。「re-」と付いているのは2008年にリリースされた新装版だからで、オリジナルに新曲を加えさらに曲順が練られている。昔にジャニスでレンタルしたものですね。

 勝手にかなりハードな作品と思っていたのだけど、これが意外にそうでもない。想像を喚起するアンビエントなトラックがうまい具合に配され雰囲気を繋いでいる。オリジナル版はどうなのかわからない(といっても自分で曲順をいじればある程度再現できるが)けれど、少なくともこの再構築版は単曲よりもその連なりで聴かせるよくまとまったアルバム作品だ。ダンスよりはトリップで、部屋を暗くしてリラックスして聴きたい。

 曲単位で見ればたしかに(有名らしい)「Ground Zero (The Planet)」がいっとう派手かつ長尺で目立っているのだけど、しかしアルバム単位でのトリップを考えると曲調が激しすぎてむしろ邪魔に思えてくるという。

 名作だと思います。宇宙的なサウンドが聴きたくなったらコレ!って感じ。イメージとしてはイーノの『On Land』と本家Underground Resistanceを足して割ったような感じです。

 

 

 

 

 

 

 

Laurel Halo『Atlas』(アルバム)

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 昨年オタクなリスナーたちによく取り上げられていた本作を今さら取り上げる。自分自身まだ掴みきれているわけではないのだけど、現時点で個人的に整理するなら、これは「音像の」アルバム、という感じになる。

 複数のレイヤーを感じさせつつも、表面的には(ジャケットアートのように)ぼやけた質感のドローンとしてまとまっている。いろいろな具材が溶け込んだ濃厚なスープのようだ。

 究極的にはバランスの問題だ。繰り返しになるけれど、「複数のレイヤー・流れ」と「ひとまとまりのドローン」、この両者を同時に感じさせるミックスのバランスが本作のキモであり白眉だ。James Blakeの1stではないけれど、複数の像が文字通り溶け合ったテクスチャーがまずすばらしい(という意味で「音像の」と書いた)。

  複数が混ざり合ったものから個々の素材を解き明かしていく。アンビエントとしての機能とは別に、そういった楽しみが本作にはある。聴くたびに新たなサウンドやメロディーの断片が見つかり、作品は味わいを増していく。不明瞭による掴みにくさも作品のリピートに拍車をかける。

 個々の素材が溶けだし、原型を留めていない様子からは儚さのようなものを感じるし、混じりあっている様子からは昼と夜が同居する黄昏時を連想したりもする。このどこでも・いつでもない雰囲気も本作のユニークな魅力だと思う。

 傑作ですね。個人的にはまだメロディーが前景化していないThe Caretakerの初期作品群を思い出しました。「テクスチャーや流れをひとまとまりにする」というところまでは正直あるあるで、そこからどう聴かせるものにするかで個性が出るのかな。個人的にはGAS・Vladislav Delay~Pendantなど現代ダブの系譜、その(ポスト・)クラシカルな発展形のようにも思っています。

 

 

 

 

 

 

 

The Smile『Wall Of Eyes』(アルバム)

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 まだ曲単位で消化できてないのでお気に入り曲は上げられないのだけど、まあもう傑作とは思ってるので取り上げちゃう。

 前作はまともに聴いてないのだけど、そもそもの話、自分にとってはトム・ヨークの歌ものという時点でかなり価値があるらしい。思ったよりもトム・ヨークの歌が好き。ジョニーのストリングスも好きだし。そしてこのThe Smileというバンド、勝手に思っていたよりもずっとRadioheadでありトム・ヨークだったのであった。

 まあつまり基本的に好みということで。その上、あのすばらしい『A Moon Shaped Pool』以降の作曲・サウンドメイクが為されている。複数のサウンド・スタイルが自然に融合した超越的な手つき。トムの歌とそれが組み合わさったら、そりゃあ傑作しか出てこない。

 正直、『A Moon Shaped Pool』で彼らは一線越えた地点に至っているので……そこから凋落でもしない限りはすごい作品しか出ないとは思いますが(なんかもうボーナスステージみたいな感じがある)、実際こうして優れた作品が出るのはすばらしいことだと思いますね。それもけっこうなペースで。ただただありがたい。長生きしてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

Yo La Tengo『This Stupid World』(アルバム)

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 Yo La Tengo。その一言で終わってもいいような作品。愛すべき金太郎飴。

 なんとなくアンビエンスの感じがロウかつ自然になったような。『And Then~』で焚かれていたスモークは薄れ、自然で柔らかな闇が広がっている。ジャケットはその感じを的確に伝えていると思う。

 クオリティは安定していて、楽曲の平均水準は高いが飛び抜けたところはない。でもそれゆえにアルバム単位で聴けるものになっているようにも思う。

 個人的にThe Feelies『In Between』を思い出すような……まあ、良い意味でジジイの作品ですよ。ぶっちゃけ今作を評価している人も全員ジジイだと思う。Pitchforkがこれを評価するのはまあ気持ち的には分からないでもないのだけど~~~BNM進呈(しかも8.5)はやりすぎな気も。現行のメディアとしてはもっと他に取り上げる作品があるのではと思わなくもない。

 

 

 

 

 

 

 

Brokeback『Field Recordings From The Cook County Water Table』(アルバム)

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 なんとなくシカゴ音響派が聴きたいな~と思ってネットを徘徊していて見つけた作品。Tortoiseのベーシスト、Douglas McCombsのプロジェクトらしい。99年の1stアルバム。

 ベースを中心にフィーレコや管弦を加えたポストロック~アンビエント。一聴して録音の懐かしさに感動。これだよこれ、これがシカゴ音響派や!

 残響多めの録音に、この、遠くでもやのように薄~く重ねられるサウンド。このプロダクションですね。本当に強い時代性が宿っていると思う。これに加えてフィールドレコーディングの直接的な情景喚起があり、めちゃくちゃに懐かしさを感じてしまう。

 自分のこの体験はあらかじめシカゴ音響派周辺を通過済みなことが前提ではあるんですけど、いやこの懐かしさには抗えないな…。いいアルバムだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

Mark Sparling『A Short Hike』 (Original Soundtrack)

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 ゲーム音楽コーナー。元がかわいらしいオープンワールドでハイキングするゲームなので、音楽もそれに合うようにポップでメロディアスなものになっている。特に「Beach Buds」「Somewhere in the Woods」の2曲はゲームのメインテーマと言っていいような出来。

 メインとなる4曲にはショート版ロング版に加えフライト版など複数のバージョンがあり、これらがゲーム内でのインタラクティブな体験を生み出していたのだろう。ブレワイでは薄味さ……と言うとあれだけど、アンビエントさが飽きずにいつまでも聴ける(ゲームをプレイできる)要因になっていたと思うけど、本作ではよりはっきりとしたメロディーやコードを備えつつブレワイの音楽と同じくらい長く楽しめるものになっていて、良い。実際にゲームをプレイして感じてほしい。無限に音楽が展開していくし、それがまた常に良いという…。

 

 

 

 

 

 

 

Ryan Roth / Shutter、Vertibrae、Rooftop、Vault、Escape from This Place、Va、Be in This Place、D.S. Al Coda

 from『The Beginner's Guide Soundtrack』

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 珍しく曲単位で挙げている。基本的に短く、ある程度はっきりと雰囲気があるので好みをすぐに判定できた。

 元のゲームというかゲーム内ゲームがかなり迂遠で抽象的なので音楽もそんな感じ。アブストラクトなエレクトロニカアンビエント。プレイ中はストーリーや演出に引き込まれていたのであまりリアクションしなかったけど、けっこう音楽も好き。ゲーム自体も、コメンタリー部分を抜きにすればかなりアンビエントのファンに刺さる内容のような。そもそもウォーキングシミュレーターというジャンルがわりとアンビエント的かも。

 単独記事でも書きましたが、表現に関わるあらゆる人にプレイしてほしいゲームです。それには当然音楽のファンも含まれます。

 

 

 

 

 

 

 

下地紫野、emon(Tes.)(作編曲)、烏屋茶房(作詞) / 金色のマーチ

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 アークナイツの最重要(!?)キャラ、テンニンカのオリジナルソング。4th Anniversary Fes. 「For You」にて公開されたもの。曲もいいけど、なにより声優のポテンシャルをうまく引き出していることが良い。サビの「~Rat-tat-tat!」の歌唱だけで勝利を確信する。これで3分にまとまってるのもすごい。旨味しかない。

 本家のクールな洋楽志向とは違って日本発の楽曲で、それでちゃんと日本の「J-」、あるいは「アニソン」の味があるのがね、差別化できてていいですね。3周年のフェスでもオリジナルで4曲製作されていて、今回も4曲発表されているので、この流れが続けば来年もこの時期にオリジナル曲が聴けるかもしれない。

 すごく刺さりました。これが外国のプレイヤーに聴かれるか、どう受け入れられるかわからないけど、個人的にはすでに膨大な数になっているアークナイツ関連曲でもトップクラスに好きですね。

 

 

 

 

 

 ゲームと絵ばかりだったけどそれぞれに充実していたと思うのでヨシ。そして改めて振り返ると音楽もまあ、最低限まとめられるくらいにはなっている。個人的に充実した月だったと思う。