再構築で味方を増やしつつ進み宿命を乗り越えるシミュレーションRPG。

個人的お気に入りキャラ。飛行+魔防持ちは便利。いやキャラみんな好きだけどね?
評価:8 /10
プレイ時間:4.5時間
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— sunori (@sunori2gou) 2023年9月3日
sunori氏(みずのみば)の新作。過去に同氏による『キャンディリミット』という作品を遊んだことがあり(10年前ってマ?)、それがおもしろかったので更新を定期的にチェックしていた。上に貼った新作発表ツイもリアルタイムでいいね!していたのだけど、結局今頃になって触ることに。
シミュレーションRPGという個人的にあまり触ってこなかったジャンル。本作はコントローラーに対応していて、ダメ元でPS4コン刺したら普通に動いたので快適にプレイさせていただきました。
特徴は「ゲーム全体で1マップ(=ステージ)なこと」と、「再構成スキルで味方の亡骸を蘇生できること」だと思う。
縦に長い大き目のマップがあって、70ターン以内にマップを攻略することが目標。1マップということでステージの切り替えがなく、それに伴う補給などもない。敵の配置は固定、つまり得られる経験値も総量が(ある程度)決まっていて、だからある意味ではリソース管理的な考え方も有効となる。
ひとつのマップを何度もリトライしながら攻略していくプレイ体験はシミュレーションRPGながら死に覚えゲーのような感じである。頑張れば初見でもクリアできるらしいが、基本的な難易度はけっこう高めで、きちんとゲーム内の情報を確認・利用していかないと思うように進めない。しかし救済措置的なシステムとして引継ぎボーナスがあり、ゲームオーバーになるとリトライ時に(後述する)再構成に必要なポイントを貰えるので、繰り返し挑戦するごとにプレイには余裕が出てくる。
再構成スキルの存在はこのゲームの目玉と言っていいだろう。ゲームは縦長のマップ=戦場において、生き残っているのがもはや主人公の勇者だけ、という状況から始まる。戦場にはともに戦っていた仲間たちの亡骸が点在している。
ユニットにはそれぞれクラスが設定されていて、主人公のそれは「テセウスの造船士」という特別なもの。プレイした自分もあんまりよく分かっていないが、このクラスのユニットだけが使えるのが再構成というスキルで、「Re」というポイントを消費することで味方の亡骸を再構成し蘇らせることができる。このポイントは敵を撃破すると貰えるのだが、初期値は0で、1キャラを再構成するのに10~30Pt必要になるため、初回のプレイほどリソースがかつかつで難易度がシビアになる。
補給のほとんどない本作においてもっとも重要なのがこの味方の亡骸で。亡骸を活用していかないとまったく首が回らないゲームバランスとなっている。HP・MPの回復手段がほとんどないので、亡骸の再構成や回収(再構成に必要なReポイントがない場合は「回収」コマンドで亡骸をMPに変換できる)がその代わりとして機能しているのだ。味方を復活させても主人公のHPは回復しないが、主人公陣営のHPの総量は増える。HPというリソースを獲得しているという意味では亡骸の再構成はHPの回復と同じくらいの価値を持っている。
特徴と呼べそうなものは上記の2点だと思うが、それら以外にも単純にレベルデザインがしっかり為されていると思う。マップの序盤部分だけでも「物理(防御)と魔法(防御)の使い分け」「地形効果の活用」などの作中のセオリーを段階的に掴めるように、プレイヤーを導くようにマップが作られている。
といった感じで、ゲーム部分だけでもよくできているのだけど、そこにうまく物語的・キャラ的なおもしろさを絡めているのが本作の魅力だ。基本的にはリトライ前提の難易度だが、それは作中の状況の厳しさをそのまま反映している。そしてプレイヤーからしたら当初はマジで赤の他人といった感じの(再構成させた)味方ユニットだが、リトライを重ねていくにつれて徐々に愛着がわいてくる。
キャラクターたちはね、本当によくわかんないんですよ。まず名前が変だし(キモスンギ伯爵とかTERIYAKIとか)、はじめて再構成した時点ではマジで情報がない。キャラ名やクラス名、スキルの説明とかからかすかにフレーバーが香るくらい。それが、ゲームクリアあるいはゲームオーバーによって解放される「魔女偉人伝」ではじめてちょっとしたプロフィールが明かされる。そう、偉人なんですよこいつら。偉人であり盟友である彼らがみんな死んでるの。ゲーム開始時にはもう。
(ちょいネタバレですが)魔女偉人伝によって明らかにされる過去と繰り返しのプレイによって育まれた絆が、True hardモードで「アルマが」キャラを再構成することで生ものとして息を吹き返して爆発するんですよ。これがね、めちゃくちゃ熱い……。最後、立場の入れ替わったグリーゼとの掛け合いも……TERIYAKIの「……ペコリ」とかさあもう~~~~~!! このエモの爆発までのもろもろの積み重ねがごく自然に行われているのが本当に上手いと思います。詳しくは語らないんですけど、ぜひノーマルを一度クリアしてTrue hardモードに挑戦してみてほしいです。
要するに高難易度やゲームシステムがしっかりとストーリーに、カタルシスに結び付いているんですよね。個人的にはこの「システムがストーリーと結びついている」という点だけでも名作評価になっちゃいます。また、マップは固定ながら再構成するキャラの選択によってある程度ナラティブ的な体験も生み出されていると思います。
ミニマルながらあらゆる要素が有機的に結びついた名作だと思います。このサイズ感でこれだけの物語的な熱量が生み出されていることに驚く。
繰り返しのプレイが物語の重さに結びつくところは個人的に『帝国魔導院決闘科』を思い出すし、プレイヤー側に作中世界や過去についての情報が一切ないところからもろもろ探っていく感じはブレワイなんかにも通じるかも。
過去作と世界観が繋がっているらしいのですが、『キャンディリミット』をプレイしたのがもう10年前なのでなにも覚えていないのが少し惜しかったかも。問題なく楽しめたとは思っていますが。
時たま「オリジナル」という概念が出てくるので、再構成の前後で物事を区別しているらしい。テセウスなんてワードを使うくらいだからパラドックスとかもいろいろ考えられているのだろう。こういった世界観まわりも魅力です。
シミュレーションRPG好きや厨二的な(誉め言葉です)ケレン味を求めている人におすすめ。いいゲームでした。