Nicolas Lutz / MOJ mixes 9 - Live at Concrete

 

 

 定期的に聴きたくなる、ミックスマスターNicolas Lutzのミックス音源。自身が運営するMy Own Jupiterのミックスシリーズの9作目。絶妙な浮遊感のテックハウス?

 

 自作のなんちゃってミックス聴いた後に本職のものを聴くといろいろ気づかされることがある。コードやムードやテンポはもちろんだけど、なにより「グルーヴ」を繋いでるなという感じがある。改めて自分はメロディーベースの人間なんだなと再確認しちゃいますね。

 

 リズム隊が、グルーヴがしっかりしていればなにはなくとも「聴き続けられる」ということがわかる。ミックス序盤の24分あたりがまさに「グルーヴしかない」ような曲なんだけど、これが普通に気持ちいいんだよな。逆にメロディーなどの構造的な要素を抑えることで聴き手の意識をグルーヴにフォーカスさせている。聴いているとこの曲で「歌う自分」から「リズムを取る自分」に変化している(させられている)。一度そういう耳に変化すると、あとは良い「グルーヴ」が供給される限りはずっと聴いていられるという。

 

 そしてメロディー派の自分的には35分あたりからのMental Blox「Next Stop The Techstar」が最初のハイライトです。長尺なのでまだそんな消化できてないですが、とりあえず最初の一時間くらいまでは普通にめっちゃいいですね。このミックス。

 

www.youtube.com

 

 元ネタを探してわかることですが、こういうハウス・テクノ系のミックスってポップスのそれに比べてずっと可能性があるな~と思う。というのは、曲によってはテンポを変えることで魅力が損なわれるどころか逆に増すケースがあるんですね。ポップスだとなかなかそうはいかない……変速バージョンが原曲(というか元のテンポでの曲)の魅力を超えることがほとんどないように思う。

 

 先ほどハイライトとして挙げたMental Blox「Next Stop The Techstar」ですが、原曲ってもっとテンポが速いんですよ。自分の感覚だと、原曲テンポだと忙しなさが目立つのですが、このミックスのテンポだといい感じにゆらゆら~と浮遊感が出て……すごくいいと思うんです。

 

 同じようなケースって他にもあって(いや無限にあると思いますがあくまで自分の経験から言うと)、例えば『Skylax House Explosion』のDJ Sprinklesが担当したサイドでSameed「Bad You」という曲が使われているんですけど、これも原曲からずっとテンポを落として使われていて、それがまたすごく良いんですよ。いやまああくまで自分の感覚というか好みの話なのでアレなんですが。(というかぶっちゃけ、自分がどっちのバージョンを先に聴いたか(どっちに先に馴染んだか・慣れたか)、という問題なのかもしれませんが・・)

 

www.youtube.com

 

 これがどういうことかというと、今まで「テンポが速すぎて」「テンションが高すぎて」敬遠していた楽曲が、テンポを落として適切な流れに投入することでまた新たな輝きを示す……ことがあるかもしれない、ということなんです。ありませんか?そういう曲。ちょっとこれは元気よすぎてなかなか聴けないな……みたいになった経験が! もちろん逆パターンもあるでしょう。これちょっと暗すぎるんだよな~でもテンポ上げたらちょうど良くなるかも…?みたいな。

 

 こういう視点を得ることでまた音楽の楽しみが増える……というか、個人的には単純に選曲の幅が広がるのがデカい。エレクトロニカとか、それかもっとハードなやつとか、テンポ変えるとガラッと印象が変わる……曲もいっぱいありそうなんだよね。まあ普段歌ものからチョイスすることが多いので、そういうときは原曲の良さを活かしたいですが、クラブミュージックから選ぶときはこういう視点も持っておきたいなと思いました。

 

 個人的にはこういう、DJ的な視点で音楽聴くのってある種の縛りプレイだと思うので、あんまり持ち上げたくはないです、ということだけ最後に書いておきます。常にその音楽の用途(ミックスにおける使い道)を考えてる状態って単純にメモリの無駄遣いだし、それになにより余計なバイアスがかかりがちです。機能性だけを追うリスナーにはならないようにしたい。一言で言えば、「(最初は)作品をありのままに楽しみましょう」ということです。