Steely Dan『Gaucho』

 

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 『Gaucho』。Steely Danが長い活動停止に入る前に発表された作品で、彼らのディスコグラフィーの一つの区切りとなっている。今まで『Aja』しかまともに聴いてなかったのだけど、一昨年に1stに触れて(この時点で完璧かいっ!)と感動してから徐々に過去作を聴いていき、とうとうGauchoに至りました。

 

 一聴した感じ、とにかく聴きやすい印象。特に前半部分はむしろつまらないと感じてしまうほどに聴きやすい。

 引っかかりが少なくて、そのままつるっと流せてしまう。一番の要因は常に安定しているリズムで……個人的にはロック/ポップスというよりはハウスに近いと感じた。もちろん全て人力なのだろうけど、あまりに全体が整っている。今作と比べると『Aja』はかなりファンク~プログレ寄りで、リズムが途切れるのも厭わずにキメや外しを配置していて、なんというかロック的なケレン味があったなと思う。

 

 場の空気を乱さない、節度を保った音楽で、クラブやバーよりはもう少し公共感のあるラウンジなんかで流されるのが似合っている。音楽の盛り上がりで我を忘れることがない。

 

 ムードやグルーヴはもとより、テンションの高さや音楽的な情報量までも最初から最後まで安定している(=つまり「まとまり」がある)ため、アルバム単位で聴きやすく、かつカジュアルに楽しめる。めちゃめちゃ高品質なアルバムです。音の取捨選択を極めた結果のミニマルなアレンジが大人の余裕のようなものを醸し出している。ごく個人的な感想なのですが、完璧さとカジュアルさを両立させているのがすごいなと思う。

 

 だいたい全曲好きな感じ。なのでアルバム単位で取り上げましたが、1曲挙げるならタイトルトラックである#4「Gaucho」でしょうか。