くうきにみつる [はにほへといろは]


音楽グループ『空気公団』と、放送作家、ミュージシャンとマルチに活動する
倉本美津留』による新しい取り組み=「くうきにみつる」。
日本語の持つ響きや重ね、情景機微を独自にとらえた、温かくぬくもりのある作品がついに完成しました!

くうきにみつる – 空気公団

 
 2013年に出たミニアルバム。今までスルーしていたものを先日ツタヤで借りたんだけど、これめっちゃ良かった(後からふつうに買った)。


 グループの経緯などはこちら参照(くうきにみつる(空気公団×倉本美津留)、フル視聴&先行配信をスタート! - OTOTOY)。まあそういうの気にせずとも音聴けばいいんですけどね。でも今回の場合は聴いてるうちに自然と興味が出てきた。というのもこのコラボ(空気公団倉本美津留)が、はじめてにしては不思議なくらいガッチリはまっていたから。


 倉本美津留については名前は見かけたことあるかなってくらいで、ほとんど知らなかった。放送作家として活躍していたそうだけど、もともとはミュージシャン志望だったらしい。そんな彼の作る曲や詞が、空気公団とすばらしい科学反応を起こしている。

 前述のリンクからクレジットというかトラックリストを拝借。

【Track List】
1. 6(詞・曲 / 倉本美津留)
2. いっぱい(詞・曲 / 倉本美津留)
3. ニジゴシ(詞 / 倉本美津留 曲 / 山崎ゆかり)
4. ほんとうの街につもる(詞・曲 / 山崎ゆかり)
5. はんぷく(詞 / 山崎ゆかり 曲 / 倉本美津留)
6. とても不思議なおじいさん(詞・曲 / 山崎ゆかり)
7. 返事(詞 / やなせたかし 曲 / 倉本美津留)

 分担は、割合としてはちょうど半々。とはいえメンバーの4分の3は空気公団なわけで、これはほぼ空気公団みたいなもんかな〜とか思ってたらいい感じに裏切られた。きちんと新しいグループの音になっている。

 全体にちょっとハイファイ?(ちょう感覚的に使ってる)というか、上に抜けていくような音になってる。サイダーみたいな、までいくと過剰だけれど、初夏のそよかぜみたいな、さわやかな、キラキラした音。そこに打ち込みっぽいドラムやバキバキ(!)ベースが加わって今までにない疾走感が生まれる。個人的には中後期のスーパーカーなんかを思い出してみたり。


 いやほんとに、突き抜けたなって感じがします。衒いもなにもない、ストレート。シガー・ロスの2008年作のジャケットみたいな。


 忘れちゃいけないのは、倉本美津留のボーカルですね。おおらかな、優しい声。そのやわらかい響きは、公団がメジャー2nd「こども」収録の「あかり」って曲で共演した荒井良二のボーカルにも通じるところがあります。

 でも倉本美津留の歌は、これよりも、もっとなんというか、わーっとした感じがあります(なんの説明にもなってない)。心が叫びたがってるんだ。って感じです。


 音についてばかり書いてきたけど、詞もいいんですよ。といってもこの良さを表現する術を持たないんだけど・・・。上のインタビューとかからなにか感じとってもらえたらなと思います。一応書いておきますけど、最終曲の作詞はやなせたかしです。これがまたよくて・・・ 曲的にも、余韻を残しつつアルバムをきちっと締めるというね。


 ここまで紹介してきたけど、アルバムの曲をひとつも貼ってないという。というのも、簡単に聴ける(調べてすぐ出てくる)のが4番の「ほんとうの街につもる」くらいしかないからなんですけど。いや、この曲が嫌いというわけではないんですけどね。

 ただ個人的には、この曲が一番従来の空気公団色が強いなと思っていて、というのはつまり、空気公団ではない「くうきにみつる」というグループとしての魅力が、この曲ではあまり感じられないかなーと思うんです。

 自分としてはこれではなく、アルバム冒頭の3曲あたりがこの作品をうまくレペゼンしてるんじゃないかなと思う。いやまあ、従来のファンに対するアプローチとしては正しいと思うけれど(邪推)。

 まあ他の曲が試聴できないわけではないです。ダイジェストもあがってますし、サウンドクラウドにあがってるラジオの音源でもちょっと聴けます。興味があればぜひ。



 考えてみればもう2年前の作品なわけで、けっこうな間スルーしてたことになりますが、ちゃんと出会えてよかったです。とてもポジティブな、痛快と言えるような作品です。このグループでの続編にも期待してますし、また空気公団には今後も新しい音をどんどん作っていってほしいです。
 個人的には鈴木惣一郎(ワールド・スタンダード、Soggy Cheerios)なんかとも合うんじゃないかなと思ってて、勝手に期待してます。



8.5