Laurel Halo『Atlas』

https://laurelhalo.bandcamp.com/album/atlas

 

 

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 昨年オタクなリスナーたちによく取り上げられていた本作を今さら取り上げる。自分自身まだ掴みきれているわけではないのだけど、現時点で個人的に整理するなら、これは「音像の」アルバム、という感じになる。

 

 複数のレイヤーを感じさせつつも、表面的には(ジャケットアートのように)ぼやけた質感のドローンとしてまとまっている。いろいろな具材が溶け込んだ濃厚なスープのようだ。

 

 究極的にはバランスの問題だ。繰り返しになるけれど、「複数のレイヤー・流れ」と「ひとまとまりのドローン」、この両者を同時に感じさせるミックスのバランスが本作のキモであり白眉だ。『James Blake』のジャケットではないけれど、複数の像が文字通り溶け合ったテクスチャーがまずすばらしい(という意味で「音像の」と書いた)。

 

  複数が混ざり合ったものから個々の素材を解き明かしていく。アンビエントとしての機能とは別に、そういった楽しみが本作にはある。聴くたびに新たなサウンドやメロディーの断片が見つかり、作品は味わいを増していく。不明瞭による掴みにくさも作品のリピートに拍車をかける。

 

 個々の素材が溶けだし、原型を留めていない様子からは儚さのようなものを感じるし、混じりあっている様子からは昼と夜が同居する黄昏時を連想したりもする。このどこでも・いつでもない雰囲気も本作のユニークな魅力だと思う。

 

 傑作ですね。個人的にはまだメロディーが前景化していないThe Caretakerの初期作品群を思い出しました。「テクスチャーや流れをひとまとまりにする」というところまでは正直あるあるで、そこからどう聴かせるものにするかで個性が出るのかな。個人的にはGAS・Vladislav Delay~Pendantなど現代ダブの系譜、その(ポスト・)クラシカルな発展形のようにも思っています。