実はこの記事を書く前に年間ベスト記事をある程度書き終えてしまいました。いや、なんかすごい重荷感あったので、早く楽になりたくて気が付いたら手を付けてしまっていた…。最近ゲームをやりまくっていて、その反動(遊び過ぎたことに対する罪悪感)もあったと思う。
年ベス記事を書くためにはその年のお気に入り作品の再確認作業が必要になるわけでして、するとどうなるかというと新しい作品を聴く時間が取れなくなるのだな。ということで今回のまとめの量は少なめです。
Calum Bowen / The Mountain Village、The Swamp、Everything's Gonna Be Okay
from『Pikuniku Original Soundtrack』
前に……かなーり前にマルチネから出した作品が好みで、以来たびたびチェックしているCalum Bowen。そういえばSpotifyに作品あるかな~と思って検索したらあったのでなんとなく聴いてみた作品が良かったです。
ゲームのサントラみたいな、機能性に全振りしたような音楽はやっぱ自分にとっては必須栄養素で、定期的に聴きたくなる。という自分の話はさておき、やっぱりめっちゃポップでとても良いです。音色もコミカルでおもしろい。はじめの数曲はトレイラー向けということもあって異様にテンションが高いですが、以降のデフォルトのテンションの楽曲の方が日常生活には馴染みやすいかも。
「メインのメロディーを決めて、それを軸に色んなバリエーションを作っていく」というのがサントラ作りのセオリーらしいですが、今作もその例に漏れず、聴いているとだんだん特定のメロディーが頭に染みついていきます。元のメロディーの強度の高さはもちろんだけど、これだけのバリエーションを作れるアレンジのセンスもすごいと思う。
ゲームをプレイする前にサントラ聴くのももったいないような気がしますが時間は有限なのでしょうがない。しかしサブスクでもけっこうサントラ聴けるのはありがたいですね。まあサントラが世に出ないゲームも無限にあるのですが…
IGN Japanの、ゲームの方のレビュー。軽そうだからそのうちやろうかな。
KIRINJI / ただの風邪、再会、気化猫
from『crepuscular』
Lampや冨田ラボにハマったときからずっと聴かなきゃな~と思っているキリンジ。委員長のアルバムに提供した「部屋とジャングル」がめちゃくちゃ良かったので新しいアルバムは聴こう!と思って聴いたのですが……今確認したら「部屋とジャングル」は現KIRINJIではなく昔脱退した弟の方の作だったらしい。なんと……。でもこの夏に銀行で偶然、一度だけ聴いたNHKみんなのうたの新曲、V6「素敵な夜」がまためちゃくちゃ良かったのですが、こちらはちゃんと現KIRINJIの作だったので、これでチャラということで……(何が?)
新作、サウンド的に統一感あるし、よくまとまった作品だと思います。一番良いのはアルバムの掴みが超強いこと。具体的に言うと1曲目2曲目に神曲配置してるのがすごく効いてると思う。1曲目2曲目ではっきりと名盤を予感させてくるので、聴き手は(これはキたかも、とりあえず一周聴こう)ってなるんですよ。で、アルバムを一周、まともに聴かせることができたらもう「勝ち」じゃないですか? 「勝ち」なんですよ!
全体的にエレクトリックな質感。サウンド的にラフなところがなく、そのせいかなんとなく内に籠っているような空気がある。アルバム中盤(#4~#7)が顕著だけれど、楽曲も内向きにこんがらがっている感じがあり(雰囲気で伝われ)、特に#5「曖昧me」#7「ブロッコロロマネスコ」は聴いていると出口のない迷路をずっとぐるぐるしているような気分になる。
というかぶっちゃけ、アルバム中盤のこのもやもやしたフィーリングは、続く(映画『鳩の撃退法』の主題歌にもなった)#8「爆ぜる心臓 feat. Awich」への布石だと思う。もやもやをこの曲でぶっ飛ばす、というアルバム単位での大きな仕掛け。で、これは蛇足っちゃ蛇足なんだけど、この仕掛けが機能するには中心となる「爆ぜる心臓」でちゃんとブレイクスルーしなきゃいけなくて……つまり、「爆ぜる心臓」が刺さらない人にはアルバムの印象もなんかモヤっとしたものになっちゃうかも、ということ。というか自分が少しそんな感じになっています。
傑作アルバムだと思います。個人的にこのアルバムの音楽性をまとめると「シティポップと(プログレのサブジャンルとしての)チェンバーロックの融合」みたいな感じになりそう。「ただの風邪」と「気化猫」の二曲が特に刺さっています。普段そんな元気じゃないからアンニュイな感じの曲の方が馴染む…。「ただの風邪」は曲名の由来が知りたい。「気化猫」は二番のサビの「生まれて初めて聴く音楽かも ハハ、違うか」という歌詞に少し本心の存在を期待してしまう。歌詞の前後も読むとただの冗談みたいなニュアンスっぽいのだけど。でも同時にこの不確かな猫って音楽のメタファーなんじゃないの、とも思ったりする。
Jazmine Sullivan『Heaux Tales』(アルバム)
アメリカのアーティストの4th。特に隠すものでもないので書きますがピッチの年間ベストを見て聴きました。
アルバムとしての充実度合い・洗練具合がすごいです。これだけの濃い味わいなのに全体では32分しかないという驚き。でまたその尺ゆえに、濃いけれども重くはないという絶妙なバランスになっている。そして「複数曲でのまとまり」ありきの作品なのかというとそうでもなくて、曲単位でも完成・自立している。
なんというか、「アルバムとして」文字通り完璧な作品という印象。今年出た作品ではL’Rain『Fatigue』が似たようなスタイルじゃないかと思うのだけど、曲単位でもアルバム単位でもこちらがわずかに優れてる……と思う。なんかすごい殴り棒みたいな扱いしちゃって悪いなと思うけど。
すごく良いアルバム。個人的なツボは押されないので突き抜けた評価にはなりませんが、どこに出しても一定以上の評価はされそう。あとどうでもいいですが、節回しの関係か、#6「On It」でのボーカルがなんかすごく日本語っぽく聞こえるときがあります。
ATM『Xerox』(アルバム)
なんかもうここで書いてしまいますが、来年に1080p(レーベル)の作品をまとめた薄い本を出すかもしれません。たぶん自分が一番音楽にのめり込んだのって時代で言えば10年代で、まあこう書くといやまだ20年代があるだろ自身の最高を更新せんかい!ってなるんですけど、実際は体力も興味も衰えていくので無理になっていくと思うんですよね。だから20年代は20年代を若い時分に過ごせる人たちに任せてしまって、自分は自分がハマった10年代の作品をまとめるのに少し時間を費やそうかなと。
ということで12月は1080pの作品をチラッと聴いていたのですが、リアルタイムでもちょびっと聴いていたこの作品が改めて良いなと思ったのでした。特に最後の3曲の流れが良い。ちゃんとエンディングしてた。
音楽性はアブストラクトなローファイ・ハウスみたいな感じです。当時はこういう音楽が流行っていました。そして、ここらへんの作品に触れるたびに、自分の中で『Hazyville』が2008年に出ていたという事実が大きくなっていく……。
あとは毎度恒例、未消化だけど良かった感じのやつ。Jim-E Stack『Ephemera』、Richard and Linda Thompson『I Want to See the Bright Lights Tonight』、Arovane『Reihen』。
Jim Pembroke dies at 75, helped internationalise Finnish rock | News | Yle Uutiset
またかなり前の話題ですが、フィンランドのバンドWigwamのフロントマン、ジム・ペンブロークが亡くなりました。定期的に聴いてるバンドなのでこちらでも触れておきます。
そんな感じです。12月終わってないけどアップしちゃう。アップして以降に生じたお気に入りは来年1月のまとめで取り上げます。次の記事は年間ベストですね。