レイドバックから見るLed Zeppelin

 自分流のLed Zeppelinの音楽の楽しみ方と、あとLed Zeppelinが『最強』のバンドである理由について書いていきます。(『最強』???)

 

 

 今回の記事を書くきっかけとなったものがあります。これ。

 

 

rollingstonejapan.com

 

 最近はすごく釣りをエンジョイしてるらしい唐木元さんの書いた記事。単純にすごくおもしろいのでまずは一度読んでみてください。

 

 メインのテーマは音楽用語としての「レイドバック」。「音符をわざと遅らせて演奏する」という意味の用語で、この「レイドバック」が90年代後半から流行・拡張していく流れについて記事中で簡単に書かれています。

 

 

 

(ここから前置き)

 自分がレイドバックをなんとな~く掴んだのは高校生の頃。いわゆる名盤というものに手あたり次第に触れていた時期で、『Pet Sounds』を初めて聴いて???となった一年後にまた聴いて良さが分かって感動してたりしていたのだけど、そのときに触れた作品の中にディアンジェロの『Voodoo』もあった。

 

 当時の自分はけっこう真面目で、世間的にめちゃくちゃ評価の高い作品を自分が聴いてみて良い!と思えなかったとき、(自分の感性の方が間違ってるんか???)などとも思いつつ、その良さが掴めるまで(時間をかけて)繰り返し聴く、というようなことをやっていた。

ミスチルから音楽にのめり込んだ人間なので、J-POPに比べるとずっとシンプルでクールな海外の音楽を楽しめるようになるまでずいぶんかかったのだった。中でも『Pet Sounds』と『Voodoo』は良さが掴めるまでに時間がかかった印象がある。)

 

 で、長い時間をかけて『Voodoo』の良さ……特にレイドバックした演奏の気持ちよさが掴めるようになったのだけど、そうしたら今まで(まあまあいいんじゃない?)くらいに思っていた作品がめちゃくちゃ良く聴こえてきたりしたのだった。レイドバックの要素を含んだ名盤が世には多くあり、そのレイドバックの部分を自分は見落としていた、ということなのだろう。あれ、この作品こんなに良かったっけ……?と作品・アーティストを見直すことがたびたび起こった。

 

(前置き終わり)

 

 

 

 レイドバックを掴む前後で自分の中での評価が大きく変わったバンドがあって、その一つがそう、Led Zeppelinだったのでした。

 

 ……ということで、ここからはレイドバックを掴んだ耳で聴くとめちゃくちゃ良く聴こえるLed Zeppelinの楽曲を紹介していきます。

 

Misty Mountain Hop

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 『IV』の5曲目、もといB面の1曲目。一般的にバンドの代表作とされるアルバムで、「Black Dog」「Rock and Roll」といった有名な曲が収録されている……んだけど、ミスチルから音楽にハマった人間からするとそれらの曲はぶっちゃけ地味に聴こえる(伝統的…)。曲がシンプルな分、相対的に演奏のグルーヴが引き立つということもあるとは思うけど…。

 楽曲が大胆に展開する分、A面よりもB面の曲のほうが聴きやすいと思っています。特にめちゃ重いグルーヴも兼ね備えた「Misty Mountain Hop」と「Four Sticks」が強いかなと。まあレイドバックを掴んだ耳だと前述の2曲(「Black Dog」「Rock and Roll」)も最強に聴こえるんですけどね~…

 

 

 

 

 

Dancing Days

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 5作目『Houses of the Holy』のこれまたB面1曲目。同じリフをずっと繰り返すというシンプルな曲なのだけど、演奏がとにかくグルーヴィで延々と聴き続けてしまう。

 曲のアタマから飛び出してくるギターの「ギャー↓ギャ↑ギャー↓ギャゥゥウン↑↓」というリフの、最初のギャー↓がすごく伸びて、粘って聴こえるんですよね。ということは2音目のギャ↑がレイドバックしている、と言えるのかな。

 プログレちっくな曲があったりとバラエティに富んだアルバムの中ではこの曲と「The Crunge」、「D'yer Mak'er」がレイドバック感が強いと思うのですが、CDだとこれら3曲が連続してるのでもうお腹いっぱいになってしまいます。

 

 

 

 

 

For Your Life

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 1作飛んで7th『Presence』より。バンドサウンドのヘビーさはこのアルバムで頂点を迎えたように思います。

 この曲も上の「Dancing Days」と同様にリフを繰り返して進む曲ですが、やはりギターのリフの1音目が異様に伸びる。フーセンガムか、いやトルコ風アイスだ、というくらいに伸びるのですが、これがまた気持ちいいんですよね…。あと休符部分……ギターとベース・ドラムが鳴らされていない部分もめちゃ存在感がある(シェイカーは常に鳴ってるけど)。一音一音がはっきりと鳴らされているからこそだと思うんですけど。

 バンドのディスコグラフィー上でもストイックな作品で、キーボードレスのシンプルな編成、かつ最小限の音数で超ヘビーな演奏を聴かせます。この曲くらいレイドバックしてくるともう『Voodoo』収録曲と地続きに聴くことができると思う(休符に目が行くところも同じだ)。

 

 

 

 

 

 自分が思う、Led Zeppelinが『最強』のバンドである理由……それはバンドのグルーヴの強靭さに尽きます。ここまで重く、そして粘り気のある演奏が他にあるでしょうか(いやない)。

 「音符をわざと遅らせて演奏する」レイドバック……その多くはルーズな≒弛緩した・リラックスした空気を演出するために用いられているように思いますが、Led Zeppelinのレイドバックは、グルーヴのヘヴィさを強調するために用いられているように思います。重いサウンドがより遅く鳴らされることによって重さが強調されているのです。それに加え『Presence』収録曲に至っては、レイドバック部分を極限まで伸ばすことにより、(どこまで伸びるのか)という緊張を呼び起こしてもいます。

(さらに加えるならオンとオフ(音符と休符)のメリハリをバンド単位で=全楽器で大胆につけていることもレイドバックと組み合わさって相乗効果を生んでいるように思います。)

 

 いやまあグルーヴだけじゃなくて曲もめちゃくちゃいいんですけどね。個人的に曲を堪能したいときは『Physical Graffiti』(のディスク2)を聴くことが多いです。でもやっぱ『最強』という、ある種剣呑な言葉がこのバンドの形容に使われるのは、そのサウンドとグルーヴが異様にヘヴィだからなんだと思います。

 

 

 

 

 

 ……と、ここまでLed Zeppelinについて書いてきましたが、レイドバックを掴むことですごく良く聴こえるようになった作品は他にもあります。以下では中でも特に!というやつを紹介していきます。

 

Sly & the Family Stone『There's a Riot Goin' On』

 『Voodoo』を挙げたならばこれも挙げねばなるまい、という熱いのか冷たいのかよくわからんファンク。リズムボックスがジャストで、それ以外(特にギター)がダルダルレイドバック。ギターのワウ?がすごく効いている。ギターの発音の、音量のピークがペダルによってずらされているんですよ。なにもなければギターって弦を弾いた瞬間が音量のピークで、あとは減衰するだけなんですけど、それが少し後ろにずらされている。それによってめちゃレイドバックを感じるという…

 

 

 

Parliament / Mothership Connection (Star Child)

 P-FUNKの代表格。この曲のグルーヴの快感はもろに『Voodoo』収録曲のそれに通じるものです。無限に聴ける。たぶんこれを無限にリピートすれば無限に作業ができると思います。

 

 

 

The Rolling Stonesのもろもろ

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 ローリング・ストーンズも個人的にわからん音楽の筆頭だった……。今では普通に楽しめるし、最高のバンドだとも思っているんですけどね、それもこれもレイドバックを掴んだおかげですよ! 

 …まあそこまで書かなくてもいいんですけど、でも実際、ストーンズはレイドバックが掴めていない状態で聴いてもよくわからんくない? 逆に掴めてるとなんだこれ…(困惑)ってなる……キースのギターの、常にゆるくレイドバックしたようなヌルヌルギターとか意味わからんってなります。ツェッペリンの鍛えられた、みんなが同じ方向を向いて作られたグルーヴとはぜんぜん違いますよね。きかん坊が集まってそれぞれが好き放題やった結果の、ランダム方向に(?)レイドバックしたグルーヴという感じです。一番プリミティブな感じがあります。

 

 

 

はっぴいえんど / 十二月の雨の日

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 日本勢。イントロ・間奏部分で上で挙げたツェッペリンの「Dancing Days」と同じく、バンド全体で一時的にレイドバックする=粘る部分がある。ベースに集中して聴くとわかりやすいかな。

 たぶんブルースをヘヴィにやろうとすると、こういうルーズではない、「重い」レイドバックが生まれていくんじゃないだろうか。でBlack Sabbathからストーナーロックまで、「重い」ロックが派生していく…みたいな。いや自分この方面明るくないんですけど。

 

 

 

ミツメ / 忘れる

 オンとオフのメリハリがはっきりとついたペナペナファンク。レイドバックしてるのかはわからないけどグルーヴがこの楽曲の肝であることは間違いない。楽曲はあきらかにグルーヴを志向しているのにサウンドは決して重くならないのがこのバンドのおもしろいところ…かもしれない。

 

 

 

Maneige / Bullfrog Dance

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 番外編。ケベックの、おそらくクラシックやジャズを正統に学んできたであろうバンド(つまりプログレ勢)によるファンク要素のある曲。前にも紹介したことがあるのだけど、すごく好みなのでもっかい紹介。中盤からやや怪しい雰囲気になり、やがて熱いソロ合戦になだれ込んでいく。変な曲。

 

 

 

 

 

 

 

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 個人的にはやはり『Voodoo』が大きくて、あれが半ば無理やりに自分の耳をレイドバックへと開いてくれたように思います。自分以外にもそういう人はけっこういるんじゃないでしょうか。それまであまりブラックミュージックに触れてこなかったリスナーの耳を、リズム方面に一気に開発・調教した作品……と、そんなような印象を持っています。まあ『Voodoo』一枚というよりは、クエストラブやJ・ディラらによるソウルクエリアンズの一連の仕事が、ということになるんでしょう。

 

 なんとなくですが、J-popって(一定の演奏力が求められるからか)レイドバックを取り入れた楽曲が少ないように思っています。自分が聴いた中ではくるりの『アンテナ』(J-popか?)くらいしか浮かばないような…。まあ日本産のブラックミュージックを掘ったこともないのでここは話半分に読んでほしいのですが。

 そんな中では、近年ではcero『Obscure Ride』が邦楽シーンの中で『Voodoo』と似たような役割をこなそうとしていたのかな?と勝手に思っています。リスナーを啓蒙する役割(すごく高潔だと思います)。いやディアンジェロにはそんな意識なかったんじゃないかと思いますけど…。なんにせよ、そこで蒔いたタネが今後どのように花開くのか、とても期待しております。というか『Obscure Ride』も2015年……もう5年も前の作品なので、自分が気づいていないだけでとっくに芽吹いているような気がします(邦楽のアンテナが低すぎる)。なにかおもしろい邦楽があったら教えてください(懇願)。