Stereolab [Not Music]


 ステレオラブの10...何作目? 2010年発表。

ステレオラブ『ノット・ミュージック』(Duophonic / Drag City / Hostess) - COOKIE SCENE
立体音響研究室:s k n y s - s y n k s:So-netブログ

 ステレオラブとは2、3年前、ちょうど雪が降り始めたころに出会って... うーんどうして出会ったのか思い出せない。ジム・オルーク関連ってことで聴いてみたんだったかな。深夜にようつべで数曲聴いて、これいい!ってなって速攻でPeng!からCobra〜まで注文した記憶がある。そのヴェルヴェッツ直系のソングライティングと、トータスらシカゴ勢ともつながるクラウトロックゆずりのグルーヴが当時の自分にはまさにドンピシャでして。いやほんと、深夜にようつべ漁ってるとき自分めっちゃニコニコしてましたからね。大声で笑いながらやばい!やばい!って繰り返して。

 ステレオラブってその長い活動期間でいろんな方向性の作品を出しているんですけど、その中でずっと一貫しているものとして「心地よさ」があると思うんですよね。映画音楽の影響も大きいんでしょうけど。音色の荒々しい作品でもわりと最後まで聴けてしまう。まあでも基本的にはオシャレなポップセンスが根っこにあるんでしょうね。音楽性でいえば日本なら渋谷系だろうか。〜系というか、こっちは本場ですけど。





 本作はそんな彼女らの現時点での最新作(最終作)です。位置づけとしては前作「ケミカル・コーズ」のパート2にあたるそうです(CD取り込んだとき「Not Music」ではなく「Chemical Chords Part 2」って出ましたからね)。惜しいことに前作は未聴。CD届いたんですけどね!


 一聴して、全体的に骨太でダイナミックになった印象を受けます。今まではオシャレさと共に繊細さもあったりしたんですけど、今回はそのオシャレさを損なわずにより肉感的に、グルーヴィーになっています。単純に聴いていて気持ちいいし、楽しい。体が揺れる。いや、これは抗えないっすよ... どうしようもなくポップです。

 こういう作品を聴くとリズムの大切さを想いますね。ライナーによると本作は「ピアノとヴィヴラフォンを用いたインプロヴィゼーションから生まれた70のドラム・ループを元に発展させたもの」だそうで。聴くとたしかにリフとリズムの組み合わせだなーと感じます。人によっては「歌がないがしろにされてるんじゃないの?」と思われるかもしれませんし、まあ実際そう言われたらぼくもなんも反論できないんですけど。でもむしろリフとリズムでここまで気持ちよくなれるってすごくないですか?とも思うんですよね。

 個人的には「ダンス・ミュージックとしてのステレオラブ」がここにあると思っています。実際レティシアも本作を「ケミカル・コーズのナイト・サイド」と形容しているそうですけど。今までもリズムにはこだわり続けてきていましたけど、ここまでダイナミックになった作品はありません。




 ハイライトは前半5曲ですかね。アルバムの構成としては、真ん中(#6)に10分越えの大曲があって、それを挟み込むように3分くらいのポップソングが並んでいる、といった感じです。全体にスラーっと流れていくんですけど、特に前半は突き抜けたポップさがあると感じます。アルバムのイメージとしてはソニック・ユースにおけるソニック・ナースとか、ベルセバだったらライフ・パースートとか、そういう感じですね(つたわれ)。ふっきれた感じ。




 自分としては、ステレオラブディスコグラフィー上、これが一番ポップな作品なのではないか?とか思います。気持ちよさではトマトケチャップ皇帝のほうが上かもしれませんけど、楽しさなら断然こっちですね。てか個人的にはわりと到達点的なイメージもあって、これで終わりなら、それはそれできれいな終わりなんじゃないかな、とも思います。いや新作全然期待してますけど。それぞれソロなどで音楽活動は続けてるようですが。

 余談ですが、今作日本盤のライナーを手掛けているのはMonchicon! / Kikiの佐藤一道さんです(今年のはじめに亡くなってしまいましたが...http://rothbartbaron.com/post/109868445423/monchicon-%E4%BD%90%E8%97%A4%E4%B8%80%E9%81%93%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%92%E6%80%9D%E3%81%A3%E3%81%A6)。アルバムの丁寧な解説に加え、バンドの歴史が非常によくまとめられたものになっているので、これからステレオラブを聴こうという方には強く日本盤をお勧めします。



8.5