Antichamber(2013)感想・評価

 キューブを用いた一人称視点パズル・プラットフォーマー

 

 

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評価:8/10

プレイ時間:12時間

 

 抽象的なビジュアルのパズルゲーム。ストーリーはほぼなく、純粋にパズルを解きたい層向け。立方体のブロックを吸収&射出できる銃を使って謎を解いていく。

 

 言葉での説明はほぼ無く、プレイヤーはルール・法則を明らかにするところから自力でやっていかねばならない。また、ゲーム内では空間の繋がり方が不可思議で、特に始めたてはもろもろの把握に苦労するかもしれない。ゲームでしかできない表現で感動するが、それはそれとして混乱する。

 

 ところどころに教訓めいた文章+絵が配置されている。基本的にはパズルの後に配置されていて、直前にあったパズルの解法について言及しているようだった。これを読むことで自分の解き方が想定されたものであったかを確認することができる。……個人的にはパズルの前に配置して、ヒントとして機能するようにしてほしかった。

 

 とはいえ難易度は個人的には適当で、現状の仕様でも9割以上は自力で謎が解けたので、まあこれでも良かったのかな、とも思う。とはいえヒントがあれば間口が広がるのは確実で、だからオプションで難易度……というかヒントのあり/なしを決められればよかったかもしれない。上述の文章+絵の配置を調整するだけでいいはず(パズルの後に配置されていたものを、パズルの前に配置すればいい)。

 

 ……と、ここまで考えたけど、パズルの前にヒントを配置するということは、ここにパズルがあるということを示すことでもあって。それはパズルを探す部分すらも謎解き/ゲームとして組み込んでいる本作とは相性が悪いことに気づいた。おもろいゲームでよくある、なんとも思ってなかったものが実は謎だった、ってやつ。そういう体験を損ねてしまうからこういう構成になっているんだな。うーん難しい。

 

 自分が過去にプレイしたゲーム『Manifold Garden』の、一番の影響元だと思われる。抽象的・幾何学的なビジュアルにアンビエントサウンドデザイン。

 

 そう、パズルと離れたところではサウンド周りの設計が良く、長時間ゲームをプレイしても疲れないようになっている。プレイ中はほんのり意識に触れるくらいの存在感で、パズルに集中するとまったく気にならなくなるという、アンビエントとして理想的なあり方だ。日常生活のBGMとして本作のプレイスルー動画を使うこともできるだろう。

 サウンドは具体的には抽象的なドローン+ノイズ+環境音といった感じ。盛り上がるところではリズムも入る。パズルやマップに紐づいた音と演出もあって、例えばある場所では高所から落下し着地するときに「パシャ―ン」という水しぶきが上がる音が鳴らされる。他にも、普通の床だけど歩くとパシャパシャという水の音がしたり。時おり興味深い音の演出がされる。

 

 謎解きではたまにチートorバグと思われるようなやり方が正攻法だったりして腑に落ちないことがある。キューブの再生のタイミングをずらしてから移動させることでグループから分離させるやつとか。でもそれ以外のやり方で解けそうにないし、あれが正答なんだよね……みたいな感じで自分で自分を納得させる工程がある。後に同じ系統の応用問題が出てきて、じゃああれはあの解き方で良かったんだ、と思える構成になってるのは良い。

 「Failing Forward」終盤のタイミングゲーは、一見そういう腑に落ちない感じに思えるが、解法のシンプルさが突き抜けていて、クリア後は逆に美しく見えてくるという。あれは良かったです(自力で解けなかったので答え見たけど)。

 

 基本的にプレイを動機付けるものがないので、繰り返しになるけどパズルが好きな方向けかと。とはいえ別段パズルファンでもない自分が楽しみながらなんとかクリアまでいけたので……パズルの魅力だけでプレイヤーをクリアまで導けるってのは、パズルゲーとしては成功していると言っていいのでは。いい塩梅に難しいパズルを求めている人におすすめ。