ミツメ [A Long Day]

 ミツメの4枚目のアルバム、「A Long Day」がリリースされました。
 最初はするりと聴けてしまった今作だけど、今ではすっかり中毒になってしまっている…

公式サイト:ミツメ
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 端的に言えば、今までで一番洗練されていて、かつ練られているアルバムです。今作に比べれば前作「ささやき」は実験作だし、「eye」は… なんだろう、ベストアルバム?(一曲一曲が力作で、それぞれが違う方向にとがっているためにまとまっている、という感じ) 
 今作では特にアルバムという大きな流れの中で展開させていく、ということに成功してるように感じます。いや今までも挑戦はもちろんしていたでしょうけど、今作ほどはまったことはなかった。まあ一曲一曲のインパクトは以前の作品の方が上かもしれませんけど(これらがトレードオフの関係性なのかはわからないです)。



 #1、#2で疾走感をまといつつ軽やかにスタートし、#3「忘れる」(一番ポップな曲かも)で一度ぐっと落としてから#4、#5のねっとりファンクバラードに突入。ここまでは序盤2曲の勢いのまますーっと聴けて、続く#6「船の上」からまた新しい展開に入ります。
 個人的にはこの#6「船の上」〜#7「漂う船」が今作のハイライトです。なんとなく今作、ギターの音色がぺろんぺろんって感じ(まったく伝わらない)になってて、曲中のギターの音の割合はむしろ増えてるような気もするのに、なんとなくギターの存在感が薄くなったように感じるんですよね。まあギター以外も全体的にソフトな音色になってると思いますけど、そうしたときに今度は曲というか歌が前面に出てきたというか。で今回歌が一番前に出てきているのがこの「船の上」という曲だと思います。
 続く「漂う船」なんですけど、こちらは一転してバンドのアンサンブルが魅力な曲になってます。上に貼ったインタビューにあるように「流れ」を意識していたようで、前曲からシームレスに繋がっています。一つだけ残ったシェイカーのシャカシャカ音に、CANの「Future Days」やDavid BowieBrian Eno)の「What In The World」で聴けるようなチャカポコした音がフェードインしてきて始まるんですけど、この曲がまたかっこいいんです。いつも通り、いやいつもよりも低温なくらいなんですけど、ちゃんと上がるところは上がるし決めるところは決める。モノクロなイメージも相まって、ミツメ史上最もクールな曲と言えるかもです。てか気持ちいい。。いつまでも聴ける。。。やっぱこの曲はミツメ流のFuture Daysなのでは…

 あとはちょっぴりシリアス&情熱的?なバラード「キッズ」を挟んでからエンディングに入っていくんですけど、このエンディングがまたすんごくいい。「船の上」に続く歌ものの「霧の中」という曲が名曲で。その爽やかな空気から一転、微睡むようなテンポの「幸せな話」(歌詞で泣く)で夢に落ちるようにして終わり。



 なんというか、モノクロな日常の中にも悲しみとか喜びってあるんだよ、というような作品です(強引)。サウンド的にははっきりとロック!とかファンク!という感じではなく、ぼやけたようなソフトなイメージになりましたが、バンドの運動神経が鈍ったとかそういうことは一切ないです。もしかしたらこのぼやけた感じがアルバム単位での展開ってのに一役買ってるのかもなんて思ったり。なんにせよギターの音色の変化はアルバム全体の印象にすごく影響与えてると思います。
 見た目のイメージも含めて、あまりパッとしてない(すいません)のでちょっと掴みにくいかもしれませんけど、一度馴染むとめちゃくちゃ良くなります。するとこのジャケットとかもすごくハマってるように思えてきて… とにかく、作品の完成度でいったら間違いなく今作が一番です。まあそんなことは抜きにして、今作の後半部の雰囲気はぜひ一度味わってほしいものです。傑作。



8.4