アメリカ出身のバンド、アニマル・コレクティブが2009年に発表したEP。
Animal Collective Fall Be Kind EP - ele-king Powerd by DOMMUNE | エレキング
アニマル・コレクティブ。自分の中ではとにかく一曲一曲が突き抜けてる、という印象。それなりの心地よさが最後まで維持された、そつなくまとめられた佳作(大好きですよ)を一撃でぶっ飛ばしてしまうような、そんな一曲を作れるグループ。まあそれもFeels以降のポップに舵を切ったあとの話なのかな。アニコレにもよくまとまった、全体の展開で聴かせる名作「Campfire Songs」がありますから。
もう一つ、自分が思う彼らの特徴があって、それは既存の形式にとらわれないこと。アニコレとかデヴェンドラ・バンハートが目立ってきたとき、フリー・フォークなんて言葉が流行りだしたけれど、その言葉が正しく当てはまる作品って前述の「Camp〜」か、その次作の「Sung Tongs」(正しい読み方を教えてほしい)だけなんじゃないの?とわりと本気で思っている。まあアニコレの場合はもともとがフリーで、これらの作品でフォークに向かった、というような印象もあるけど。
ちょいと脇道にそれるけど、パンダ・ベアやエイヴィ・テアの歌心というかメロディ・センスってのはどうやって培われてきたのだろう。Sung Tongsの曲とか、ほんとに自由な感じで大好きなんだけど。パンダのソロの「Person Pitch」のブックレットには一応影響元らしきアーティストの名前がずらずら並んでたりするんだけど、うーん… どちらかといえばコレクティブというくらいだし、彼らの生活環境のほうが影響としては大きいのかもしれない。調べたりしたわけではないけれど…
今作は世間一般から見たところの彼らの最初の絶頂期の作品である「Merriweather Post Pavilion」の次に発表されたEPで、音楽性もそれに連なっている。メリーウェザー〜が気に入った人ならば、あの中の名曲群とタメを張る曲が今作にもあるってことで、これを逃す手はないぞ、なんて書いておく。実際自分でも、今作収録の「What Would I Want? Sky」なんかは彼らのキャリアでも10本に入る名曲だと思っている。それ以外にも最終曲「I Think I Can」のエンディングなど、ここでしか聴けないような展開が聴ける。
ただ全体の雰囲気としては、以前ほどの突き抜けた明るさはない。陽気ではあるのだけど、能天気ではない。わりと内的な、ぐるぐるしてる感じがある。
それでもやっぱり一曲一曲の出来が、一つ一つのアイデアのハマり具合が他アーティストと段違いなので…
音楽も他のメディア同様、いかに自分の世界を作り込めるかという視点で見ることができると思いますが、彼らの作るものほど完成されたものを見ることはなかなかないです。彼らが00年代に発表した諸作は、すでにそのどれもがポップミュージックファンには避けて通ることのできないような作品となっているけれど、今作でもそれは例外ではないです。順序的には他作品を聴いてからでいいとは思いますが、その後は忘れずにこれにも触れていってもらえたら、と思います。
8.9