Graham Kartna [Ideation Deluxe] [Loop Tube]

 今年最初に取り上げる作品はGraham Kartnaの [Ideation Deluxe]と [Loop Tube]。2015年作。

Ideation Deluxe | BEER ON THE RUG
Graham Kartna - Ideation Deluxe | Music Review | Tiny Mix Tapes
(Ideation Deluxeメインで書いていきます。)
 初めて聴いたのは去年の12月。上記のTMTのレビューを見て聴いて一瞬で(これ年末ベスト入る…!)ってレベルで好きになったんだけど、2015年のランキングに入れるにはさすがにタイミングが遅すぎたのでとりあえず年明けてから取り上げてみました。

 本人のサイトを見てみると自称「freelance video guy」ということで、動画を作る人なのかなーと思いますが、サイト内を一通り眺めると動画と同等かそれ以上に音楽作品も作ってて(しかもクオリティ高い)、どっちが本職なのかわからなくなります。まあ動画内で使われてる音楽も自作のものだろうしそんな両者を切り分けて考える必要はないんですけど。

 Ideation Deluxeの方はBeer On The Rugからのリリースで、たぶんTMTはBeer On The Rugをチェックしていて間接的に彼を見つけたんだと思いますが、Beer〜の方はどうやってこの才能を発見したのでしょうか。ネットで調べてもあんま出てこないんですよね。。まあ単純にGraham Kartnaの方から音源送ったのかもしれませんが。にしてもBeer On The Rugからのリリースってのは内容的にもドンピシャですね。



 音楽性については… うーん、どう言えばいいかな。
 音でいえば、絶妙に音程外した感じのシンセが特徴で、個人的にはJerry Paperのこの作品(傑作!)を思い出します。Jerry Paperとはリズムへの凝り方も似ているものがあるかもしれない。
 基本的には明るい曲調なんですけど、曲によってはなんとも言えない寂しさのようなものを感じる瞬間もあります。#3「My Great Movie 01」のイントロとか、#6「Blank 2 Nowhere」とか。Real Estateの諸作や、Mac DeMarco[Another One]を聴いてるときに感じるあの気分。そもそも自分の場合、その妙にフラフラするシンセの音色自体にそういう感覚を覚えちゃうのですけど。
 MaxoのLevel Musicなんかと同じくらい機能的な側面もあるのだけど、今作はそこまで屈託をなくせてない感じですね。たまにふっと我に返るというか。でもその自然体な感じも好感が持てるというか、そんな感じです。


 今後どういう作品を作っていくのかわかりませんが、とにかく今後も期待できるアーティストが発見できて嬉しいです。トラックメーカー的な方向性もいいとは思いますが、上述の#3、#6を聴くとSSW的な方向性もありだなーと思いますね。
 なにかおもしろい音楽を探している人はぜひ聴いてみてください。TMTのEUREKA認定は伊達じゃないです。





 軽く追記的に、同じ2015年リリースの「Loop Tube」についても書いておきます。
Loop Tube | Graham Kartna

 こっちはIdeation Deluxeとは違って自主リリース。内容はいわゆるビートテープみたいなもので、ループで作られた1分ほどの短い曲が14曲入っています。
 とにかく迷いなく気持ちのいい音楽が詰められていて、ここひと月ほど家でヘビロテしております。うーん楽しい。多分単純なキャッチーさでいったらこちらに軍配が上がりますね。正直、自分ならこの作品にもEUREKA認定します。
 冒頭、「Make You Smile」〜「Walking」の流れとか最高ですね。また、全体に楽し気でふざけた感じの曲が並ぶ中、「The Spaceman」のロマンチックなムードもいい感じに引き立ちます。

 Ideation Deluxeと比べると、こちらの方が風通しがよくて、気軽に聴けるのがポイントですね。いやIdeation Deluxeも充分気軽に聴けるんですけど。あとは遊び心とか。全体的にこっちの方がいろんな音が詰まっていて、カラフルでファニーです。ぜひIdeation Deluxeと一緒に楽しんでください。オススメ!



Ideation Deluxe 8.6
Loop Tube 8.3