2022年の年間ベストです。いつもより小規模ですが、まあそんな一年でした。
いつもは仰々しく選抜基準!選抜範囲!なんてやってますが今回はやりません。いやまあ選抜範囲は変わりませんが(2022年一杯)。心からのお気に入りを精査していったらなんか5作品しか挙がらなかったので。リアルタイムの音楽もぜんぜん追えてないし。堅苦しくやっても意味ないなと思いまして…。
順位付けもしません。アーティスト名のアルファベット順で5作。全部過去にブログで取り上げたやつ! ではゴー。
Arti & Mestieri / Giro di valzer per domani
(1975)
イギリスのジャズロック・グループの2nd。手数のはちゃめちゃに多いドラムを筆頭にテクニシャン揃いのバンドが放つ、外連味たっぷりの歌、歌、歌。ギター、ヴァイオリンをはじめあらゆるパートが約40分間を熱く歌い上げている。
アホみたいな技巧を備えつつも全体が歌を中心にまとまっているのがマジで、本当に、良い。そしてこれは別に狙ってこうなったわけではなく、自然とこういうスタイルになったのだと思う。だって楽器を歌わせるのって気持ちいいから。
本作を聴いて、まあ気持ちいいんだけれど、これも我々はおそらくおこぼれに与っているだけで……なぜなら絶対にこれを弾いてるプレイヤー自身が一番気持ちいいはずだから。それくらいに熱くて明朗なメロディーが本作には溢れている。
たぶんバンドが音楽の快感に素直に従っただけなのだと思うけど、プログレにたまにある気難しく衒学的な部分がほとんどないことにも好感が持てる。イントロもそこそこにすぐにギターが歌い始める1曲目「Valzer per domani」がいい例だ。
Dillard & Clark / The Fantastic Expedition Of Dillard & Clark
(1968)
The Byrdsの元メンバーとバンジョー奏者のデュオによる作品。Artiが器楽方面の歌を追究した作品とするならこちらは人間のボーカルによりフォーカスした内容。「Out On The Side」の抑揚に富んだボーカルを聴いてほしい。この、どこからでもビブラートをかけられるようなメロディーラインをさ……
メロディーの滋味深さが極まっている。もちろん、田舎の祭りでワイワイやるような明るいトラッドなスタイルの曲もあるけれど、それよりもどこまでも枯れた味わいの渋い楽曲が輝いている。ぜひ歌詞を見ながら合わせて一緒に歌ってほしい。めちゃくちゃ気持ちいいので。。
Pulsar / Halloween
(1977)
フランスのプログレッシブ・ロックグループの最終作。と思ったけど後に再結成して作品出したりとかもしてるらしい。
スペイシーで浮遊感のあるサウンドで演じられる怪奇趣味のフォークロア。丁寧かつどこまでも統制の行き届いた演奏で丹念に世界を紡いでいく。スタイルとして近いのはPink Floydの『狂気』で、それにピーガブ期Genesisの演劇性の高いロックを組み合わせたような感じ。
完成度の高さも狂気並みで、約40分を通して幻想的な雰囲気が崩れることはない。その上で、狂気よりはテンションの振れ幅が小さく、主張の強い社会的なテーマ性もないために、なんというか日常的に聴きやすい作品だ。そもそも全体の半分くらいは穏やかでファンタジックなイージーリスニングのようなもので、部屋で流しておくにあたってまったく抵抗がない。
個人的にハマった理由の一つとして、ボーカルパートが極上の出来というのも大きい。丁寧に丁寧に雰囲気を盛り上げて、ここぞという場面でポップでエモいボーカルパートに突入するという、プログレ黄金パターンの構築に完璧に成功している。パート2の6分半くらいからの5分間は至福の時間です。まあそれを抜きにしてもアルバム単位で完成している芸術品です。一枚通しで楽しめる作品ってやっぱ印象良いよ。
Smart Went Crazy / Con Art
(1997)
ワシントンD.C.出身のバンドの2nd。その出自とDischordというレーベル名から想像できるようにハードコアを音楽性の主成分としているが、そこにアートロック的な奇妙で少し手の込んだ要素を加えているのが特徴。
その恩恵を最も受けているのがアルバム全体の構成で、DJミックス的なシームレスな繋ぎや、逆に流れをぶった切った唐突な展開など、バンドはさまざまな手法で約一時間のあいだ聴き手の注意を引き続けることに成功している。
要するに直球ストレートだけじゃないんだぞという。変化球も上手いんだぞというね。変化球というか、単純に多くのアイデアが作品に注ぎ込まれている。かといってフィジカルが疎かになっているということもなく、レーベルに恥じないレベルの硬さ速さも備えている。
そして……自分の琴線に触れるということはやはり、このバンドも独自の歌心を持っている。普通に歌ものとしても楽しめるレベルのポップさがある。自分にとっては重要ですね。バンド解散後、中心人物であったChad Clarkは同郷のFugaziやThe Dismemberment Planにエンジニアとして関わったり、Beauty Pillという新しいバンドを結成したりします。
V6 / STEP
(2021)
V6の14枚目、最後となるアルバム。既存のシングル曲は収録せずすべて新曲のみで構成された充実作で、各曲のプロデュースはメンバー自身が行っているという。
エレクトリックな質感を基調とした、EDM通過後のスケールの大きなシティポップ。明るく楽しい場面もあるが、それ以上に「大人」を感じさせるクールでビターな表現が印象に残る。しっとりした場面の湿度が高すぎる。そして大人ゆえの、責任などの背負っているものの大きさを感じさせるシーンがけっこうあるんですよ。歌詞も含めて、なんというか重いアルバムでもあります。
でも、それら以上に楽曲の充実度合いが半端ないです。芸術的かつエモーショナルな#1「雨」から十分に彼らの気迫が伝わってくる。そこからもずっと良曲が続く(#1~#4の流れは神がかってます)。曲もいいし、彼らのパフォーマンスもすばらしい。歌めちゃ上手いです。
音楽好きにも、というよりは音楽好きにこそ刺さる傑作だと思います。どのくらい音楽ファンに聴かれてるかわからんけどぜひ聴いてみてほしい。聴く手段がかなり限られてるっぽいのが難点ですが……(自分はツタヤで借りました)。
おまけ:今年サブスク解禁されたおすすめ作品 今思いついた作品を挙げてるだけ
聴く機会がなかっただけで聴けば全員好きになると思うが。。
Serani Poji『MERRY GO ROUND JAILHOUSE』
去年の個人的年ベス。委員長ファンは「ありふれた毎日の歌」のオリジナルもぜひ聴いてくれよな。
SAKANA『Blind Moon』『Locomotion』
解禁が今年だったか微妙だけど最近TLで話題にもなってたので。
DJ Sprinkles『Where Dancefloors Stand Still』
公式かわからんけど……でも『Skylax House Explosion』も一緒に解禁されてるなら公式か。「Forestfunk I」以降はもう良すぎて……
あまりいないとは思いますが通ってない人はちゃんと聴きましょう()。自分はEasy Moneyのドラム・ギターにめちゃ影響受けてます。
七尾旅人1st~3rd
天才を語るなら押さえておかなきゃいけない。天才について語ることなんてあんまないけど…
以下雑文。2022年の自分について。
リアルタイムの音楽をぜんぜん聴けてないのには理由があって、まずは同人誌の作業のせい。これで半年以上はそのレーベルの作品にコミットする感じになってたので。そして、さらに大きいものとして、YouTubeの日常生活への浸食があります。要するに、今まで自分のスキマ時間を埋めていたものが、音楽から動画コンテンツに取って代わられたという。なんらかの作業をするときも、その作業の難易度にもよる(動画見ながらは無理でも音楽聴きながらならできる作業がある)けど、バックに音楽よりも動画を流していることが多くなりました。
そして……動画コンテンツってその内容に音楽も含んでいるので……動画を見ているとそんなに音楽に飢えることもないんですよね。音楽→動画というふうに、自分の日常生活の埋め方が大きく変化した一年でした。別に「リアルタイムの音楽」に限った話じゃなくて、そもそも触れる音楽の総量が相当減ってます。あと一応ゲームも今年はけっこうプレイしてて、そちらでも時間が取られていますが、まあこっちはいいでしょう。ゲームの音楽ってちゃんとオリジナルなものだし…。
あと……今年は料理をするようになりました。これも自分にとっては大きな変化。パスタとかの麺類に手を出したのも初めてだし、たぶんカレーも初。みりんも初めて買ったし……みりんってすごいんですね。みりんを使わないと実家でいつも食べてた料理の味が出ない。砂糖と醤油だけじゃだめなんですよ。知らなかった…。
料理に手を出した大きな要因は、外食に飽きたから(自宅周辺の飯屋をだいたい開拓し尽くした)というのもありますが、そもそも去年の10月から自分、休日がめちゃんこ増えたんですよね。それが根本的な理由だと思います。自分にとって外食って普通にご褒美で、だからなにか頑張ったときに行く感じなんですけど、休日が多いとあんま頑張った感出ないし、あと休日に慣れるとそもそも外出したくなくなるというね…。
そしてライフスタイルの変化にも通じるんですが、自分の身体や感覚の老いをめちゃ感じるようになりました。特に大きいのが味覚。味に飽きるのが超早くなった。これはガチ。今までスイーツなんていくらでも食えるよ~と思っていたのが、今ではコンビニスイーツの量でちょうどいいね……なんて感じる始末。良いのか悪いのか。いやいい側面もある……いままでなんとなく苦手だと思っていたものが普通に食べられるようになった。ピーマンうまいわ。この場合は飽きたというよりは”慣れた”なのかな。
とまあそんな感じの一年でした。YouTubeと料理。あとシンプルに余暇が増えて――でも増えた時間はそのままソシャゲに回っちゃって……それでもまあ同人誌2冊出したし相殺かな、という感じ。完全に遊び人のスタイルになってしまいました。
来年の目標は同人誌を3冊出すこと(ぶっちゃけできるか不明)。たぶんこれやると今年以上に現行の音楽追えなくなりますが、まあいいでしょう。現行の音楽は現行というだけで他に追うリスナーが多くいるので。10年代から作品って完全に飽和してて消費が追いついてないので、誰にも触れられずに終わる?作品が無限に増えているので……メジャーな作品は他人に任せちゃえばいいんです。という感じのスタンスにしばらくはなりそうです。
もし3冊ガチで出そうとするとお気に入り音楽まとめもろくに更新できなくなりそうですが、まあブログ自体はのんびり継続すると思うのでとりあえず。来年もよろしくお願いいたします。おわり。