2017年よく聴いた音楽

1. Solange『A Seat at the Table』(2016)

SOLANGE / ソランジュの話題作『A Seat At The Table』を読み解く | bmr
ソランジュとビヨンセ ある姉妹の2016年の「プロテスト」 | WIRED.jp
ソランジュの『A Seat at the Table 』はボーカルが素晴らしくて、聴き込むほどに良くなる傑作だった|柳樂光隆|note
 このアルバムにまつわる社会的なことについては、自分は特に言えることはない(このアルバムに限った話ではないけど…)。どうしようもなく実感がない。べつに情報を意識して拒んでいるわけではないけれど、意識しなくても頭に入ってくるほどにそういう情報が自分の日常にあふれているということもない。それらを理解しておくことが本作から得られる感動を増幅することにつながるかもしれない……というのは、あるけど……正直行動に移すまでの興味や情熱はない。
 ただ、そんなこととは関係なく、本作のサウンドは自分にはとても美しく聴こえてくる。反復……なにをどのくらい繰り返すかということはポップにおいてとても大切なことだと思うのだけど、本作ではそれが研ぎ澄まされた結果、美しさを宿すほどになっている。
 作り込みの果てに比較的控えめなアレンジにたどり着いた本作だけど、その控えめさがなにかを抑えた結果ではなく、ごく自然に出てきたもののように感じられるところもいい。「抑える」という行為はよくも悪くも力が溜まるものだけど、本作にはその様子がない。必要十分で、自然体…… それが、自分が2017年に本作をよく聴いた一番の理由のように思う。
 素直な、落ち着いた対話を求めているかのような空気をもつ本作は、海を隔てた島国においてもその誠実さを失うことなく響いていた。








2. Will Long『Long Trax』(2016)

サウンドクラウド:試聴を、ぜひスピーカーで聴いてみてほしい。
 コードの響きと組み合わせの追求によって生まれたであろう本作は、ドローン・アンビエントとディープ・ハウスのあいのこのようなサウンドで、癒し系というよりはもはや瞑想系と言ったほうがしっくりくるかもしれない。まあ某有名RPGでは「めいそう」するとHPがめっちゃ回復しますが…(どうでもいい) この方向性の表現における到達点だと思います。コードが流れた瞬間、時間の流れが変わります。








3. ayU tokiO『新たなる解』(2016)

ayU tokiO『新たなる解』 - 青春ゾンビ
 決して完璧なアルバムとは思わないけど、完璧としか思えないような曲が数曲入っていて、それらは明らかに彼にしか作れないものなんすよ…。「夕暮れ時のアニメの再放送」、あるいはそれが流れているお茶の間という場を想起させるサウンドも魅力的で、1stアルバムにして個性が確立されています。








4. 小坂忠『もっともっと』(1972)

小坂忠&Four Joe Half「もっともっと」(1972.7.25 マッシュルーム CD-7038-Z) | すりいこおど-1970年代周辺の日本のフォーク&ロック - 楽天ブログ
 自分が特に素朴で牧歌的なものが好きということもあるけれど(11月に出会っておきながらこの位置につけているのだから…)、それを差し引いてもすばらしい演奏が詰まっています。俳句や短歌のような味わいで、時代に左右されることのないサウンド。個人的にははっぴいえんどの3rdや憂歌団のライブ盤に並ぶ作品。








5. Khotin『New Tab』(2017)

優しく撫でる電子音 〜 Khotin『New Tab』〜|近藤 真弥|note
 なによりもまず音色が、音自体が魅力的な作品。本作を聴くたびに、曲ではなくまず音に感動していた、自分が音楽に興味を持ち始めたころの感覚を思い出します。『Music For Airports』、そのバリエーションの最新版と言えるのでは。








6. Pavement『Terror Twilight』(1999)

 「Spit On A Stranger」や「...And Carrot Rope」など衒いなくポップに振った曲や「Major Leagues」のようにシンプルさを押し出した曲などいろんなタイプの曲が収録されているけど、今作で一番輝いているのは凝りに凝った構成の曲だと思う。ぶっちゃけると「You Are A Light」「Speak, See, Remember」の2曲。元から世捨て人的なイメージがあったが、今作で彼らは仙人の境地に達し、そして解散してしまう。欲を言えば、彼らでなくてもいい、この方向性をもう一度突き詰めてほしい。








7. V.A.『プリティーリズムスペシャルコンプリートCD BOX』(2015)

 これ、CD10枚組なんでちょっと卑怯(ちょっとか?)なんですけど、個人的にははずせないので… 王道のアイドル向けポップスで歌詞もストレート。ジャンルに括れるほどの特徴はないけれど、心の芯の部分に直接響いてきます。今でも不意に聴かされたら泣いてしまう自信がある(そんな自信はいらない)。とりあえずアニメを観てください。話はそれからだ!








8. Tyler, The Creator『Flower Boy』(2017)


【レビュー】Tyler, the Creator - 『Flower Boy』| 車の中で1人 - FNMNL (フェノメナル)
 個人的にATCQのセンスを一番いい感じに継いでると感じているタイラーの新作は、メロウなムードが基調となったとても馴染みやすい作品でした。一度流すとついそのまま最後まで聞いてしまう絶妙な心地よさ。メロウではあるんですけどどこか清涼感もあって……なんかコーラスとかトラックとか、ストレートに綺麗な瞬間がいっぱいあるんですよね。今までで一番素直で真っ当な作品じゃないでしょうか。「Boredom」はスーパーカーの「smart」と並んで人生のサウンドトラックになってしまった。









9. King Gizzard & The Lizard Wizard With Mild High Club『Sketches Of Brunswick East』(2017)

 前からKing Gizzard〜(長すぎ)がアホみたいなペースで作品出しててしかもどれも良さげだぞ〜という話は聞いていましたけど聴くのはこれが初めて。Mild High Clubとの共作ということで他の作品とは音楽性が違っているのかもしれないですけど、とりあえず今作は最高でした。。
 往年のプログレやらジャズロックやらを想起させるキーボードやフルートの暖かな音色や、伸縮自在のしなやかなアンサンブルも最高なんですが、なにより全編通してメロディが絶品です。懐古趣味〜なんて言われるかもしれないですけど、いや、いいものはいいですよ…








10. Meat Puppets『Up On The Sun』(1985)

Reutopia-Music: Meat Puppets : Up On The Sun
 2017年の個人的ちゃかぽこアルバム。いやなんか普通に「ちゃかぽこ」って言葉使ってますけどみなさん使います? 
 自分、例えば初期のトーキングヘッズとか、邦楽ならINU戌年ですし!)とかのなんというかせわしない音楽が好きで… もう少し頑張って言葉にすると、裏拍が表拍と同じくらい存在感があって、16分やら32分やらの細かい音がどんどん入ってくるようなリズミカルな音楽が好きなんです。こういうやつ。で、そういう音楽を探してて2017年に出会った作品がこれです。
 音的にはせわしないのに全体としてはのどかというか気怠い空気になっている不思議。一応名盤として認知されていると思うのですが、ここまでいいとは思わなかった…。夏から秋にかけて本当によく聴きました。








11. VRTUA『LOUD FORMATIONS』(2017)

LOUD FORMATIONS | BEER ON THE RUG
 久しぶりにBEER ON THE RUGのバンドキャンプを覗いて、なんだこのPC MusicというかSOPHIEみたいなアートワークは…と思って聴いてみたところとても良かった作品。
 ゲーム機でも使われていた音源を使っているということで音色の時点でもうノックアウトといった感じなのですが、楽曲も非常に充実しています。イメージ的にはMAXOやGraham Kartnaと同じ枠なのですが、なんだかんだ毎年この手のサウンドの作品がリストに入ってくるあたり、ゲーム音楽からの影響すごく受けてるのかな自分。。









12. Steve Mason『Meet The Humans』(2016)


 ぬあ〜、改めて聴き直してみてわかりました。自分はリバーブに弱い。とことん弱い。おそらく原因はRadioheadの『OK Computer』だと思いますが、もう今作の1曲目のイントロ聴いただけであああ〜〜〜〜〜ってなりますもん。もうだめだ。
 …とまあ、自分の性癖もあるんですけど、それを抜きにしても今作は充実していて、彼のキャリア史上でも最も広い層に響く作品になっていると思います。昨年(というか一昨年)のCass McCombsやSteve Gunn同様、曲がめちゃくちゃいい。公園とかアリーナとか、どこか開けた場所で聴きたい音楽です。








13. Segue『Over The Mountains』(2016)


Over The Mountains | Silent Season
LINUS RECORDS/Segue : Over The Mountains [CD]
 バンドキャンプでWill Long氏が熱いコメントを寄せているSegueの2016年作。今までそんなに触れてこなかったダブ・テクノですが今作は特によく聴いていまして、その理由としては楽曲がポップミュージック的な構成をはっきりと持っているということが大きいのかなと。ということでこの手の音楽にあまり馴染みがないような人にも今作は聴きやすいのではないでしょうか。Will LongはもちろんVoices From The Lakeなんかが好きな人にも。気が付くと新たな光景が広がっています。てかこの人もバンクーバーなのか。。








14. Pepe Bradock『Nr. 60 Roof.fm』(2013)

Nr. 60: Pépé Bradock (Atavisme) – ROOF.FM
 内容については過去に数回触れているのでここではあまり書かないですけど、このミックスの中盤部分はよく聴いていました。繋ぎはそんな滑らかでもないんですけど、単純に選曲がとてもポップなのであまり問題になりません。しかしブラックミュージックと「和」の空気を(強引ながらも)接続させた作品って存在自体がわりと貴重なのでは…と思います。








15. 豊平区民TOYOHIRAKUMIN『MUSIC IN THE AIR』(2014)

MUSIC IN THE AIR | Dream Catalogue
 蒸気波要点ガイドで発見した作品。夜の空気を親密に演出してくれます。ヴェイパーウェイブでたまに見られる悪ふざけはここにはなく、ただやわらかい音色とノスタルジックな感覚が広がっています。








16. DJ Sports『Crack Mix 164』(2017)

Crack Mix 164 - DJ Sports by Crack Magazine | Free Listening on SoundCloud
DJ Sports : Modern Species | TURN
 いいのか……オリジナルアルバムではなくミックスの方を取り上げても…… しかし実際よく聴いたのはこっちの方だったので。。 アンビエントに始まりジャングル〜テクノを経由して朗らかなダブに辿り着く本ミックスですが、キラーチューンしかなくない?というくらいに常に良くて、それぞれのジャンルのベスト盤(ただしミックスしてある)みたいな感じです。彼の名刺代わりになるような作品なんじゃないかと。








17. シャムキャッツ『Friends Again』(2017)


 シャムキャッツ、昔は昔で無敵感のようなものが出ていて良かったんですけど、『AFTER HOURS』〜今作で普遍的に良いメロディやアレンジをモノにした今の彼らの方が明らかに無敵ですよね、という。もはや隠居生活してる孫悟空みたいな、そんなイメージです。ラスボス倒した後の勇者みたいな… たぶんまた、時間を置いてから聴いたらきっともっとよく感じられると思う。








18. 花澤香菜『Opportunity』(2017)

 声優…というよりはその周りに集まるミュージシャンの方々に目が行く人間なんですけど、この人は独自に音楽活動をしている声優の中でももう、ブラックホールというか、特異点というか… 今作(というか先にシングルで出た『透明な女の子』)では空気公団も参加してますし。シティポップというジャンル・シーンがあるとして、その中心の一つは確実に彼女だと思います。








19. VAPERROR『Mana Pool』『POLYCHROMATIC COMPILER』(2014・2015)

 これも蒸気波要点ガイドで発見した作品ですね(ありがた〜)。蒸気風味のLoneと勝手に思っていますが、ぶっちゃけヴェイパーウェイブという文脈を取り払った方が素直に楽しめるのでは、と思わなくもない。鮮やかで運動神経のいいエレクトロニック・ミュージック。








20. N.B.W『flash back girlz』(2017)


 pixiv主催のネット音楽マーケットイベントであるAPOLLO(アポロ)で見つけた作品。6曲というサイズながら自分の琴線にビシバシ触れてきて、入れざるを得ませんでした。作者さんのツイ垢を見させていただいたところ、Lampのツイをふぁぼったりされていて、もう期待がすごいことになっている。今後もチェックしていきます。








 今回は今までと少し形式を変えて… 2017年のベストアルバムはまとめないことにしました。理由は2017年の、リアルタイムの音楽をあまり聴けてないから。結局、自分の興味の湧いた作品から先に聴いていくので…(そして2017年の作品だからという理由で興味が湧く訳でもなく…) もちろん既に好きなアーティストの新作はチェックしますけどね。 そして今回、これの代わりといってはなんですけど、作品の発表年度を名前の隣に入れておいたので、なにかの参考にしてもらえればと(逆になんで今まで入れてなかったんです?)。
 後ですね、今回このリストを作成するにあたってまず60くらいの作品を候補として選んだんですけど、ここに挙がっていない40くらいの作品についても一言コメント付きで後日まとめたいと思っています。たぶんこの機会に触れておかないと…今後もう触れる機会がもうないような気がするので… 有言不実行が板につき始めている自分ですが、うまくいけば1月、遅くとも2月中には上げる予定というか……気持ちです。気持ち。

 とりあえずは今回もこのリストが作れてよかったです。2018年もいい音楽に出会えればなと思います。