Maneige [Ni Vent ...Ni Nouvelle]


MANEIGE
#0982 Maneige / Ni Vent...Ni Nouvelle (1976) Cottonwoodhill 別別館
 今回はちょっと久しぶりなのでリハビリ的に、個人的な思い出の作品を取り上げる。バンドなどの詳しい情報は上のリンクを参照してください。まあ一応軽く書きますけど。
 カナダはケベックのグループによる77年発表のサードアルバムだそうです。あー先に書いておきますけど、今回のは普段取り上げてる「ポップ」の文脈上の作品ではなく、「プログレ」の作品です。いやここらへんぜんぜんてきとうに使ってるので無視してもらってもかまわないんですけどね。とりあえずメインストリームにはなんら絡まない話。
 ケベック州ってカナダの右側(あたまのわるい。。)にあるんですけど、昔フランスの植民地だったそうで、それの影響か音楽だとかの文化面もフランスに近いものがあるそうです。で、60年代後期〜70年代って、ヨーロッパではプログレっていう少し頭でっかちなきらいのあるロックが流行っていまして。フランスも同様で、たとえばマグマあたりが有名でしょうか。でたぶん、ケベックにもプログレの波がきていたと。

 作品の内容に移る。音楽性をがんばって一言で表すと、「イージーリスニング風おもちゃ箱ジャズ・シンフォロック」?みたいな感じ。とりあえず試聴してみてください。

 のっけからかわいらしい音がいっぱい出てきて・・・ 演奏自体はとても優れたものだと思います。プログレでもあまり見ないほどどんどん表情が変わっていくのですが、演奏は危なげなく整っている。てか曲の雰囲気の変化がすごく滑らかだ。
 アレンジが凝っていて、難しそうなことやってそうなんですけどあんまそうは聴こえない。とにかく聴きやすい。演奏する側としたらかなりカロリー消費しそうなんですけどね、音だけ聴くとすっごく軽い印象。なんだろう、音色と、あまりに明快なメロディのおかげなのかな。

 小気味いい。シカゴ音響派にも繋がるような、純度の高い音の小気味よさがある。これの路線をいってるのがsea and cakeとかstereolab、サム・プレコップだよなと個人的には思っていて、まあそれほどではないにせよ近いものをマネイジュにも感じる。でマネイジュはそれらよりももうちょいメロディーに寄っているように思う。あらゆるパートが歌っているような。
 肝心のメロディーがまた、なんというか、独特ですばらしい。ひとまず言えそうなのが、人が言葉を乗せて歌うことはまったく考えてないだろうなーということ。なんというか、純器楽的というかな。あと、なんとなくチャイルディッシュな感じがあって、それも大きい。NHKの子ども向け番組とかで流れていそうなイメージです。といっても実際そういう番組ほぼ見ないのでいまは偏見で言っていますけど。ゲーム音楽が好きな層にもひっかかるものがあるかもしれない。

 「おもちゃ箱をひっくり返したような」という形容でみなさんがどのような音を思い浮かべるのかわからないですけど、個人的にイメージされる音がこの作品の音なんですよね。音だけじゃなくて曲も非常に人懐っこいですけど。ただ、この作品の場合、ひっくり返した際のとっちらかった印象は無いんですよね。ひっくり返ったけど、中身は(偶然にも?)自然とあるべき位置に収まった、みたいな。要するにすごく整っている。むしろいきすぎてちょっと人工的な感じもするかもしれない。というかそれを無意識に嗅ぎ取っての「イージーリスニング」という表現なのかもしれない。
 そういえば「おもちゃ箱〜」といえばトクマルシューゴがいましたね。音だけで比較すればトクマルのほうがよりリアルなおもちゃ箱サウンドのような気がする。こちらはなんというか、検閲にでもあったかのような丸さがあるから。野性味がないというか。触っててトゲが刺さらないようになってる。まあでもこのどうしようもないメロディのきらめきによって、自分の中ではおもちゃ箱作品としてはトクマルよりもこちらの方に軍配があがる。自分としてはこれに匹敵するおもちゃ箱作品はManitoba「Up In Flames」くらいしかないんだけど、こっちはもっと電子色が強い。あ、あと最近はアニメ「のんのんびより」のサウンドトラックがよかったです。おもちゃ箱的に。

 大学時代の掘り出しものがサム・プレコップだったなら、高校時代のそれはこの作品だったろう。当時はプログレにはまっていて、偶然この作品にであったのだった(ガラケー使ってようつべで試聴してた)。
 この前の2作品はプログレらしく大曲を含んでいて、この作品に比べると若干とっつきにくいが、この音に惹かれたならば聴く価値はあります。曲としてはよりクラシックの色が強くなる。これ以降の作品はまだ持ってない。
 あと、自分が持ってるのは4曲ボーナストラックがあって、これがまためちゃくちゃいい。一応つべにも上がってるんだけどね。

収録元の作品(Compositeってライブアルバム)はまだCD化されてないようです。

 一応個人的なメモとして点数はつけておくけど、今回はプログレということで、今までと少しものさしが変わっているので注意。思い出補正ももしかしたら入っているかもしれない。それでも実際、今後これ以上のおもちゃ箱作品に出会うことはないんじゃないか、とも思ってたりする。



10.0