蒼の彼方のフォーリズム 感想

エロスケに登録してしまいました。これが感想初投稿。idはツイッターと同じ。


超王道のスポーツもので、とてもよくまとまっていた。
現実には実在しない、履くと空を飛べる靴と、それを使った競技「フライングサーカス(以下FC)」のおはなし。主人公たちは高校生で、FC部に入って活動していく。

個人的には、話全体のおもしろさのピークは6話だったと思う。共通ルートの最終話。ここがたぶん瞬間最大風速だった。ここでようやく自分たちの目指す場所と、そこまでの長い長い道のりが見えてくる。今まで頂上だと思っていたところが頂上ではなかったことに気づく。まだまだ上があることを知る、その瞬間、想像力が加速する。ワクワクが止まらない。あれですよあれ、ゲームで言えば新しい大陸にたどり着いたときのようなワクワクですよ。ぼくはこのワクワクに突き動かされて−−いちばん遠いところが見たくて−−最初から明日香ルートにいってしまいました。なんか誤解をまねく書き方ですけど、このチョイスはふつうによかったと思います。というか、6話でのあのワクワクを利用しない手はないでしょう!繰り返したり時間を置いたりしたら醒めてきちゃいますからね。鉄は熱いうちに打つ。

一応、自分の攻略順を書いておくと、明日香→莉佳→真白→みさきです。6話までプレイしていればわかるでしょうけど、内容が濃いのが明日香、みさきルートなので、これだけ押さえておけば攻略順で失敗することはないと思います。

ぼくは一番おいしそうなものは最後までとっておくタイプの人間なのですが、なぜ明日香ルートを最後までとっておかなかったのかというと、まあワクワクを殺さないというのもありますが、それよりもみさきルートが自分は一番楽しめるんじゃないかと思ったからで。一番感情移入できるキャラがみさきだった。似てるなと思った。雑な例えをすると明日香はゴンで、みさきはキルアです。いや、これほんとに雑な例えなのであまり気にしないでください(特に後者)。実際の話に沿って言えば、今まで頂上だと思っていたものに更に上があったと知ったとき、どうしようもなくワクワクしてしまうのが明日香で、逆にそのことに絶望してしまうのがみさきです。まあより正確に言えば、みさきは更に上があることに絶望したわけではなく、そこへ到る道筋が(ちょっと考えただけでは)見つからなかったことに絶望したんですが。とはいえ、そこに到っている人物が実在してる以上、道は確実にあるんですけど。

この作品の優れているところはキャラクターの心理描写ですかね。なにかを好きである気持ち、そして勝負に勝ちたい・負けたくないという気持ちが丁寧に描かれています。これらは普遍的なもので、おそらくほとんどの人はなにかしら引っかかる部分があると思います。キャラクターそれぞれがそういうもやもやしたものを抱えていて。最終的には自分なりの答えを見つけるんですが、そこに到るまでの過程が、こころの動きがとてもよく描けている。答え自体はありきたりなものです。そもそも、もやもやした問題にしっかりはっきりとした答えが返ってくることなんてないんです。普遍的な問いには普遍的な答えが返る。だからこそ多くの人に届く。

うーん、うまく言葉にできないですね。まあ確実に言えることは、この作品は普遍的なテーマを扱っていて、それゆえに射程距離がめちゃくちゃ広い、ということです。これを楽しめない人はどこか病んでるのではないだろうか。で、そういう作品って、その普遍性ゆえに深いところまで刺さらない、ということがあって、それはやっぱりこの作品にも言えると思います。でもね、あおかなはこの長大な射程距離を維持しながらいける一番深いところまで到達してると思います。これ以上深くにいくには射程距離を抑えるしかない、そういうところまできていると思います。

自分はなんというか、このゲームをプレイして心が洗われたように思います。またすぐ曇るんですけどね。王道のいいところというか。とてもまっとうな成長が4ルート分繰り返して描かれていくわけで。自分が一番この作品に触れてほしいと思っている層が中高生なんです。18禁でプレイできないのが惜しいと思う。というのも自分が中高生のときにこの作品に触れていたら・・・と思うことがあって。たぶんそうしたらもっとまっとうな人間になれていたと思うんですよね。道徳の教材にいいのでは?とか。とくに部活動をしてる人に薦めたい(そういう人はこういうゲームしないかもですが・・・)。主人公がコーチ役ということもあるんでしょうけど、客観的に選手のこころの動きを描写してくれるから(しかも4ケースも)、自分を客観的に捉えるヒントが絶対に得られると思うんですよ。

これは蛇足的なものですけど、架空のゲームを作って、それを攻略しつくして終わらせるって、SFぽいですよね。ぽいというかふつうにSFですね。

スポーツ関係だけではなく、勝負に関わる全ての人におすすめです。とくに一対一形式のもの。将棋とかボードゲームもですね。まあ究極的には、あらゆるものごとには”自分”という敵がいますからね。うん、みんなにおすすめ。