Mac DeMarco [Another One]


 今までたまにログで言及していたマック・デマルコの新譜が出ました。一足早く収録曲を聴いてた自分にとってはようやく、という感覚があります。
 彼の今までの音楽性についてはこちら(http://ampmusic.jp/1056/)がわかりやすいです。自分はサラダ・デイズから聴き始めたので、それ以前についてはなんともいえませんが、少なくともサラダ・デイズは「ドリーミーなローファイ・サイケデリック・ロック」という表現がぴったり当てはまります。

 で、今作についてですが、音楽性については基本的にはいままでと変わりありません。先ほどの形容が今作にもそのまま流用できます。しかし多少の変化はあって、シンセだかのもわ〜っとした音が大きくフィーチャーされています。
 鍵盤の音は前作でも聴き取ることができますが、サウンドの中心はあくまでよれよれなギターだったように思います。それが今作では鍵盤の音の比率がずっと増して、ギターと対等くらいの存在感を示しています。表題曲なんかはその最たる例ですね。

ああ〜、何度聴いてもいいですね。この音色に一瞬でノックアウトされたんですよ。

 まあ貼った曲は極端ですけど、作品全体でこういうサウンドの変化があり、今までよりもドリーミーな感触になっています。

 サウンド面での変化は以上のようなものですが、曲の面でも微妙な変化があります。いやまあ微妙なんですけど、前作よりも洗練され、また歌の要素が強くなったように感じます。
 前作ではどの曲も印象的なリフなどのフックがありましたが、今作ではそれが若干控えめになっています。そのためもしかしたらなにも引っかかることなく、スーっとそのまま流れていってしまう可能性もあるんですけど・・・。その代わりに曲としてのまとまりは過去最高だと思います。なんというか、俳句とか短歌に通じるような洗練があります。ビーチ・ハウスなんかを引き合いに出してもいいかもしれません。
 全8曲中、3分に収まる曲が半数を超える6曲あります。まあ曲の長さがまとまりをそのまま表すということもないでしょうし、数でいえば前作にも同じくらいあるんですけど。


 全体として、とにかく丸くなった、という感じでしょうか。音も曲もとんがった部分はほとんどないです(特にサウンドについては、非常に丁寧に丸められているような印象)。とてもおだやかで、いつまでも聴いていられます。まあこの変化をよしとするかは人によるでしょうけど(ピッチフォークのレビューは訳を読んでみたいです)、自分にとっては理想的な変化ですね。正直いって、この路線でしばらく曲を作ってほしいくらいです。まあ人によってはキラーチューン不在と受け取ることもあるのかなぁ。先述の「Another One」なんか、自分にとっては直球でキラーだったんだけど。

 全曲すばらしいですけど、中でもお気に入りはジェリー・ペーパーばりのゆらゆらサウンドが聴ける「Another One」と「Without Me」です。またアルバムでいえば、個人的には現時点での彼の最高傑作となります。夏休みはこれを流しながらだらだら過ごそうと思います。



8.6