Grizzly Bear [Friend EP]


 アメリカはブルックリン、ニューヨークを中心に活動しているロック・バンドによる2007年作。
 自分がちょうど海外のインディーに目を向け始めた頃に出会ったバンドで、ダーティ・プロジェクターズ、ディアハンターらと共に、自分の価値観に強く影響を与えている。
 今作は2nd、3rdの中間の時期に発表されたEPなんだけど(EPといってもリミックス含め10曲以上もある)、音楽性もちょうどその中間といったところかと思いきやそうでもなく、ほんの少しだけ(?)ぶっ飛んでいる。具体的にどういう感じかというと、とにかくパワーに満ちあふれている。個人的な印象では彼らは2nd→3rdでより力強く、また内側から外側の方向へと音楽性を変えていったと思ってるんだけど、今作の音はその3rdよりも強力でかつまた外へと開かれている。2ndと今作の中間が3rdというか。

 うーんちょっと違うかな。パワー、スケールといったものは今作も3rdも同じくらいで… 今作のパワー・スケールをそのままに緻密さを増していったのが3rd「Veckatimest」だろうか。明らかなのは、今作の音が2nd、3rdのどちらよりもラフで、それゆえに曲のもつパワーがよりダイレクトに伝わってくるということ。もともとドラマティックな曲を作っていましたけど、今作ではその剛速球のストレートのようなアレンジがめちゃくちゃにハマっていて、もうとんでもないことになっています。ここまでカタルシスのある音楽はそうそうないです。

(大音量推奨)

 トラディショナルなフォークを演っていたグループが初めてエレキギターを手にしたときのような(なぞの例え)… サイケデリック・ロック全盛期のようなアホみたいなパワーに満ちあふれています。特に冒頭3曲はすごいです。

 不満があるとしたらオリジナルの新曲が少ないということくらいでしょうか。「Granny Diner」一曲ぐらいしかないのでは…と思ってたらこの曲も2nd「Yellow House」の日本版ボーナストラックだったようで。

名曲。

 作品の流れについて。グリズリー・ベアの作品としては、#6「Granny Diner」まででひとまとまりのように感じます。一応、#10の「Deep Blue Sea」も締めのような役割を担ってると思いますが、その後も放っておくと隠しトラックみたいなのが流れてきてちょっと雰囲気が…となってしまいますし。別アーティストのリミックスとなっている7番以降は、それまでの流れとはまた別に楽しんだ方がいいかもしれません。



 個人的にはこのFriend EPとVeckatimestの二枚の存在により、冗談でなく「アメリカン・インディの至宝」扱いをしているバンドなのですが、最近彼らはどうしているのでしょうか。元気? 別段ニュースとかチェックしているわけではないのでわからないんですけど、今のところ最新作であるShieldsが2012年なんで、そろそろ期待し始めてもいい頃のような。

 EPのくせに40分以上あるし、しかもそんな内容的にまとまってる訳でもないですけど、冒頭3曲、もっと言えば「Alligator (Choir Version)」と「Little Brother (Electric)」の2曲があるために聴き逃すことのできない作品となっています(あくまで個人的には、ですけど)。WARPレコーズ20周年のときにYellow Houseとセットになったものもリリースされているので(そういえばYellow House以降はWARPからのリリースだった。今思えばKrankyから出たDeerhunterと似たようなコースというか。。逸れました)、ロック好きな人にはぜひ聴いてもらいたいです。



8.7