Wapassou『Ludwig (Un Roi Pour L'Eternite)』

 

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 フランスのよく分からんバンドの四作目。30分超えの大作と小さな小さな可愛らしい曲x2……に加えてCDとサブスク版はボートラが一曲という、構成だけ見ればプログレらしい作品。全編インスト。

 

 一般的にはプログレに括られるグループ……ではあるけれども、時代的には「プログレでしか括れなかったグループ」といった方が正確かもしれない。超絶技巧や複雑な曲構成のようなジャンルの特徴は備えておらず、ただのどかな旋律が愛らしいサウンドで、人間味あふれる演奏で緩やかに流れ続けていく。30分超えの#1「Ludwig」も数分の小曲の連なりであって……このどこまでもメロディーオリエンテッドで人懐っこい作風は、率直に言えば、現代の視点からすればプログレよりもイージーリスニングの方が近いように思う。

 

 演奏自体には「歌い切れていない」というか、ややたどたどしいところもあったりするのだけど、全体の作りは丁寧で、心が籠っている。特に大胆にエフェクトをかけたサウンドによる演出のようなものは、元となる楽曲自体が素直なこともあってよく嵌っている。音楽の総体として表現されるテリング自体は大変魅力的だということです。

 

 ボートラである4曲目のみリズム隊がフィーチャーされていて、突然空気が変わってしまいます(ロックになっちゃう)。アルバムのまとまりという観点で言えば完全に蛇足なのだけど、曲自体は悪くないです。後半のロマンティックな展開に引き込まれる。そしてこれが意外にもチープな音色にフィットしている。

 

 これもプログレというレッテルが悪さしている例というか……いや別に悪くないんですけどね! 実際にボートラとかはプログレの範疇にある音だと思いますし。ただ、作品全体で見たら、おそらくニューエイジとかイージーリスニングとかそっちのファンにより強く訴求するのではないかと(そして逆にプログレファンにはそこまで受けないかもしれない)。なんにせよ、より広い層に聴かれてほしい作品ですね。名作。